第12話 読殺本②
そうして僕はようやく川に着いた。
その頃には本の残りのページ数は100を切っていた。
徐々にシナリオが進むスピードが速くなってきている。もし、水で濡らしてもどうにもならなかったらいよいよヤバいかもしれない。
僕は本を川につけた。
本は水分を含んで重くなっていく……がしかし、本がある程度重くなった途端、一気に本は軽くなった。
「なっ!!水が本を避けている!!しかも本が水から出た瞬間に乾いたぞ!!」
川には本を中心に球状の穴が空いていた。
どうやら何をやっても無駄のようだ。
この本には読んだ者を絶対に殺すという“中途半端”じゃない執念深さがあった。
「このまま……このまま僕はシナリオ通り『ナイフに刺されて』殺されるのか……ははっ」
乾いた笑みが漏れる。
その気持ちを表してか、いきなり雨が降ってきた。
この本、雨を防ぐには丁度いいかもしれないな……
ふとそんなことを思う。
死へのカウントダウンが始まった。
僕はふらふらと歩き出す。
「これも、あれも、全部シナリオ通りだ……だが良いか?お前みたいな殺人兵器は知らないと思うが、シナリオには“アドリブ”ってもんがあるんだ。」
シナリオは加速していき、遂には僕が歩くという出来事さえも1つのシナリオになっていた。
残りは30ページだ。
「して、お前は気づいているのか?否、目がないお前は何も見ることができない。今、僕が瞳の家の前にいることに。」
僕は瞳の家の前にいた。
これが希望。そして“アドリブ”だ。
「おい!!舞香!いるか?」
僕は瞳の家に入り大声で叫んだ。
「はい。あっ杜庵さん。なんの御用でしょうか。」
「この本の記憶を消してくれ。全部だ。後、絶対に中を見るなよ。」
その後、この不可解な災難は幕を下ろした。
僕は踏んだり蹴ったり転んだりしたので全治1週間程の怪我を負った。
あの本は今、僕の家に置いてある。
どうしても処分できないのだ。
一体あの本は何なんだろうか……
真相はもう1度本を読んだら分かるのかもしれない。
だが、それほどの勇気は僕にはなかった。
今までとはジャンルが違う災難……今後もこんな災難が続くのだろうか?
僕は自室でそんなことを考えるのだった。
夕食の時間がやってきた。僕はリビングに下りる。
匂い的に今日の夕食はカレーだろう。
「今日はカレーだ。」
予想通り、夕食はカレーだった。
「それにしても痛そうだな。その傷。」
「あぁ。まぁまぁ痛いよ。今日は運がなかったな。」
「明日は平日だが学校はどうするんだ?」
「――――――」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます