第26話 おっさん、剣のスキルが判明する

 フロッガーがいる階層は何事もなく抜けることができた。どこか初めに出てきたフロッガーの見た目が違っていたのは、レア種だったのかもしれない。


 魔物にはレア種という魔物から突然変異した種類がいる。


 鞭のアーティファクトを手に入れた時に使った銀色の魔石もスライムのレア種だった。


 レア種は見た目が普通とは違ったやつに多い。


 あのフロッガーを倒したら、見たことないドロップ品が手に入ったのかもしれない。


 その素材をガチャで使って、強いアイテムやアーティファクトが出てきたと思ったら逃したのが勿体無いような気がした。


「有馬さん行きますよ」


 次の階層はオークがたくさん出てくる階層だ。


 ここからは上位種も増えてくる。


 もちろん上位種と言っても、今まで出てきたゴブリンやコボルトの上位種だ。


「あっ、ワンちゃん!」


 ここにはコボルトの上位種であるハイコボルトも普通に出てくるのだ。


 凛はハイコボルトが目に入った途端、全速力で走り出した。


 ダンジョンの特性を知らないところで、突然走り出すと危険もその分寄ってくる。


『ブモオオオオ!』


 この階層の危険なところ……それは女性探索者をいやらしい目つきでオークが狙ってくるところだ。


 探索者で男性が有利なのは体の作りもあるが、こういう魔物の存在が関係している。


 もちろんそれを逆手に女性にヘイトを集めて、討伐する方法もある。


 ただ、その方法をするにしても精神的に強い女性じゃないとできないだろう。


 だって、オークは上位種のハイオークと比べて見た目が人間に近いからだ。


「お前らは早く仕事に戻れ!」


『ブモオオオオ!』


 フロッガーはおじさんに似ているが、オークはおじさんそのものだ。


 イメージとしてはエッチな漫画に出てくるでっぷりと太ったモブ男に豚の鼻と耳をつけて、体格を大きくした感じだ。


 男でおっさんの俺でも若干後退りする見た目だ。


 いつのまにかできていたダンジョンに出てくる魔物は、当時新人類と言われていた。


 見た目が人間に近くて、動物と人間が足されたような見た目をしているからだ。


 人口が減っていく世の中で、魔物から人間を作れないかと実験をしたサイコパスもいる。


 しかし、ダンジョンの探索が進むと、そいつらは新人類ではなく魔物と呼ばれるようになった。


 上位種が完全に人間の姿から脱しているからだ。


 上位種が本当に上位種なのか、ハズレなのかはわからない。


 ただ、俺達が住む世界に近い魔物が人間に近いのは何かしらの理由があるのかもしれない。


 俺は凛を追いかけながら、近寄ってくるオークを次々と薙ぎ払う。


「あれ? 魔力が増えているのか?」


 ここに来るまでにもわずかにも感じていたが、変化が小さくてはっきりはわからなかった。


 ただ、オークを倒してすぐに気づいた。


 剣で切った瞬間、魔力が回復している。


 それは同個体のオークを切るたびに感じた。


「これがこの剣のスキルってことか」


 アーティファクトには様々なスキルが付いているが、魔力を回復するものは聞いたことがない。


 そもそも魔力を回復しても、魔力を放出する武器がなければ意味がない。


 アーティファクトはどちらかと言えば、魔力を放出する方の武器にあたる。


 ただ、俺には魔力が必要となる存在がいる。


 それは俺のパートナーでもある"凛"だ。


 俺自身の魔力が無くなったら、アーティファクトである凛はどうなるのかと思ったこともある。


 魔力が回復するまで動かないのか、それともその時に心臓が止まって死んでしまうのか。


 考えれば考えるほど、再び凛がいなくなってしまうという焦燥感に襲われていた。


 だが、この武器があれば凛と一緒にいられる時間が増えるかもしれない。


 今の俺と凛をさらに繋げる掛橋になると俺は感じた。


「おっ、凛がい……」


 やっと追いついたと思ったら、オークの背中に足を置いてムチを振るっている凛がいた。

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