祖母と過ごした最期の1年
海月猫
序
九十七 祖母の生まれは大正で
昭和平成令和に至る
令和五年二月二十八日、祖母が自宅から静かに旅立ちました。
大正十四年生まれだった祖母は、大正、昭和、平成、令和と四つの年号を駆け抜け、戦前戦後と目まぐるしく変化を続ける時代を強く生き抜いてきました。
大正十四年、福岡に生まれ、四人兄弟の長女。
女学校時代を経て、十代のうちに一回り年上の祖父と結婚しました。
祖母の母と、祖父の姉が同級生だったことからまとまった縁談でした。
終戦を広島の呉で迎え、戦後は長崎の端島(軍艦島)での暮らしを経て、神奈川へ。その後祖父の転勤により青森での数年間を挟み、人生の後半は神奈川の葉山で過ごしました。
多才で趣味の多い祖母でした。女学校時代から得意だった和裁や洋裁、さらには茶道、油絵、和歌、朗読と、どれも熱心に打ち込んでいました。新しいことを学ぶことにも前向きで、車の免許を取ったのも四十代になってからでした。
平成四年六月六日に九十七歳となった祖母。
思えば祖母は昔はどこに日常の機微や、旅行の思い出を丁寧に短歌に綴っていたものです。
最近では母も、祖母の短歌集をあんちょこに、短歌作りに悪戦苦闘の様子。
歌を詠み始めた頃は、祖母と暮らす日々がまだまだ続くと信じて疑わず、それが最後の年になるとは思ってもいなかったのです。この一年の歌を読み返してみると、そこには日々元気に、笑ったり、怒ったり、忘れたりしながら暮らしていた祖母の姿がありました。
最後の日々は、読み返すとつらい思いも強いのですが、力強く生き抜いた祖母の記録として留めたいと思います。
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