葉月の歌 上
八月一日
面倒なデイサービスの入浴は
「月のものが」と拒否する祖母よ
心はいつまでも乙女。
八月四日
盆前にツクツク鳴いて夏惜しむ
始まりの声 終わりの予感
夏が始まると、もう終わりが見えてくる。
ゆく夏を惜しみ、今日も蝉たちは元気。
八月五日
身長が十センチ以上縮まりて
バレー選手は小さき婆に
身長が百六十センチ以上あった祖母。
昔はスカウトされてバレーボールの選手だったと言っていたけれど、今では家で一番小さなおばあちゃんに。
八月六日
マスクして すでにワクチン四回目
祖母はキョトンと「コロナって何?」
新しい概念はどうしても記憶に残らないようで。
知らないままでもいい言葉なのかなとも思いつつ。
生活習慣のマスクは身についたので、言語と行動記憶は別のよう。
八月七日
ダイエット 常に気にした祖母がいま
小さくなりて服がだぶつく
先生からは、とにかく好きなものを食べてしっかり栄養を取って下さいと言われるように。
八月八日
瞬間で記憶を失くす祖母なれど
楽しきかけら しばし留まれ
八月十日
祖母通うフットパワーの名称も
十年選手 すっかり馴染む
最初はフットパワーって何?だったけど、今ではすっかりレギュラー用語に。そして今日も、祖母がフットパワーにお出かけ。
八月十一日
お焚き上げ 山の下より墓拝み
供えの花は持ち帰り生ける
お盆にはお墓参りですが、あまりの暑さに上までのぼれず。
山の下から手を合わせ。
八月十二日
包装紙 きれいに畳みブックカバー
生活の知恵 祖母より学ぶ
八月十四日
菓子箱にいっぱい詰めたボタンたち
祖母が集めた時間のカケラ
裁縫をよくしていた祖母。押入れから出てきたいくつもの菓子箱を
開けてみたら、大小様々カラフルなボタンがいっぱい詰まっていました。
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