【Web版】ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす~規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした~

むらくも航@書籍&コミカライズ配信中

第二部 ホシ君の夏休み

第52話 地下三階の奥へ!

第1話~第51話は、出版社様の規定により非公開にしております。

ここからは発売中の第一巻・第二巻の続きとなりますので、ご注意ください。

これ以前のお話は、書籍、もしくはwebサイト「アルファポリス」様よりご覧いただけます。

何卒よろしくお願いします。

───────────────────────



<ホシ視点>


「ふい~」


 地下一階の草原で寝そべりながら、一息つく。

 でも、さっきから気になって仕方がない。

 俺はちらっと横に視線を移した。


《星にならないんですか?》


「な、なりません!!」


 現在は配信中。

 『雑談』とめいってゆるい配信をするつもりが、コメントの勢いがすさまじい。


《星になれ》

《俺はかっこいいと思ったよ!笑》

《僕も星になりたいです》

《星にさせてください》


「も、もうやめてくださいー!」


 玉依たまより家との対決から、約一週間。

 対決後、念願の京都旅行も終えて、俺はようやく家に帰ってきていた。


 だけど、イベントの反響が予想の何十倍も大きかった。

 その中でも、『星になれ』という言葉はネットミーム化(流行)しているらしい。


 べ、別にかっこいいと思って言ったわけじゃないもん!


