情報収集と推理〜前編〜
森の中では流石に何匹か魔物が現れたがそれほど強い魔物ではなく、すぐに討伐される。今日もトラブルはないまま、警備は終わった。
終了後、ライネルの元に集合する。
「色々考えていたんだが…… まずは殺害された者達に隠れた共通点がある可能性を探りたい。関係者に聞き込みをしないか?」
確かに、隠れた共通点がある可能性はある。現状、身元がわかっているのは5名。俺らは分担して聞き込みをすることになった。
俺はマルクと一緒に、犠牲者の一人「クレイムダガー」のリョウのチームメートに声をかける。クレイムダガーのメンバーについてはギルドの受付嬢に教えてもらった。LV2で10名ほどのメンバーがいる、中堅チームだそうだ。
「すいません、ちょっといいですか。リョウさんについてお話を伺いたいのですが……」
俺はリーダーの元チームメンバーが殺されたことから独自に捜査をしていることを説明する。
「ああ、リョウが殺されたとわかって残念だったよ。いい奴だったんだが…… で、何を聞きたいんだ?」
色々と質問をしてみてが事件につながりそうな情報はほとんどなかった。曰く無口で単独行動が好きな人で、プライベートはチームメンバーでもよくわかってないらしい。行方不明になった当日も皆でクエストを完了させると、一人家に帰って行ったのを見届けたのが最後だということだ。
「ただ……最近少しテンションが高かったな。何かいいことがあったのか、具体的にはわからないが、普段よりよく喋っていた気がする。少しの差だったので突っ込んだりはしなかったが……」
「なるほど、何か良いことがあった可能性があるということですね、わかりました。ありがとうございます」
「ああ、そんなところかな。夢の羽だっけ?何か情報を手に入れたらお前らにも伝えるようにするよ」
「ありがとうございます!」
俺達はその場を離れ、集合場所の銀の雫へ向かった。
銀の雫で、夕食を食べながら手に入れた情報を共有する。と言っても、どのグループも大した成果は出せなかった。しかし「成果がない」という点で共通点は見えてきた。
「どうやら被害者は皆、あまりチームメンバーにもプライベートを公開しないタイプだったようだな。入手できた情報があまりにも少なすぎる」
「そうですね。男女問わず、「普段何しているかはよくわからない」というのは怪しすぎます。謎に包まれた日常生活の中で何かに巻き込まれた可能性はありますね」
「ただ……」
言いにくそうにするアズサ。
「どうしたんだ?」
「いえ、関係はないと思いますが、私が話した人はナタリー達チーム「イオン・リバティ」と知り合いだったようです。これでナタリー達の知り合いの犠牲者が二人目だなと思って」
「そうなのか、こっちも知り合いだったようだ。世間は狭いな……」
ライエルも呟く。まさかの6人中3人が知り合いだとは。ナタリー達は必ずこの事件を解決したいだろう。
「そうだね。とはいえ、どこで何をしていたかが謎すぎるのが問題だ。次の一手が難しい」
確かに……俺達はうーん、と皆考え込んでしまった。
「そうだ、とりあえず一日考えて、明後日の朝に各自推理を披露するというのはどうでしょう?各自自由に情報収集して考えれば、当てずっぽうでも7名もいれば何かいい推理が出てくるかもしれません」
メアリーが提案する。確かに情報収集できない以上考えるのがいいかもな。
「そうだな、それは良いかもしれない」
俺達は同意した。明後日の朝、また銀の雫で集合し推理を披露すると約束し解散した。
「アリエッサ、少し散歩をしないか? 考え事の整理に付き合ってほしい」俺は拠点に帰還し、アリエッサに声を掛ける。
「はいマスター。いいですよ」
俺は歩きながらアリエッサに事件の概要と、わかっていることを伝える。
「なるほど……。謎が多いですね。私がお話しできるのは一般論ですが、左手が並べられていたのには理由があるはずです。何かを隠したかったか、何かを示したかったか。そこの推理が必要ですね」
「そうだな。しかし普通に考えると何らかのメッセージにも思えるが」
「はい、そうですね。ただ、実はフェイクで裏に隠れた意味がある可能性もあります」
「なるほどなあ……」
そんなことをアリエッサと話しながら歩いていると少し中心地から外れた場所に来てしまった。怪しげな店が立ち並ぶ地域である。何気なく歩いていると、前方に知っている人物を発見した。
「アリエッサ。最近一緒に行動しているチームのメンバーがいる。変身をかけてくれないか。何をしているのか聞いてみる」
「はい、わかりました。変身!」
俺はLV3のカミトに戻ると、その人物「ヴェラ」の元に向かっていった。
「よお、ヴェラ。こんなところで何しているんだ?」
「……ああ、カミト。また会ったね……」
「こんなところで会うとは思わなかったよ。何か用でもあったのか?」
「そう。魔道具を購入していた……」
「こんなところで魔道具? 珍しい魔道具でもあったのか?」
「うん。滅多に見ない激レア魔道具。血を垂らすとゴーストを生み出す魔道具なんだ。しかも心臓から離れた部分の血ほど大きなゴーストを呼び出せる機能付き。」
「ゴーストを生み出す……? 何に使うんだ?」
「誰かを驚かすくらいかな……? 特に使い道はないよ……?」
「そうなのか…… 一応確認だが、犯罪ではないよな?」
「うん、ゴーストを生み出すだけだから他者に害は加えないよ。こういうのはなかなか市場に出回らないんだよね。大体持っているコレクターと直接交渉しないといけないから面倒なんだ」
「なるほど……。まああんまり無茶はしないようにな」
「うん。ありがとう。カミトはどうしたの?」
「俺は考え事を整理するために散歩してただけだ。じゃあまた明日な」
俺は会話を切り上げ、アリエッサの元に引き返す。
「ゴーストを生み出す魔道具を買いに来ていたらしい。マニアックすぎるよ」
「あくまで聞いた話ですが、アンデットを呼び出して暴れさせる魔道具もあるらしいですよ。所持しているだけで逮捕される可能性がありますが」
「誰向けの魔道具なんだ……。 とりあえず帰るか」
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