第68話 錬金術師ギルド見学④
「どうぞ、こちらは当ギルドで量産に成功したゴールデンローズの花弁を使ったお茶になります」
「ありがとうございます。仄かな甘さと渋みが口の中を洗い流してくれるようで、スッキリしますね」
カフェに到着して丸テーブルを囲んで三人で座ると、ティーセットが運ばれてくる。
錬金術師ギルド内のカフェではこのようなお洒落なお茶があるのだなと感心した。
「もし、気分が戻りましたらお菓子もどうぞ。材料はすべて錬金術師ギルドで生産しております」
「じゃあ、いただこうかな……」
セリアはまだ無理そうだが、三段トレイに乗せられた一口サイズのお菓子はどれも美味しそうなので、どのような味がするのか興味が惹かれた。
「凄く甘いけど、上品な味がするんだな」
ケーキを口に入れると、柔らかい感触とバターの風味。それに蜜の甘さが口いっぱいに広がり、余韻を残して消えていく。
俺はあまり甘い食べ物が得意ではないのだが、これだったらいくらでも食べられる自信がある。
「ありがとうございます。こちらはゴールデンローズの蜜がはいっているのですよ。お茶に淹れても良いですし、現在量産するための試作を重ねているところなので、評価頂けて嬉しいですわ」
「凄いです……Cランクアイテムのゴールデンローズ。今は一部の上流階級の人間しか口にすることができない食材。それが量産されるということは……スイーツの幅が広がります!」
セリアは突然饒舌になると、目の前のお菓子をまじまじと見た。
「もしよろしければ、帰りに包ませますのでお持ちください」
ロレインはクスリと笑うとセリアに行った。
「そ、それは流石に悪いですよ……」
手をパタパタ振り、申し訳なさそうな顔をするセリア。
「気になさらないでください。施設を見学にきた出資者の方にもお配りしておりますから」
「そんな人たちもくるのか?」
貴族や商人が来るということに驚く。
「ええ、なにぶん、研究には資金が必要になりますからね。施設を案内し、研究が有望だと理解してくださった方には投資をしていただきます。わたくしの家も出資をしておりまして、その縁もあって学生の身分でありながらこうしてギルドに出入りさせてもらっています」
ロレインはカップを手に取ると優雅にお茶を飲む。
彼女が錬金術師ギルドに招かれているのは優秀だからなのだろうが、それをひけらかすことなく謙遜する姿勢には好感が持てた。
「さて、セリアさんが回復したようでしたらそろそろ次の建物に向かいたいと思います。まだまだ見ていただきたい研究が沢山ありますので」
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