《彦根家のみんなもいますか?》


「いますよ。ほらあそこー」


 俺はカメラの向きを変えた。

 すると奥の方から、三匹が跳び跳ねるように走ってくる。


「キュイ!」

「クゥン!」

「ボォッ!」


 めろん、わたあめ、いちごだ。

 それはもう嬉しそうな顔をしながら、猛スピードで突っ込んで来る。


「ははっ! 元気だったか~!」

「キュ!」「ワフ!」「ボォッ!」


《ペット達だあ!》

《かわいいー!!》

《きゃわあああ!》

《勢いえっぐw》

《ドゴオって突っ込んできたけどww》

《ホシ君にはノーダメージ》

《もっふもふ!》

《癒しだ……》


 食料などは、ダンジョン内で全てそろうので問題ない。

 でも、一週間ぶりともあって余計に強く抱き着いてきた。

 さすがに寂しかったみたいだ。


 代表して、わあためが話をしてくれる。


「え、イベントを見ててくれたの?」

「ワフ~ン!」

「そっかそっか、嬉しいなあ!」

「いや、おかしいでしょ。冷静に」


 三匹は仲良く、スマートテレビで配信を見てたみたい。

 俺はご機嫌で三匹を抱きかかえる。

 サラっとツッコミを入れていったのは、ブルーハワイだ。


《本当だよ、なんで見てんだよw》

《頭良すぎて草》

《かわいいけどw》

《テレビ操作するの妄想したらシュールすぎ》

《ブルーハワイちゃん笑》


 また後方では、姉さんがパンパンと手を叩いていた。


「お茶」

「はいぃ!」


 すると、すぐに流転君がお茶を持ってくる。

 完全にこき使われてるな。

 もう一回ちゃんと言っておかないと。


 でも、そんな周りを見渡して改めて思う。

 日常が返ってきたんだなって。


《そういえば、地下三階はどうなったんですか?》


「あ、あーそうですね……」


 コメントには少し詰まるも、今の心情を素直に伝えた。


「地下三階はトラブルメーカーですからね」


《まあなw》

《渋るのは分かるw》

《イナリちゃんもなあ笑》


 何かと騒がしいので、今日は一旦置いておきたい。

 ──と、させてくれるはずもなく。


「ホシー!!」

「……あ、この声」


《やばい!》

《言ったそばからかよw》

《トラブルだ!》


 視聴者も気づいたのだろう。

 息を切らしながら走ってきたのは、イナリさんだ。


「ホシ、聞いてくれぬかー!」

「さっき神社に帰ったんじゃないんですか?」

「そうじゃが、大変なんじゃ!」

「え?」


 いつものイナリさんじゃない。

 緊迫した様子に、俺は体を起こして聞く。


「地下三階に、しょうが発生しておる!」

「え、それって!」

「ああ、おそらくが目覚めたのじゃ」

「……っ」


 その言葉に、俺も思わず息を呑む。


《なんだなんだ?》

《本当の事態か?》

《イナリさんが焦ってる》

《奴って誰だ……?》

《まさか新しい住人か?》


「仕方ない。様子を見に行ってみるか」


 俺は立ち上がり、すぐに準備を始めた。


「ヤマタノオロチさんの元へ」


 「様子を見に行ってみるか。ヤマタノオロチさんの元へ」


 地下三階にしょうが発生した。

 イナリさんの報告を聞き、俺はすくっと立ち上がる。


 もー、次から次へと。

 やっぱり地下三階はトラブルメーカーだ。

 なんて思っていると、コメント欄がざわついている。


《ヤマタノオロチさん!?》

《それって、あの!?》

《さらっとすごい事言ってない?w》

《神話で草》

《地下三階って日本神話の舞台ですか?w》

《八つの頭がある蛇だよね?》


「まー、そうですね。大体イメージ通りだと思います」


 俺は質問に答えながら、地下三階へと向かう。

 ペット達、イナリさん、あとにも呼びかけて。


流転るてん君も行こうよ!」

「はい!? ぼ、僕ですか!?」

「せっかくうちに来たんだもん。一緒に探検しよ!」

「……っ」


 玉依家との対決で、友達になった流転君だ。

 だけど、流転君はちらりと姉さんを振り返る。


「でも、僕はエリカさんのおきゅうが──」

「あら。ホシ君が優先に決まってるでしょ?」

「……!」

「ふふふっ。行ってらっしゃい」

「………………ハイ」


 姉さんのに、流転君はやがて小さく頷いた。

 そんなに姉さんのお手伝いをしたかったのかな。

 流転君は良い人だなあ。


 とにかく、一緒に来てくれるらしい。

 

「流転君がいたら心強いよ!」

「は、はははっ……オワタ」


 最後の方は聞こえなかったけど、流転君も笑ってくれる。

 そうこうしながら、僕たちはいざ地下三階へ。

 扉を開けた途端、イナリさんの言う通りの景色が広がっていた。


「あー、これは瘴気ですね」

「うむ。間違いなかろう」


 綺麗な緑の景色は残っている。

 木々や川もまだ汚染されていない。

 でも、所々に“紫色のきり”がかかって見えた。


《その霧が瘴気なのか……》

《入口付近にまで来てるとは》

《大丈夫なのか?》


 続々と心配のコメントが上がるので、推測を共有する。


「この濃さなら、妖狐神社までは大丈夫そうですね。その先は、ちょっと見ないと分かりませんけど」

「とりあえず、わらわは神社へ戻るぞ!」

「そうしましょう。じゃあ──はい」

「うむ」


 妖狐たちの親分として、いつになく必死なイナリさん。

 その真剣な面持ちのまま、九つの尻尾で俺たちをムギュッと掴む。

 もふい感触に包まれたかと思うと、みんなの体が浮いた。


「ゆくぞー!」

「うーん、快適」

 

 イナリコプターで飛び始めたんだ。


《出たあ!w》

《これ便利過ぎだろww》

《対決の時から乱用してて草》


 イナリさんのシンボルとなりつつある技だ。

 快適な空の旅に揺れていると、すぐに神社が見えてくる。

 地上に降り立ち、イナリさんは駆け出した。


「大丈夫か、お前達ー!」

「「「こーん……」」」


 子分の妖狐達が心配だったみたいだ。

 それと、行動の自省もする。


「すまなかった、勝手に神社を飛び出して!」

「「「こんこん!」」」


 対して、妖狐達は「そんなことないよ」と首を横に振る。

 健気な姿に、イナリさんは感動を言葉にした。


「おお、こんなわらわを許してくれるのか! 玉依家でたらふく美味しい物を食べ、イベントで大注目を浴び、最後は一週間の京都旅行をとことん楽しんできた、こんなわらわを!」

