計画開始
「さぁ、ルイーズ、今度は『スオーロ』の魔法です。ここに、なんの栄養もない土を用意しました栄養を与える呪文、昨日、出来ましたよね? もう一度、体に馴染むまで、頑張ってやってみましょう」
「はーい!」
ルイーズは、元気に返事をした。ここは、「ジュン・マジ―」でも、「エコールド・マジ―」でも、「ウニヴェルシタ」でもない。
クレマンスが作った、「パーチェ・ディヴェルトメント」と言う、新しい学校だ。どうしてこの学校を作ったのか……。それは、三歳以上のすべての国民を「パーチェ・ディヴェルティメント」に入学させ、大人も、子供も、初歩から魔法使いの勉強をするのだ。「ジュン・マジ―」までで、農民や商人になった大人も、最初は、
「自分に出来るはずがない」
とか、
「今更、魔法使いになれと言われても」
とか、
「子供に本当に、『コール・プーレ』や、『パッフェ・エレディタ』のような高度な魔法を覚えさせることが出来るのか」
とか、色々、国民からも批難や心配の声が多く聞こえた。
クレマンスの計画を心配したのは、国民だけではない。マティスや、マティルドゥや、リュカも同じ気持ちだった。
それでも、クレマンスは、大人の国民には、「グランデ・インヴォクッチオーネ」と言う、強制的に、魔力を引き出すことのできる、魔法を使い、教わらなかった代わりに、クレマンスの力を与える事で、ほとんど魔力を持たない農民や、商人などの大人の魔力を発動させたのだ。
国の、大人たちは、自らの力に、目を見張った。
しかし、それで終わりではない。子供と違い、「コーレ・プーロ」を、自分自身にかける事を約束したとしても、せっかく手に入れた魔力を、悪用しようとする大人は、必ず出て来る。そこで、クレマンスは、十八歳以上の国民には、クレマンス直々に「コーレ・プーロ」を、一人ひとりかけて回った。
毎日、毎日、クレマンスは、魔力の与え、そして、「コーレ・プーロ」を国中の大人にかけた。その、様子を見て、これでは、とても、クレマンスが目指している国にはなるにはクレマンスの体力と時間がかかりすぎる……、と考えたリュカは、クレマンスにこう申し出た。
「クレマンス、私にも何か出来る事はないか?」
「わたくしの我儘に付き合っていただけるのですか?」
「なぁに、この国で、たった一人の『魔法博士』にしか出来ない事もあるだろう。手伝わせてもらえないか?」
「ありがとうございます! リュカ様! では、私は、魔力を与える事にしばらく専念させていただきます。なので、『コーレ・プーロ』を、リュカ様は民にかけてはもらえませんか?」
「うむ。良いだろう。任せるとよい」
「ありがとうございます!!」
そうして、役割分担を分ける事で、作業は順調に進んだ。後は、子供たちの教育だ。
「「「おはようございます! クレマンス先生!!」」」
「パーチェ・ディヴェルティメント」の朝は、子供たちの元気な声で始まる。クレマンスは、その容姿に、その知性に、子供たちは憧れられる存在となっていた。
「おはよう、カミーユ、エマ、イリス」
「「「せんせー! おはよー!!」」」
「あら、レオ、貴方、今日は随分とやる気があるみたい」
「え? なんで分るの?」
レオ、と呼ばれた少年が、不思議そうにクレマンスに尋ねる。
「先生には、なんでも分かるのですよ。ふふふ」
クレマンスは、「パッフェ・エレディタ」を子供たちにかける為、毎朝、登校しくる子供たちを抱き締め、この国の血を、継承させていった。そして、種を植え付けて行く。この子供たちが、将来、子供をもうけたとき、その子供にも、「パッフェ・エレディタ」を継承させるためだ。
そして、クレマンスは、女王、マティルドゥに心を覗く魔法、「グア―ダ・ネル・クローネ」を、を使う事を許された。それは、「ロワイヨーム・ソルシエール」の王族の女だけが受け継いでいい魔法。マティルドゥは、クレマンスの働きを見て、
「クレマンス、貴女の仕事をするうえで、この魔法は無くてはならないものではありませんか?」
「は……はい。ですが、わたくしは……」
「まだ、子を産めない事を悩んでいるのですか?それはもうおやめなさい。貴女のせいでは決してないのですから」
マティルドゥに薦められ、悩んだ末、継承する事に覚悟を決めた。
そうして、クレマンスは、子供たちに、「グア―ダ・ネル・クローネ」も、駆使し、無理のないように、魔法遣いになってもらおうと、いつも、自分の中に余裕を持ち、嫌がったり、中々思うように魔法を使えず、不貞腐れる子供にも、優しく我慢強く、教え続けた。クレマンスは、泣いたり、ぐずったりする幼い子供たちに、決して怒るようなことはせず、『大丈夫だから』『大丈夫だから』と、言い続け、少し、魔法を使いながら、その子その子の長所や短所、なんの属性に一番向いているか……、など、溢れるほどの生徒を、器用に、おおらかに、包み込むように、教育していった。
するとどうだろう。あれほど、心配と懸念の声をあげていた、国民も、薪づくりの職人は、「レイニャ」の属性の魔法、木を伐倒する「アバティメント」と言う魔法を使い、のこぎりで伐倒していた苦労を、あっという間に魔法を使うことで出来る事を覚え、大変喜んだ。
かとおもえば、朝、暗いうちから、海に出て漁業をする商人は、「メーセ」の属性の魔法、決して海に迷わぬように、月に照らしてもらう「イルミナーレ」と言う魔法で、夜の危険な海を、民だけを照らす為、魚には気づかれず、漁になんの支障もきたさず、沢山の魚を得る事に成功した。
こうして、子供にも、大人にも、クレマンスの考え、教育が、少しずつ、認められてゆくようになった。
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