夢の羽初めてのクエスト 後編
俺は3人から少し離れた広場でオーガと対峙する。改めて見ると結構大きいな。最近はクエスト中も見かけることのない雑魚キャラ扱いをしていたが、LV3という立場で見返すと強敵に見える。この感覚は何年ぶりだろうか。
「よし、アップ・シールドだ」
自身の攻撃力と防護力を上げる。その勢いでオーガに斬りかかった。
ガキンッ。足を狙ったが鈍い音をする。オーガは少し怯むが、そのままパンチを見舞ってくる。俺はすぐさま後ろに下がり回避した。ぶんっ。風を切る音が聞こえる。
オーガの攻撃は当たれば強力だが隙が多く、かわす余地はある。しかし問題は防御力と体力である。体力が極めて多く、皮膚は非常に硬い。LV3冒険者でも一撃でダメージを与えるのは難易度が高いほどである。
「ヒット&アウェイしかないか……しかしそんな敵に出会ったのはいつぶりだろうか」俺は慎重に時間稼ぎをする選択肢を選びながら、久しぶりの「強敵」との出会いに興奮していた。あまりにも強力すぎる本来の俺の魔法は、発動した時点で勝敗の決着がつく場合がほとんどである。こうやってヒット&アウェイで地道に体力を削るという選択肢を取るのは久しぶりのことだった。
「3人が帰ってくるまで時間稼ぎだ。楽しく遊ぼうか」
その頃、ライエルはカミトの宣言に従い、3人でオーガを倒すべく動き始めていた。
「よし、3人でオーガを倒してカミトに合流するぞ! まずは遠距離攻撃だ! 喰らえ、サンダー!」
「ウインド!」
「アロー!」
オーガはこちらの3人を敵と認識したようだ。すごい勢いで突撃してくる。
「アズサ、ポイズンを頼む。マルク、俺が攻撃するから守備を頼む!」
そういうとライエルはオーガニ向かって駆け出していく。
「わかった、ポイズン!」
「はいよ、僕が守るからあまり無茶はしないでね!」
「おう、サラマンダ!」
ポイズンの効果で少しオーガの動きが遅くなる。また、じわじわと体力を削っていくため、長期戦にも有利になった。ここでライエルは剣に炎を宿し、オーガに切りつける。一回ではほぼダメージはない。ならば2回3回と攻撃だ。
「ガード!」
オーガのパンチはマルクが防いでくれる。ライエルは一心不乱に剣を振り続けた。
アズサは遠距離からアローで攻撃を行い、マルクは攻撃をしつつも防御も行う。そしてライエルはひたすら攻撃し続ける。初めての強敵を相手に、絶妙なチームワークを発揮する3人。
命をかけて戦うのは久しぶりだな。ライエルはそんなことを考えていた。前にいたチームでは安全にクリアできるクエストばかり。ひりつくような感覚を得る機会はほとんどなかった。これこそが冒険者だ、そう思いながら剣を振るう。
「ガガガガガ……」
30分にわたる激戦の末、オーガはついに倒れた。全員汗まみれだがここで休むことはできない。カミトと戦うもう1匹を倒さなければいけないのだ。
「よし、すぐにカミトの所に向かうぞ!この勢いでもう1匹も撃破だ!」
ライエル達はすぐにカミトが戦う場所に走っていく。
「おお、そっちは無事に倒したか! なら4人でこいつを片付けよう! すごい硬くて全然体力削れないんだよ」
「カミト、無事そうだな! わかった、任せろ! さっきと同じようにアズサは遠距離、マルクは防御メインで俺が攻撃だ!」
先ほどと異なるのは攻撃が二人に増えたこと。これによってオーガは多方面から攻撃を受けるようになり、ダメージが大きくなっている。ポイズン、アローという遠距離攻撃と共に近距離から多数の攻撃を受け、苦しそうだ。
……15分ほどでオーガを倒すことに成功した。LV3しかいないチームでオーガを2体同時に倒すのはなかなかの快挙である。俺達は汗も気にせず、ハイタッチをした。
「しかし、一人でオーガと向き合うのはしんどかったよ。いくら大ぶりのパンチとはいえ当たったら洒落にならないしなあ。そっちが早く来てくれて助かった」
俺は討伐証明部位を切り取りながらメンバーに感謝を伝える。ちなみにオーガの討伐証明部位は耳である。大きい耳が特徴だ。そして、オーガの肉は美味しいため高値で買い取ってもらえる。これも全部回収しないと、ということで4人で肉を切り取っていた。
「まあ3人だったしね。なかなか良いチームワークで戦闘ができたからスムーズに終わったよ。僕ら、初めてにしては良いチームだったよね。バランスよく戦闘できていたと思うんだ」
マルクの言う通り、遠距離攻撃、近距離攻撃、防御とバランスよく保有魔法があることもあり、上手く戦闘を進めていた。また、全員頭が良く、チームとして能力を最大化できる動きをしていたのも良かった点だろう。
「ね、私達ならもうちょっと強い魔物でも倒せちゃいそう」
「そうだな。ただ今日は疲れたし、残りの魔物を倒して帰還しよう。これ以上強い魔物と遭遇するのは勘弁したい」
ライエルの言う通り、今日はもう店じまいの気分だ。残りのオークとオーガをさっさと倒して帰還しよう。俺達は頷くと、肉を切り終え森の中に足を進めるのだった。
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