第1話

「そんな嫌そうな顔しないでくださいよ...」



そりゃあ、いい顔しろってほうが難しいもんだ。

1歩踏み外したら死ぬところだったんだぞ。

まだ心の準備もできてないのに。



「それで、どうしたんですか?」



腕を掴まれて、引き寄せられた。



一回り小さい背丈に黒い髪。

長めの前髪から覗く目は、綺麗な緑色をしていた。

顔は整ってる方で、歳は...

見たところ高校生くらいか?


こんなやつ、俺は知らないぞ。

会ったこともない。

...誰かに話しかけられたなんていつぶりだ?



「なんで何も言わないんですかー?」



初対面なのに馴れ馴れしいやつだな...

仕方ないだろ。


俺はいつからか、喋れなくなったんだ。

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