魔物襲撃
キエからサクラへの移動初日。俺達は馬車に乗りながらのんびり過ごしていた。カミトとエッジは姫の馬車に乗り込み、お喋りをしながら警備を行う。突然の攻撃に対応するため
「いやー、この馬車は揺れなくていいですね。俺たちここに来るまで魔物での移動でしたが大変でしたよ」
揺れない馬車に快適そうなエッジ。この馬車は確かにすごい。滑らかな動きをしている。
「ええ、この馬車は王族移動用の馬車なんですが、素晴らしいです。もう普通の馬車は乗れないかもしれないですね」
カミラ姫はそういって笑う。
「皆様は普段はどうやって移動するのですか?」
「私達は徒歩や走っての移動が多いですね。森の中を移動することが多いので、馬車や魔物だとどうしても動きずらいこともあります」
「なるほど」
「皆様、そろそろ昼食の時間にしたいと思います」
ブロットが声をかけてくれる。馬車から降りると、騎士やメイドが食事の準備をしている。
昼ごはんを外で食べる。流石王族、移動中でも美味しいご飯を食べることができる。保存食ではありながらも美味しい料理を食べる。
「美味しいですね。これはどのように作っているのですか?」
アリエッサがメイドに確認している。
「申し訳ございません。料理長秘伝のレシピのようで…… 私達には教えてくれないのです」取り入れることができたら最高だと思ったが、そこまで甘くはない。
「お皿とゴミは回収させていただきますね」
食べ終わったら皿はメイドが片付けてくれた。いたせりつくせりだ。
移動を再開すること1時間。騎士達の慌ただしい声が聞こえてきた。
「前方300mに、大量の魔物を確認しました!」
俺とエッジは窓から前を確認する。開けた高原の向こうに、大量の魔物が確認できた。おそらく100匹は居そうだ。
そして、魔物はどう見ても錯乱状態にある。魔物同士で戦っている姿や暴れている姿もある。
「人為的な動きを感じますね。何らかの魔道具を使っておびき寄せられたのでしょうか」
エッジの発言通り、きな臭い動きだ。とはいえ、そのようなことを考えていても仕方がない。まずは殲滅する必要がある。アリエッサに大規模魔法を連発してもらうか……
俺がそんなことを考えていた時に姫から声をかけられる。
「カミト様、是非ここはカミト様の実力を見せていただけないでしょうか? 龍を倒したというそのお力、一度拝見したく」
「…… わかりました。ただ、おそらく撃ち漏らしが発生するので残党の片付けはメンバーに頼みます」
「ええ、それで構いません。ありがとうございます」
「アリエッサ!エリス! 俺が一撃ぶつけるから後は頼む!エッジは魔物を調査してくれ。何か動きが怪しい! アンは姫様の警護だ!急襲が来る可能性がある!」
「承知しました!」
俺は前方に単身移動する。魔物までの距離は150mほどだ。さて…… 一撃かますとしよう。
「くらえ、絶剣」
魔法を発動すると、俺を中心として大量の剣が上空に浮かび上がる。その数は100本以上だ。全ての剣が魔物の方向を向いている。大量の剣が空に浮かび上がり、キラキラと輝く光景は絶景だ。俺は一本の剣をつかみ、地面に突き刺す。突き刺した剣はまるで穴に落ちたかのように綺麗に沈んでいった。久しぶりに全力を出したが問題なさそうだな。
「何匹殺せるか…… とりあえず試してみるか」
俺は手を振り下ろす。全ての剣が前方に飛んでいった。弾丸のような速度で到来した剣たちが魔物を貫通していく。
頭部や腹部に剣が貫通し、次々と絶命する魔物達。ただ、剣が飛んでいくだけなので手や足を貫通するだけで、致命傷にならない魔物もいる。完全に撃破できたのは半数程度だろうか。
絶剣という魔法は如何なるものも切り裂くことができる剣を生み出す魔法である。ただ、生み出すことができる剣は一つに限定されているわけではない。自由自在に体の周りに剣を生み出すことができるのである。そしてその剣をまとめて自由に操ることもできる。
何でも切り裂く剣を大量に生み出し、全方位攻撃を仕掛ける。これがカミトの必殺技の一つである。
「よし、後は任せた!」もう一撃攻撃を加えることもできるが、残りはメンバーに任せて良いだろう。カミラ姫のリクエスト通り、俺の実力は見せることができたはずだ。
アリエッサは上空から空爆、エリスは個別に剣戟で魔物を撃破していく。エッジは転がっている魔物の死体を確認している。何かわかるといいのだが。
「ブロット、見た? カミト様の魔法は凄まじいね」
「ええ、あれだけの剣が向かってきたら…… 勝ち目はないかもしれません」
「平凡な軍隊なら壊滅させることもできそうね。しかもあれ以外にも魔法はあるのでしょ?」
「そのようです。詳しくは不明ですが」
「楽しみねえ。色々話聞いてみないとね」
「敵と思われる魔物は全て消滅しました。周辺に危険な気配はありません」
アリエッサがカミトに告げる。
「ありがとう。わかった。姫様に伝えないとな」
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