「「「…………」」」


《改めて聞いたらひどくて草》

《終わってるだろw》

《こんな親分嫌だwww》

《らしいっちゃ、らしいけど……笑》


 イナリさんを追い、俺たちも妖狐達の様子を見る。

 ケガ無し、症状無し、抱き心地は──素晴らしい。


「良かった。妖狐達の実害は無さそうですね」

「こやつらも小さいながら魔核を持つからの。多少の抵抗力はあるんじゃ」

「でも、これ以上瘴気が充満すると危なそうです」

「その通りじゃな……」


 心配そうな顔のイナリさんを横目に、俺は妖狐をむぎゅりと抱きしめる。

 

「じゃあイナリさんはここで待っててください」

「なっ、ホシ……!?」

「イナリさんは、ひどいし自己中だし終わってますけど、なんだかんだ親分です」

「お主も中々ひどくない?」


 なんか言ってきたけど、俺は構わず伝えた。


「この子たちの面倒を見れるのはイナリさんだけです。その間、俺たちが解決しますから」

「……! す、すまぬ!」

「いえ、妖狐たち心配ですから」

「妖狐たち?」


《本音出てるってw》

《イナリさんは心配されてないww》

《辛辣なホシ君……笑》

《この関係好きだわw》


 所々首を傾げるも、イナリさんは地面に付くほど頭を下げた。


「あ、ありがとう……! 恩に着る!」

「いえ。今のところ貸し100ぐらいありますけどね」


 そうして、俺たちは神社を後にする。


「行こう。流転君、みんな」

「は、はいぃ……!」

「キュ!」「ワフ!」「ボォッ!」


 流転君を含め、気合いの入った表情だ。

 俺が先導する形で、そのままヤマタノオロチさんの元へ向かう。

 目指すのは、神社からさらに奥側だ。


 すると、段々と景色が変わってくる。


「瘴気が濃くなってきたなあ」


 紫色の霧が、目に見えて増えてきた。

 このまま進めば身体に被害が及ぶかも。


《ていうか、瘴気ってなんなんだ?》


「姉さんいわく、大別たいべつすると魔素らしいです」

「え、魔素なんですか?」


 質問コメントに答えると、流転君が喰いついた。

 キリっと勇ましい視線で、一歩前に出る。


「だったら、ここは僕にやらせてください。魔素の操作は得意です!」

「あ、でも──」

「うおおおおおお!」


 濃い霧をなんとかしようと、流転君が腕を激しく動かす。

 俺の話を聞かないほど必死になってくれる。

 だけど──。


「あ、あれ……!?」


 少し風が吹いたように動いたものの、霧を晴らすことは出来ない。

 こねくり回すも、流転君の顔は苦しそうだ。


「なんていうか、重い・・……!」

「やっぱかー」


 瘴気の正体は、魔素は魔素だけど、少し“特殊”らしい。

 ヤマタノオロチさんの成分・・が混じっているとかで、より濃密だそうだ。

 俺やペットも魔核持ちとはいえ、吸い過ぎは体に良くない。


「くっ。ハァ、ハァ……僕には、難しそうです……」


 やがて流転君は膝に手をつき、操作を中断してしまった。


《流転が操作できない……?》

《あの流転が?》

《あの天下無敵の?》

《ホシ君以外には絶対負けない?》

《まじかよ、どうすんだ》


 コメント欄にも不安が広がる。

 ならば、ここは家主の俺がやるべきだ。


「流転君ありがとう。下がってて」

「ホシさん……!?」

「どうやら秘策を見せる時が来たみたいだ」


 こうなることを見越し、シミュレーションはしてきた。

 尊敬の眼差しを向ける流転君を横目に、俺は大きく息を吸う。


「すぅぅぅぅぅ……」

「ん?」


 それを思いっきり吐いた。


「ふぅぅぅぅぅぅぅ!」

「えええ!?」


 魔核に入れるイメージで息を吸い込み、一気に吐き出した。

 すると、なんということでしょう。


「キュイ~!」

「ワフ~!」

「ボォ~!」


 視界一面が晴れ上がり、道が開けた。

 瘴気が上の方に流されていったんだ。

 

