#020 パソコントレード大作戦③
「へ~、近くにこんなお店があるなんて、知らなかったよ」
「まぁ、喫茶店でパソコンを借りるって発想には、なかなか行きつかないですよね」
休日、僕たちは近所にあるインターネット喫茶に集まっていた。このお店は、ボックス席や貸し出しデバイスに力を入れており、時おりビジネスマンも利用する便利な喫茶店だ。こういうお店は、食事や時間つぶしとしては割高で、万人が利用するものではないが、我が家は近所と言う事もあり"株"を購入して、たまに利用している。
「その、代金は、必ず返しますから」
「いや、気にしなくてもいいよ。
「ですが……」
「ミサオ、ここはジュン(男)の顔を立てるトコロですよ」
「"優待券"だっけ? 使わないと無くなっちゃうらしいし、ここは有効活用ってことで」
「うぅ、まぁ、そこまで言うのなら」
僕のオゴリを渋る委員長。まぁ、オゴリと言っても株主優待を利用しているので(基本部分の)利用料はタダになっている。
株の配当は大きくわけると現金と優待券の2つになるのだが、このお店は優待券形式であり、株を保有していれば幾つかのサービスが配当代わりに無料になる。株は暴落する可能性もあるが、基本的に売ればほぼ同価値なので、我が家では貯金感覚で幾つか保有している。
「もちろん、延長やメニューは自腹だから…………頼むなら払ってね」
「うぅ、どうしよう。気になるけど…………お財布が」
「あるなら、パソコンやその部品に、使っていますよね」
「まぁ、とにかく"用事"だけでも済ませちゃお」
今回、ここに集まった目的は『第二次パソコン交換会』だ。みんな第一希望の端末は軽く触ったので、念のために第二希望も触っておこうって話になる。場所は、誰かの家でも良かったのだが『4人が集まってそれぞれの端末を広げて、おまけに操作を説明して』となれば、子供部屋では間違いなく手狭になる。
「部長は"コレ"、あとで持って帰ってくださいね。一応保護してありますけど」
「うぅ、緊張するよぉ」
「その、転ぶとかしなければ、大丈夫なはずですから」
部長は用途的にデスクトップパソコン(据え置き)が確定しているのだが、交換会ついでに購入した方が良い追加パーツを体験してもらう事にした。
「それじゃあ私のパソコンを…………シャルちゃんに」
「では、ノートはミサオに」
「あぁ、その、先輩、どうぞ」
「それで、どうだった? ……??」
「こっちは……。 ……?」
端末を交換し、感想や注意点や話し合う面々。このくらい部活中もやっているが、あの場は何かと話がそれがちなので、こういうお店(有料)を借りると真剣みが増すというか、やはり捗る。
「そういえば、オタク田って…………その、もしかして、お金、もってるの?」
「えっ? 普通だと思うけど」
話も落ち着いたところで、委員長が漠然とした質問を投げかけてきた。
「たしかに、たっ君っていろいろ持っているよね。イトコのお兄さんだっけ? パーツを分けて貰えるっていっても、自分でも買っているんでしょ??」
「それは、まぁ、それなりに」
中学生の財布事情を考えれば、自作パソコンは過ぎた趣味だ。もちろん自作はピンキリで(たぶん)想像よりは使っていないはずだが、それでも結構な金額を投資しているのは事実。
「株もそうですが、ヤリクリが上手いってことでしょうか?」
「ヤリクリした程度で、何台もパソコンが出せるようになるとは、思えないけどね」
「まぁ…………僕の場合は、その、"収入"があるから」
「えっ、そうなの!?」
「おお、できれば私にも教えてほしいです。しょうじき…………(財布事情が)きびしくて」
「そんな大そうなものじゃないよ。描いたイラストや小説を、投稿サイトにあげているだけ。それでサイトから報酬が貰えるんだ」
「「あぁ~」」
動画投稿が収入に繋がるのは有名だが、それ以外の投稿サイトでも利益を配分しているところはある。そういう所に投稿していれば、中学生の僕でも収入が得られるわけだ。
「簡単に儲かるわけじゃないけど…………だいたい月5千円くらいかな?」
「「おぉ!!」」
「でも、かかった時間を考えると、アルバイトの10分の1にもならないから…………効率は最悪。もちろん(中学生だから)アルバイトなんて出来ないけどさ」
「でも、5千円は大きいよね」
「そうですね。それだけあれば、かなり助かります」
動画投稿なら、見てくれる相手が世界規模になるので、ヒットすれば本業にすることも可能となる。しかしイラストや小説となると、分母が少なすぎてランキング入りしても本業にするのは難しい。しかし無いよりはマシであり、そのおかげで僕は必要な機材を購入できている。
もちろん、そこまでいくのに膨大な時間と苦労を積み上げなければいけないので…………好きじゃないと出来ない事であり、正直、まったくオススメできないのだけど。
「つか、オタク田。小説なんて書いていたのね」
「え? 言っていなかったっけ? その、まぁ、
「その、ちょっと、見直したわ。そんな事していたんだ」
美少女イラストもラノベも、僕からしてみれば貴賤はないのだが…………委員長的に小説はOKらしい。そう言えばBLが好きらしいし、美少女を前面に押し出していなければいいのだろう。
「ちなみに、小説はそっちのミニパソコンと部長に渡したメカニカルキーボードで書いていたんだよ」
「へぇ~。……その」
「??」
「私でも、その、書けるものなの?」
「まぁ、一番ハードルの低い創作活動だと思うよ。最悪スマホでもできるけど、長時間の作業になるからキーボードや椅子には拘りたいかな」
「そうなんだ。その……」
ひたすらモジモジする委員長。まぁ、バカにしていたオタクの僕を認め、教えを乞うのに抵抗があるのは理解できる。
「教えるのは全然OKだし、参考になるサイトをあとで纏めておくよ」
「え? あぁ、その…………ありがとう。助かるわ」
正直、小説に興味があったのは意外だけど、半分は収入の話もあっての展開なのだろう。
「そんなに、気にしなくてもいいよ。どうせ、調べれば出てくることだし」
そんなこんなで、けっきょく話がそれてしまったが、今回はいくらか有益な話ができたと思う。
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