#023 副収入②

「有名なのは、やっぱり動画投稿だけど、他にも色々あって……」

「「…………」」


 気がつけば部室にいた他の人たちも集まってきた。ストリーマーは憧れの職業であり、学生でも自宅に居ながら収入が得られる。もちろん苦労も多いけど、やはり皆、気になるのだろう。


「次はやっぱりブログ形式の情報発信サイトかな? スマホとかクレカとか、いろいろなものを紹介してサイトの広告収入に加えて、専用ページに誘導する事で追加のインセンティブが得られるから…………何か得意分野があるなら、挑戦してみるのもいいかもね」

「しかし俺たち素人が割って入っても、上手くいかないだろ?」

「そうです。基本的に上手くいきません」

「「えぇ……」」


 動画でも何でも、1発で成功するのは本当に一握り。そして『1発で成功している』ように見えている人も、見えないところでは相応の努力や苦労を積み重ねている。


「勘違いしている人が居るみたいだけど、楽して稼げる業界では無いから…………やり直しや、それこそ年単位で底辺をはいずる覚悟は必須だよ」

「たしかに、そういうのよく聞くよね」

「基本的に内職みたいなものだから…………アルバイトくらいに稼げただけで勝ち組。切り抜き動画が作られる有名ストリーマーは、プロの中でも上澄み。間違っても、投げ銭で年収1億以上いける人たちの輪に、後追いで僕たちが入れるなんて考えちゃダメだよ」


 元芸人とかならまだしも、何も後ろ盾がない状態からスタートしたら、上手くいかないのが当然。中には突然ヒットする人も居るが、それも事務所のフォローや、機材・アバターへの投資、あとはもちろん魅力的で独創的なコンテンツがあってこそ。間違っても、一介の中学生が簡単に手に出来るものでは無い。


「やっぱり、普通に働けって事か」

「私、会社勤めとかサービス業とか、出来る気がしないわ」

「俺も……」


 もちろん僕もだ。そこは適材適所であり、"妥協"だ。アルバイト程度の収入でも一人なら生活できるし、在宅ワークなので時間の融通もきく。それこそ、軌道に乗ったら田舎に引っ越して半自給自足の生活をおくる手もあるわけで。


「まぁ、稼げないといっても学生の副業としてはバカにできないし、ダメだったら受験や就職のタイミングで諦めてもイイ。一番ダメなのは、最初からあきらめて何もしないことだよ」

「たしかに……」

「それに、アルバイトと違って好きなタイミングで休めるから、テスト期間や連休の融通がきくのもいいね」

「あぁ、それは助かるかも!」

「話がそれちゃったけど、ブログ意外だと…………今、熱いのはやっぱり小説かな。定期的にコンテストが開かれていて、入賞しただけでも書籍化してもらえるから、その印税が入るのは大きいよ」

「印税って、どれくらいはいるの?」

「それは出版社の規模しだいだけど、たしか80万前後くらいだったかな?」

「「おぉ……」」


 小説は性質上PVが稼ぎやすく、(最優秀賞だけでなく)入賞しただけで書籍化まで行けるので、わりと後追いでも成り上がりやすい環境がある。


「あとはイラストや素材系…………BGMとか効果音の配布。それとプログラミングができるなら自作ツールの配布とかかな」

「プログラミングは……」

「このあたりはハードルが高いけど、活動を続けて実力が伴えば就職や独立は現実的だよね」

「たしかに」

「このあたりは再生数で稼ぐんじゃなくて、名前を売ってそこからって感じ。それこそ人気ストリーマーの切り抜きに手描きイラストをつけて稼いでいる人も居るし」

「あぁ、あるある。それこそイラストレーターとして売れてから、ゲームや歌を出したりな!」


 正直、中学生にはハードルが高いのだが…………だからこそ下積みとして今からやっておくのは良いと思う。そうすれば、たとえば大学で何か大きなことをしようとしているグループに誘われる可能性だってあるわけで。


「やっぱり、小説っていいんだ……」

「…………」


 やはり委員長は、小説や執筆活動に興味があるようだ。パソコンの話も(大学などの活動を考えるのならノートが最適なところを)何とかお金を用意してミニパソコンを買う道を選んだ。(まだ買えていないけど)


 小説だと、キーボードが酷使されるので一体型のノートは都合が悪く、長時間の作業にも向かない。その点ミニパソコンだと、キーボードだけ自分に合わせた良いものに交換できるし、姿勢の問題も、それこそソファーやベッドでも作業できるので楽だ。もちろん、楽だからと言って変な姿勢で作業すれば、悲惨な事になるけど。




 そんなこんなで、僕はこのあとも副業について質問攻めにあった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る