#007 外国人から見て
「へぇ、それじゃあシャルちゃ……。……?」
「そうですね~。でも……。……」
休み時間、僕は机で寝たふりをしながら師匠とクラスの女子の会話に耳を傾ける。
「やっぱり、付き合うならフランス人だよね!」
「私はイギリス人とか、欧米人ならOKかな?」
「え~、私的には韓国じ……」
「「それはない!」」
しかし、くっそっつまらない話だ。普段なら本気で寝ているか、絵の練習でもしているところだが…………それでも師匠が絡んでいるとなると、気になってしまう。
「皆さんは、せっかく日本人なのに、日本人を選ばないのですか?」
「え~、それはまぁ、結婚を真剣に考えるのなら日本人になるんだろうけど…………それはそれとして、理想ってあるじゃない?」
師匠はガチ目のオタクだ。とはいっても、社交性はあるので女子連中につかまれば普通に女子トークに混じっていく。
「外国では、日本人は
「え? 可愛い??」
「ないない。私たち、平顔族の寸胴星人だし」
正直、女子トークに興味は無いのだが、カルチャーギャップなどの話題は知的好奇心に訴えかけてくるものがある。
「何を言っているんですか。日本人に囲まれているから分からないかもですけど、皆さん、すごくカワイイです! 他の国なら、私より絶対モテモテですよ!!」
「え? そうかな~。まぁ、そうかもね~」
あと、師匠の天然モテムーブが見ていて面白い。日本贔屓といってしまえばそれまでだが、やはり各国を渡り歩いた人が言う事は説得力があるし、なにより勉強になる。僕は外国に憧れはもっていないけど…………なんだか異世界転生モノのネタになりそうで。
「なるほどね。まぁ、女子は良いわよね。でも、男はダメ!」
「え? 男性も人気ですよ? シャイだけど、紳士でカワイイし」
「可愛いって、そればっかりね」
ちなみに僕は、イラストや漫画、あとは小説も書いている。どれも中途半端でまったく評価されていないけど…………まぁ、とにかくストーリーを思いえがき、それを形にするのは楽しい。
「アニメもそうですけど、日本のソレはキュートやアニメーションと分けられています。日本的なキュートが"カワイイ"で、日本独自のアニメーションのみ、"アニメ"と呼ぶことを許されるのです」
「「へぇ~」」
「でも、やっぱり付き合うなら、男は白人だよね。白人っていうかレディーファーストの紳士! 背が高くて、イケメンで…………それに比べて、日本男児は。いまだに男尊女卑が抜けきらないクズばかりで……」
「そんな事はありませんよ。日本はむしろ逆、女尊男卑の国で……。……」
あと、やっぱり正論パンチが1番、聞いていてスッキリする。
たしかに女性割引はあるけど男性割引は聞いた事が無い。ほかにも上から目線で男を値踏みして、セクハラや痴漢では圧倒的に女性側が有利。そんな国が…………つか、そもそも『男尊女卑だ!』なんて男を堂々と批判している時点で論理破綻しているんだよな。
「それはそうかもだけど……」
「皆さん、ダマされてはいけません! 人種差別を規制する国は、差別が横行しているから規制するのです。フェミニストも、ポリコレも、レディーファーストも! (白人の)私が言うのもなんですが…………彼らは開拓者であり、キレイ事を言っても中身は侵略者。自分たちの利益が1番大切な利益主義民族なのです!!」
「それは、さすがに言い過ぎじゃ……」
男尊女卑と同じで、言い過ぎなのは師匠自身が証明している。日本にも間違った思想を発信する活動家はいるし、それが海外にも居て…………師匠から見ると、海外の方がヤバく見えるのだろう。
「とにかく、何処の国にも悪い人は居ます。私は心配なのです。大好きな皆が、悪い人にダマされないか」
「「シャルちゃん」」
結局、僕がこのクラスで浮いているのは『オタクだから』ではなく、単純に『コミュ障だから』なんだと実感して…………ひっそりヘコんだ。
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