護衛の依頼
月が綺麗な夜、俺達ヘッズオブドラゴンはギルド長に呼び出され、ギルドの来賓室に集合していた。
「わざわざ来てもらってすまないな。お前達にお願いしたいことがあってな」
ギルド長はすまなそうな顔で告げる。
「来週、カミラ姫がサクラに訪問することが決まった。カミラ姫の説明はいらないな? 領主から我々に依頼が来たが、条件が2つあってな。1つは「出来るだけ強い冒険者が欲しい。護衛失敗は絶対に許されない」もう1つは「出来るだけ少人数にしてほしい。大名行列は姫が望んでいない」とのことだ。この二つを満たすとなると…… 選択肢がお前らヘッズオブドラゴンしかないというわけだ」
ほう、かの有名なカミラ姫の護衛依頼か。流石にサクラにいてもカミラ姫の評判を耳にすることはある。直接会ったことはないが。
「わかっていると思うが、カミラ姫が何者かに攻撃されて死傷した場合、王国のメンツは丸潰れだ。そしてあれだけの評判がある姫だ。王家の威信が揺らぐことになりかねない。領主としても我々冒険者ギルドとしても最大限のおもてなしが必要と考えている」
「お前達が護衛していれば、それを突破できるような者はいないに違いない。もちろん報酬ははずむ。この依頼を受けてくれないか?」
「まず詳細を伺えますか? 期間などを確認したいです」
「期間は2週間、王都とサクラの中間地点の街、キエからサクラまでの護衛とサクラ内での警備、そしてサクラからキエまでの護衛だ。キエと王都の間は人通りも極めて多く治安も安定しているので先方の騎士だけで対応できる、と判断しているようだ。基本的には平地の移動になるため、突然魔物が現れる、ということはないだろう。遠目に発見した魔物を遠距離攻撃で打破することが基本的な行動でなるはずだ」
「ちなみにカミラ姫は性格はどうなんでしょう?面倒だったりしませんか?俺達はそれほど行儀がいいわけではないので、王族のお世話が出来るのか不明ですが」
エッジが手を挙げて発言する。
「俺も直接お話ししたことは数えるほどしかないが、領主からはよっぽど失礼なことでもない限り大丈夫だ、と言われている。民と触れ合う機会もそれなりにある姫なので面倒なタイプではないだろう」
「基本的には日中の馬車での移動でしょうか?」
アンが確認する。
「まず移動は馬車だ。魔物での移動の方が速度は速いが、安定感がないので乗り心地は悪いからな。王族が移動するのは基本的に馬車だ。お前達は同じ馬車に同情するか、後ろか前から監視する役割になるだろう。そしてどうやら夜も移動するようだ。日中の移動だけではサクラに2週間では着かないからな」
「報酬について確認していいですか?」
今度はアリエッサだ。
「ああ、報酬は基本言い値で対応できるはずだ。あとですり合わせさせてくれ」
面倒なやり取りはアリエッサに任せれば良さそうだな。
「で、どうだ。報酬さえ良ければ問題ないか?」
「はい、大丈夫です。カミラ姫とは一度お話ししてみたかったですし」
俺は回答する。建国依頼の天才と評されるカミラ姫。どんな者なんだろう。
「すまない、恩に着る。じゃあこの後報酬や詳細のスケジュールについてすり合わせよう。いつも通りアリエッサ殿だけでいいか?」
「ええ、それでお願いします」
2週間護衛となると、調整しなければならないことがある。チーム夢の羽のクエストだ。流石に2週間休むのは理由が必要だろう。怒られないといいが……
翌日俺はチーム夢の羽のクエスト後に2週間ほど休みをもらう旨を告げる。理由は親戚の不幸だ。
「親父から連絡きて一度帰ってこいと。親戚が亡くなったから挨拶をする必要があると言われたよ」
「ああ…… 家から連絡来たなら戻らないとな。どれくらいかかるんだ?」
「往復で2週間ってところだな。申し訳ないが、大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。家のことも大事にしないといけないからな」
「うん、こっちはのんびり過ごしておくよ。お土産よろしくね」
「大丈夫よ。気をつけてね」
チームの皆は快諾してくれた。優しいメンバーだ。
「すまない、助かる。帰ってきたらバリバリ働くよ」
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