第4話 知らないスキルとステータス、それとジョブ


【名前 アイク】

【ジョブ 道化師】

【レベル 1】

【冒険者ランク F】

【ステータス 体力 3300 魔力 3620 攻撃力 3400 防御力 3200 素早さ 3800器用さ 4100  魅力 3850】

【ユニークスキル:道化師 全属性魔法 助手】

【アルティメットスキル:アイテムボックス(無限・時間停止) 投てきS 近接格闘S 剣技S 気配感知S 生産S 鑑定S 錬金S】


「え、なにこれ?」


「……いや、こちらが聞きたいですよ」


 俺が水晶に触れると、馬鹿みたいに高くなったステータスとスキルが映し出されていた。


 知りもしないユニークスキルとアルティメットスキルの数々に、俺は言葉を失っていた。


「なんでこれで冒険者ランクFなんですか? もしかして、今まで冒険者ランクをわざと下げるように報告してましたか?」


「し、しませんよ、そんなこと!」


 俺の能力値が冒険者ランクに比較して高すぎたせいか、ミリアに疑いの目で見られてしまった。


 俺だってこんなステータスとスキルがあったなんて知らなかった。というか、いつの間にジョブが変わってる?


「あの、ジョブって急に変わることあるんですか?」


「進化とかすれば変わることはありますけど、もっと高ランクの冒険者にならないと進化なんかしませんよ」


「ははっ、ですよね」


 俺が知っている限り、俺のジョブは『道化師見習い』だった。その見習いの部分が取れて、道化師に進化したみたいなんだけど、そのことは言わない方がいいかもしれない。


 なんか今の流れで言ったら、余計に疑いを持たれそうだしな。


「えっと、冒険者ランクって何段階あるんでしたっけ?」


 俺は話を反らすために初歩的な質問をして、話題を変えようとした。


 さすがに強引に話を変えようとし過ぎて無理があったようだが、ミリアはむっとした顔をしながらも職務を果たそうと口を開いた。


「冒険者ランクは、SS、S、A、B、C、D、E、F、Gまでの9段階です。初めに冒険者になるとGからスタートして、クエストをこなしていく中でランクを上げていくんです。もちろん、レベルやステータスだって考慮されます。……されるんです」


「な、なるほど」


「だから、こんなに高いステータスで冒険者ランクがFというのはありえないんです。最近冒険者になった方なら、ギリギリありえなくもないんですけど、アイクさんって結構長く冒険者やってますよね」


「ど、どこにそんな証拠があるというのだね」


「冒険者カードの発行年を見れば明らかですけど?」


「ぐっ……」


 なぜか追い詰められてしまって犯人のような口ぶりをしてしまった。ミリアのノリに悪ノリしたら、なんか俺が本当に何かの犯人みたいに見えてきてしまった。


「ちなみに、今の俺のステータスだと冒険者ランクってどのくらいになるんですかね?」


「スキルが特殊過ぎて分からないですけど、冒険者ランクCは硬いでしょうね。あとは、こなしたクエストのランクとその数によってですけど、アイクさんは今までどのパーティにいましたか?」


「えっと、『黒龍の牙』にいました」


「あ、最近勢いの凄いパーティじゃないですか。まぁ、素行はあれですけど……おっと」


 ミリアさんは思わず口が滑ってしまったかのような口ぶりでそんなことを口にした。


 どうやら、ギース達のパーティはギルドにとってあまり良いパーティと認識されていないらしい。


 ギース達の事務処理はほとんど俺がやっていたから、そこまでギルドとは関りがないはずなのだが、それでも素行の悪さが目立つほどなのか。


 ミリアは俺のギルドカードを板状の魔法具に置いて、俺がこなしたクエストの数を確認していた。


 クエストを達成した後に報告書と共にギルドカードを提出することで、ギルドカードに達成したクエストが記憶されるようになっている。


 それを確認することで、俺の冒険者ランクが妥当かどうかを確認しているようだ。


 これでも、ギース達のパーティにいたときは多くのクエストをこなしていた。ギース達にはよく思われていなかったが、実際に数字としてはその数が残っているだろう。


「……あの、アイクさん」


「はい?」


 その魔法具に表示されたクエストの内容を見て、ミリアは気まずそうな目をこちらに向けてきていた。


 な、なんだろうか。ただのクエストの履歴を見ただけでそんな顔をすることなんてあるのだろうか?


 そんな不安を抱えていると、ミリアは少し重くなったような口を開いた。


「今までアイクさんが参加したクエスト……全部サポーターとしてなんですけど」


「え? さ、サポーター?」


 そして、俺はギース達にどう扱われていたのか、数字として知ることになるのだった。


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