58話 久々のやらかし


(ルスクディーテ―――――っ!?)


ヒノワを起こさない様に叫ぶのを堪えながらも頭を抱える、昨日は確かに酔ってはいたが自分の悪癖が出ない程度には抑えてようとしていた。


自分の迂闊さに頭を掻き毟る、幾らなんでも救援先の姫に手を出すのは色々とアウトだ。


「アリア達にどう説明すれば……」


「ベルク、起きて……」


悩んでいたところで戸が開けられてアリアが顔を見せる、互いに時が止まった様に沈黙していたがアリアがため息をついた。


「……流石にひっぱたいた方が良いのかしら」


アリアの言葉がやけに胸に刺さった……。









―――――


ひっぱたかれる覚悟をしていたが起きたヒノワが俺を責めなかった事とルスクディーテがあっさり自供した事でアリアは振り上げた手を下ろした。


「まあ私も迂闊だったわ、ルスクディーテならこういう時は交ざろうとすると思ってたから」


「ははは、思いつきであったが殊の外上手くいったのう」


「思いつきで一服盛るな! ヒノワの立場からしたら迫られたら断れる訳ないだろうが!」


ヒノワの立場と性格を考えれば俺から迫られたら断れないだろう。それでなくとも俺は無茶を通せる力と立場にあるのだから自分から求めるのはアリア達だけと決めているのだ。


「何を言うておる、我は雌雄が求め姿を好むというのを忘れたか?」


ルスクディーテは悪びれもなくヒノワを指し示しながら続けた。


「その娘のベルクを見る眼には女の色があったぞ? だがアリア達に遠慮して踏み出せん様だったから後押ししてやっただけじゃ」


ルスクディーテの指摘とその場の視線が集まった事でヒノワは耳まで赤くして俯いてしまった。


「……私は迎え入れるのは良いけどこの国の跡継ぎとかそういう問題はあるわよね」


「そうだな……」


「ひとまずは黄泉の門をなんとかしてから考えましょう、貴方もそれで良いかしら?」


「はい……」


先延ばしでしかないがそれしかないだろう、アリアの提案に頷くとルスクディーテが微笑みながら口を開いた。


「良し、ではヒノワを交えて五人で……」


「「自重しろ!」」


俺とアリアの声が重なる、この空気の中で我を貫けるルスクディーテにため息が出かけた。


セレナ達にも事の顛末を話すとセレナは仕方ない人ですねと苦笑いながらも受け入れ、シュリンはどうでも良いといった感じに受け入れた。


……その夜、何故かセツラも抱く事になった。ルスクディーテに唆されたらしい。


けじめとして俺の頬に紅葉がつく事になり、ルスクディーテは拳骨を落とされた。

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