第12話 国家冒険者資格取得方法

「それでは、国家冒険者になるための過程を説明します」


 冒険者ギルドに入り、案内に従って進んだ俺は、国家冒険者専用の受付窓口に案内された。


「宜しくお願いします」


 国家冒険者になるためには手続きをした上で、条件をクリアする必要があるので、この説明だけはしっかりと聞かなければならない。


「国家冒険者の試験を受けるにはまず『Cランク以上のモンスターの討伐依頼』を、続いて『Cランク以上のレアアイテムの収集』という条件を満たす必要があります」


「それは、トロルでも大丈夫ですか?」


「はい、大丈夫です。王都近くで狩れるモンスターではもっとも出現率が高いので、受験する方の多くはトロルを討伐してこられますね」


 俺は一瞬、ホッと息を吐いた。

 現状で、Cランクモンスターで戦った経験があるのはトロルだけだからだ。


 無理を言って護衛の人たちに混ぜてもらった経験が早速活かせる。


「その二つをクリアした後はこちらが指定する『護衛依頼』を受けていただくことになりますが、その際には上流階級国民三名の推薦が必要となります」


「上流階級というと?」


「一定以上の税金を国に納めている、貴族や商人などですね。各ギルドのギルドマスターも無条件で権限を与えられております」


 俺の質問に、受付の人はスラスラと答えてくれた。


「それは、どういった理由でですか?」


 次に気になったのは、なぜ上流階級の人間の推薦でなければならないのかだ。


「基本的に一般の冒険者は荒事が得意な分、常識にかけた行動を取ることが多いです」


 すると、受付の人は眉根を寄せ、冒険者の素行について話し始めた。


「ああ……なるほど……」


 俺はその言葉だけである程度の理由を推察することができた。


 街にいたころ、ジークに絡まれたことを思い出す。

 新人いびりやたかりなど、強い者が弱い者から搾取することが多いらしく、そのような行動を取る者には国家冒険者の資格を与えることはできないということだろう。


「当方が指定する護衛対象は高貴な身分の方となります。盗賊と繋がっていて害を成したり、思わぬ強いモンスターに遭遇した時、護衛対象を置いて逃亡されると困りますので、推薦人に人柄を保障してもらうことになっているのです」


 過去の試験でそのようなことがあったのだと、受付の人は説明してくれた。


「それ、結構難しいのではないですか?」


 Cランクモンスターの討伐や、Cランクレアアイテムの収集ならばある程度戦える実力があればどうにかできるだろう。

 だけど、上流階級――貴族や商人に伝手を作って推薦をしてもらうというのは簡単にいかないのは俺でもわかる。


「それゆえの、国家冒険者の資格ですから。推薦された三名は、受験者が資格を得た後も後見人として登録され、何か重大な罪を犯した場合、何らかのペナルティを負うことになります。なので、余程のことがない限り簡単に推薦をしてはくれないかと」


 そう言うペナルティがなければ、金で推薦を買うような不正が起こったりするらしい。あくどいことをする人間は色々考えているらしい。


「それをクリアすれば、国家冒険者になれるんですか?」


 俺が確認をすると、受付の人は首を横に振る。


「最後に国家冒険者とペアでの最終試験があります。並行して罪の履歴がないか、親族に罪人がいないかも調査されます」


 仮にも『国家』と名がつく以上、そこに犯罪組織の者が入り込む余地を与えるつもりはないらしい。

 素性が確かなものだけが、採用されると受付の人は答えた。


「なんていうか……難易度が高いとは聞いてましたけど、本当に厳しいんですね」


 戦闘で強いだけではなく、人格も良く、ちゃんとした家庭で育たなければ資格を得られない。合格率が低い理由も頷ける。


「その分、与えられる権限も多いですから。国家冒険者であれば、国の施設の8割は無料で使えますし、立ち入りが禁止されている遺跡や迷宮にも入ることができますから。この国で一・二位を争う憧れの職業です」


「それは知りませんでした」


 父親が条件として挙げたので受けることにしたのだが、まさかそこまで注目を浴びる資格だとは思わなかった。

 もしかすると父親も過去に目指したことがあったのかもしれない。


「それでは、まずはCランクモンスターの討伐からとなります。こちらの魔導具をお持ちください」


 渡されたのは一枚のカード型魔導具だった。


「モンスターの討伐が自動で記録されるカードです。こちらにCランクモンスターの討伐が記録されましたら提出下さい。次の試験に進ませていただきます」


「わかりました」


「一度の試験の期限は三ヶ月となります。それまでに達成できない場合は、一からやり直しになりますのでご了承ください」


 これで説明は終わりとばかりに、受付の人は言葉を止める。


「とりあえず、やってみるとするか……」


 頭の中で、試験合格までの道筋を考えると、俺は冒険者ギルドを後にするのだった。


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