「よし!」

「いや、よしじゃないですよ!?」


《どこが秘策なんだよw》

《ただの深呼吸じゃねえかww》

《力技で草》

《ホシ君に策とか考えられるわけねえだろ……》

《誕生日ケーキのローソクみたい笑》

《誰かのお誕生日会行った?》

《やっぱホシ君に脅威とかねえわ》


 なに、友達のお誕生日会から着想を得たのがバレてる。

 まあいいか、とにかく霧は晴れた。

 それでも微量は残っているため、いちごに声をかける。

 

「いちご。お願い」

「ボボォッ!」


 バサっと翼を広げると、俺たちを炎で囲ってくれた。

 攻撃用の炎じゃないので熱さは無く、代わりに恩恵をもたらす。

 それが“浄化能力”だ。


 フェニックスらしい能力で、少しの瘴気ならへっちゃらだ。


「それじゃ進むぞー」

「キュイ!」「ワフッ!」「ボォッ!」

「……やっぱり僕は帰ろうかな」


 しょんぼりしてる流転君も連れて、俺たちは再び歩き始めた。

 先は長く、平坦な道が続く。

 俺は時々息で瘴気を払いながら、雑談を交えて進んで行く。


「う~ん、わたあめはもふいっ!」

「ワフッ!」


《もふもふいいなあ》

《久しぶりにペット長く見れて嬉しい》

《対決も良かったけどね》

《この家族、相変わらず警戒心ねえな……》

《脅威に向かってるとは思えんww》


 そんな中で、やはりヤマタノオロチさんへの質問は絶えない。


《今までの瘴気とかは大丈夫だったのか?》

《目覚めたとか言ってたけど》


「実は、俺たちだけで行くのは今回が初めてなんです。前回までは、おじいちゃんも一緒だったので」


《出たおじいちゃん!》

《やっぱりヤマタノオロチが目覚めたから?》


「はい、目覚めの直前から瘴気を生むらしいです」


《すげえ災害だな》

《さすがヤマタノオロチ》

《でも目覚める度にって大変だな》


「その時は大変ですけど、目覚めるのって四年に一度ですからね。うちでは恒例行事みたいになってます」


《四年に一度ってw》

《オリンピックかよww》

《恒例行事にされてて草》

《なんかすでに格が落ちてきたような……》

《↑なわけねえだろ、ヤマタノオロチは怖いに決まってるわ!!》


 そうして、歩くことしばらく。

 俺は前を向いて、目線を上げた。


「そろそろ見えてきます」


 俺を中心に映すカメラも、前方を向く。

 視聴者にも光景が伝わっているだろう。


「ヤマタノオロチさんの住処すみか『アマガフチ』ですね」


《でっけえ!?》

《なんじゃこりゃあ!!》

《またとんでもないのが出てきたあ!》

《さすが地下三階w》

《山と川……!?》


 地下三階にも流れる、いくつもの『魔素水の川』。

 それらの上流は、全てこの山に繋がっている。

 青紫にきらめく川が合流し、大きな山の付近には湖が出来ていた。


 そして、連なる山の一か所から、ぬっと大きなものが見えた。

 俺たちの存在に気づいたんだろう。

 周りのみんなはビクっと声を上げる。


「ワフッ!?」

「キュイッ!?」

「ボォッ!?」

「うわあっ!?」


 巨大な蛇のにびっくりしたみたいだ。

 江戸時代の女性のような髪型に、派手な髪飾りをしている。

 すると、辺りの空間そのものに響くような声が聞こえた。


「今回は孫が来たのねぇ。シュフフフっ」

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