第10話 返して欲しいんだよ、僕に
(10)
差し出された手の中に握られている沈黙と言う「
その誠実はまるで拾い上げた赤子の柔らかい微笑のようにとても蠱惑的に真帆の「
だが真帆の「
――誰が渡すものか
毅然とした意志がある。その毅然とした真帆の意思に灯る一つの疑問。
何故、私が
ちなみに鎌田から手渡された
戦後に誰かが書き込んだ五線譜のようで今も僅かに酸化の黄身が掛かった状態ではあるが、透明ファイルに閉じ込まれ、且つ
普段は校長室の金庫に保管されているようだが、何か特別な時にはこうして外に出される。
つまり――
だから、それを狐の白面が知っていることがますます真帆に疑惑を持たせ、より毅然な気持ちにさせたとしても無理はない。
無理はない上に、断然、真帆の心中では面前の狐の白面が誰だか分からないその不明さが相まって、より深く「
その真帆の態度に感ずいたのか、狐の白面は言った。
「
狐の白面の声が渡り廊下の天井に響く。
続けて言う。
「
湧き上がる疑問に符牒する真帆の眉間に皺が寄る。
――僕等?
(…違う、そうじゃない)
いや、返して欲しいんだよ、僕に?
(そう言った…)
毅然とした「
狐の白面は本当の妖かもしれない。人心を掌握する知性でもあるというのか。
最後に真帆の
「そうさ、何せそいつは僕の祖母、田中イオリが作詞した歌詞なんだから」
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