第6話 背中を舐めてもいいですか?
「るん、るん、るんっ」//上機嫌で
「えへへ。今日は私、ルンルン気分なんです。なんでかって、それは秘密です」
「だって今日は、とっておきの触れ合いを……」//小声でつぶやく
「は、はい!? な、なんにも言ってませんよ!?」
「そういえば、先輩? 今日は先輩のアパートに私が行く予定だったのに、どうして急にこっちに来たんですか?」
「えっ? 家に害虫が出たから? 害虫ってどんな虫ですか?」
「それは言えない? うーん、なんだろう? ムカデですか? ムカデに噛まれると皮膚が腫れますからね。気を付けないといけません」
「えっ、違う? じゃあ、ハチですか? ハチも危ないですよ。特にスズメバチは、刺されると死に至ることもありますから、気を付けないといけません」
「それも違う? じゃあ、なんだろう……?」
「……」//考える
「えっ、私に苦手な虫があるかって?」
「うーん……」//考える
「特にないですね! 私はどの虫も大好きです!」
//SE ゲーム機を机に置く音
「あっ、先輩。ゲームのデイリー終わりましたか。それじゃあ、寝る準備しましょう」
「今日は、私が先輩の布団を敷きますよっ」//上機嫌で
//SE クローゼットを開ける音
//SE 布団を敷く音
「るん、るん、るんっ」//鼻歌をうたいながら
「はい、敷きました! それじゃあ、先輩、いっしょに寝ましょう」
「電気、消しますね」
//SE 電気を消す音
「先輩? 先輩の布団に、入ってもいいですか?」
//SE 布団に入る音
「ふふっ、先輩とこうやって隣り合わせで寝るのも慣れてきましたね。先輩も、慣れましたか?」
「えっ、まだちょっとドキドキする? そうですか」
「私も、実はちょっとドキドキします……」//小声でささやく
「ねぇ、先輩? うつ伏せになってくれませんか?」//耳もとでささやく
//SE 布団の擦れる音
「それでいいです。そのまま、じっとしていてくださいね」
「うんしょ」
//SE 布団の擦れる音
「えっ、なにしてるって? 先輩の上に乗っているんです」
「先輩の身体、意外に大きくて、がっしりしてますね」
「あ、あの……」//耳もとへ近づく
「シャツ、めくってもいいですか?」
「えいっ!」
「きゃっ!? 先輩、動かないでくださいよ。落ちちゃうじゃないですか。じっとしててくださいっ」
「ふふふ、先輩の背中。触ってもいいですか?」
「……」//嬉しそうに背中をなでる
「わぁ、先輩の背中、スベスベですね」
「……」//顔を背中に近づける
「それに、なんだかいい香りがします」
「あの、せんぱーい?」//耳もとへまた近づく
「先輩の背中、舐めてもいいですか?」
「ダメ? いいじゃないですかぁ? ちょっとだけ。ちょっとだけでいいから」
「きゃあっ!? だから、動かないでくださいよ。わかりました。舐めませんから。やりません!」
「でーも……」//いたずらっぽくつぶやく
「チュッ」
「えへへ、背中にキス、しちゃいましたー」
「はぁー」//うっとりするように
「先輩の背中、落ち着きますね。まるで先輩が……」
「先輩が、ゴキブリみたいですぅ~」//変態チックに
「一般的な動物は交尾の際、メスの上にオスが乗る姿勢を取ります。けれども、ゴキブリは交尾をする際、オスの上にメスが乗るか、あるいはお尻をくっつけてお互いに真逆を向く姿勢になるそうです」
「でも、それだとメスが自由に動き回れるので、なかなか交尾が成立できないこともあるみたいです。そのため、ゴキブリの中には、オスが背中からメスを惹きつける分泌物を出すものがいるんですよ」
「惹きつけられたメスは、オスの背中に乗って、その分泌物を食べ始めます。その間に、オスは交尾器をメスへと挿入するそうです。背中に乗っているメスをどうやって把握できてるかといいますと、ゴキブリの背中には、センサーのような毛があるんです。それを使って、オスはメスの位置を確かめることができるそうですよ」//だんだん早口に
「だから、私も先輩も、今はゴキブリですぅ~。私が先輩の背中をペロペロしているうちに、先輩はぁ……」//変態チックに
//SE ガッ! 突然起き上がる音
「わぁっ!? せ、先輩!? 急にどうしたんですか!?」
「あっ!? やめてっ! 痛いっ!?」
「先輩、これ、
「痛いよ~!? 苦しいよ~!? せんぱーい、やめで~!!」//泣き声で
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