22話 殲滅(オヅマ軍side)


(オヅマ軍side)


なんでこんな事になった!?


今回の戦での俺達の仕事はゴモンを攻める為の先遣部隊……要は露払いだ。


国境にある砦と周辺の村を占領して連絡さえしちまえば俺達の仕事は終わりで本隊が来るまでお楽しみの時間だ。


黄泉兵とやらは気味悪いが俺達より遥かに打たれ強いし怯まねえ、見せしめの虐殺だって平気でやるし飯も食わねえから面倒で危険な役回りはコイツらにやらせて俺達はその後の略奪をするだけで良かったんだ。


村を占領したらまずはどうやって楽しむか、そういう事に理解のある指揮官と話してたら前方でゴモンの兵が千人規模で布陣してやがった。


事前に手に入れた情報じゃゴモンの兵力はかき集めても俺達と同じ程度、先遣部隊の俺達より少し多いくらいで特筆すべきところもねえ。


黄泉兵が多少は使えなくなるだろうがこのまま進軍して蹴散らしちまえば良い、指揮官もそう判断した直後だった。


すぐ傍を何かが横切った気がした、ふと見たら指揮官は突然黙って口から一筋の血を流すと体がズレていってふたつに分かれて落馬した。


「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!?」


何が起きたか分からなかった、腰を抜かして後退りながら見回したら指揮官の前後にいた奴も同じ様な目に合ってた。


その直後に俺達を囲う様に土壁が現れてとんでもねえ威力の焔が落とされた、部隊の中心に落とされた焔は燃え広がって黄泉兵を燃やしていった。


「に、逃げろ!撤退しろ!」


土壁のせいで焔は俺達を追い立てる様に燃え広がる、だが俺達は後方にいたお陰で来た道を戻る様に走る。


動ける全員が我先に逃げると先頭を走ってた奴らが土を巻き上げながら転んだ、それに続く様に他の奴らも足を取られた様になり足下を見て愕然とした。


「なんでこんなにぬかるんでんだよ!?」


俺達が通った時にはなかった泥沼がそこにはあった、これに足を取られたせいで逃げる足が止まってしまった。


(ありえねえありえねえありえねえ!?こんな規模の術を立て続けに使うなんて人間技じゃねえ!!?)


ゴモンの当主は優れた術師だとは聞いてた、だがそれでもこれだけの事を一人でやるなんてそれこそ化物の所業だ。


「くそ、お前ら回りこめ!泥沼を迂回して逃げるぞ!」


「わ、わかっ……ひっ!?」


隣にいた奴が短く悲鳴を上げる、そっちの方に視線をやると森からゴモンの兵が鬨の声を上げて出てきた。


「ふ、伏兵だと……?」


左右から迫るゴモンの兵を見て呆然と呟く、四方を塞がれる形となった絶望的な状況で俺は助かる道はないか必死に頭を巡らせた。


背後から蹄の音が迫る、燃える黄泉兵を蹴散らしながらそいつは俺達にとんでもない速さで迫っていた。


馬も、鎧も、全てが漆黒に染まったそいつは周囲の命を刈り取りながら向かってくる、まるで死が形になった様なそれを見た瞬間に自分は死ぬんだと否応なしに理解しちまった。


「聞いてねえ……ゴモンにこんな化物がいるなんて」


目の前にそれが来た瞬間、首を刎ねられて俺の視界はめまぐるしく回って暗くなった……。

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