第14話 うへぇ
〈またS級モンスターだ!〉
〈コカトリスじゃねえか!〉
〈やばいこいつ強いぞ〉
〈頼む負けるな勝ってくれ〉
〈お兄ちゃんがんばれ〉
〈みっしー!〉
俺たちの目の前には、巨大なモンスターがいた。
頭部と胴体がオスのニワトリ、尻尾が蛇になっている、コカトリスと呼ばれるモンスターだ。
その等級はS。
A級までならともかく、S級以上のモンスターとなるとその強さは格別だ。
趣味でダンジョンに潜っているような一般の探索者ではとてもじゃないが相手にならないほどの力を持つ。
普通なら俺たちごときのパーティなら、一瞬で全員殺されるはずだ。
だけど。
俺には、このレアスキルがある。
「インジェクターオン! セット、gaagle Adsense! 残高オープン!」
[ゲンザイノシュウエキ:2,428,400円]
「セット、5万円!」
五万円分のパワーが充填された注射器を
「肩出せ」
「うん!」
俺は
プランジャーを一気に押し込み注入する。
「んあっ! ぁあん……」
〈ちょっとエロい〉
〈ぬける〉
〈たすかる〉
こいつら人の妹に欲情しやがって。こいつは俺のだからやらん。
「
「うん、わかった!」
そして呪文をぶつぶつと唱える
両手を前に突き出して、叫ぶ。
「
すると俺たちの前に透明に光り輝く魔法の防壁が出来上がった。
俺はさらに続ける。
「セット! 五万円! みっしー!」
「あ、うん」
今度はみっしーの肩に注射針を刺す。
「いだだだだだ! やさしく! やさしく!」
そうはいってもなー。
これでもめいっぱいやさしくしてるんだが、俺のスキル、マネーインジェクションのインジェクター、つまり注射器の針ってかなりぶっといんだよな―。
痛いのは我慢してもらうしかない。
パワーを注入し終わると、俺はみっしーに、
「俺がつっこむから、みっしーはデバフ魔法で援護してくれ」
「う、うん、わかった……私、低レベル魔法しか使えないけど……」
「それでもいい、俺のマネーインジェクションでパワーアップしているはずだ。稲妻の杖の効果をつかってもいい。450万円は伊達じゃない、杖の効果にはマネーインジェクションのバフは効かないけど、そのままでも威力は通じると思う。じゃあ、
そして。
「セット! 十万円!」
最後に自分自身に注射針を打ち込む。
よっしゃ、行くぞ!
コカトリスがそのクチバシで俺たちに攻撃をしかけてくる。
だけど、パワーアップされた
その防壁を破ろうと何度もクチバシ攻撃するコカトリス。
「私の心の光よ、はじけよ! はじけてきらめけ!
そこへみっしーが閃光の魔法をかけた。
視力を低下させる一番低レベルのデバフ魔法で、普通ならS級モンスターに効くわけがない。
だけど、俺のマネーインジェクションでその効果は数倍にもなっていた。
コカトリスの目の前で、バシュッ! と小さな爆発のようなものが起き、それが作り出すフラッシュのような瞬間的な光がコカトリスの網膜を焼く。
「グゲェェェェッ!!!」
「よし、よくやったみっしー!!」
俺は叫んで刀を引き抜いた。
視力を失ったコカトリスはその場で暴れまわってなにもない宙をクチバシでつつきまくっている。
俺は後ろにまわり、飛び跳ねた。
我ながら人間とは思えない跳躍力、これが十万円分の力。
〈すげー!〉
〈人間ができる動きじゃないな〉
〈もはや特撮だろこれ〉
〈SSS級の動画でもこんなん見たことない〉
十メートルは飛んだだろうか、暴れるコカトリスの首もとを狙って刀を振り下ろす。
――スパァン!
なんの抵抗もなく首が切り落とされた。
コカトリスはなにが起こったのかわからなかったのだろう、床に転がった首だけで「グギャギャギャァァァ!」と叫んでいたが、しばらくして動かなくなった。
首を切り離された体の方は、そのままトトト、と数歩歩いてからバタリと倒れた。
〈瞬殺やんけ!〉
〈つええええええええええ!!〉
〈これまじでSSS級ダンジョンを攻略できるかも〉
【50000円】〈今日の分です。これで俺のみっしーを助けてください〉
「私、君のみっしーじゃないからね! でもありがとう!」
うん、ちゃんとお礼をいえるよい子だな、みっしーは。
「ありがとな!」
俺もお礼をいっとく。
正直、みんなからのスパチャが生命線なところがあるからな。
そして俺たちはこの勝利によって、ほんとに大きな成果を獲得したのだった。
俺たちの生存に直結する、大きな大きな成果。
それは。
「肉をゲットしたぜぇぇぇぇ~~!」
「……でもお兄ちゃん、半分蛇だよね、こいつ……」
言われてみてみると、なるほど尻尾は蛇で、なかなか気持ち悪い。
でも、上半身(?)はニワトリなので……。
「チキンゲットだぜぇぇぇぇ!!」
もう一度叫んでおく。
「……これ食べるのかぁ……」
みっしーはうへぇ、といった顔でそういった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます