新潟

 朝風呂浴びてから朝食や。温泉粥とは嬉しいな。しょっぱい温泉やから塩加減も不要やろ。朝からイカのお造りがあって、こっちの鮭の味噌漬けは嬉しいな。このおぼろ豆腐は自家製なんか。


「ヨーグルトも自家製だって」


 朝から茶碗蒸しも不意打ちみたいで嬉しいやんか。定番の温泉卵に、山菜も使ったサラダもあるで。


「それよりご飯がたまらない。新潟のコシヒカリだよね」


 魚沼産やないけどお漬物があればなんぼでも食べれそうや。これが最高の御馳走かもしれん。朝飯食うたら出発や。走るんは国道二八九号や。三条と燕市内を抜けたらあったあった大鳥居や。これを潜って行ったらあるんが弥彦神社。越後の国一之宮や、


「境内も広いねぇ」


 天照大神の曾孫の天香山命が神武天皇の命を受けて越後に開拓に来た時に祀られたっていう由緒ある神社や。建物は明治の大火で再建やけど、


「伊勢神宮なんて二十年毎に建て替えるじゃない」


 寺に較べると神社はその辺のこだわりが少ない気がするな。


「そうね。古いより新しい方を貴ぶところがあるよね」


 この神社も古社らしくて二礼四拍一礼やそうなんや。


「あら出雲大社と同じなんだ」


 なんでそうなんかはわからんそうや。それと御神体は背後に聳える弥彦山や、


「三輪神社スタイルだから古いね」


 そやけど三輪神社と違うて登れるんよ。


「ワインディングを満喫するのね」


 残念ながら二輪車通行禁止や。


「首相のクビを飛ばしてやる」


 県道やぞ、


「じゃあ新潟県知事だ」


 ユッキーが言うとシャレにならんから、ここだけにしときや。バイクじゃ上がれんからロープーウェイで上がるで。こんなんも楽しいやん。今日はお手軽にパノラマタワーや。


「ここから高志の国を見渡したって言うのは納得ね」


 ロープーウェイを下りてから南に走ると大河津分水路や。


「信濃川よね」


 大雑把にはな。信濃川治水の集大成みたいなもんや。これを海に向かって走ると国道四〇二号にぶち当たるんやが、ここが新潟県屈指とされるシーサイドコースの越後七浦シーサイドコースになるねん。


 新潟県は砂浜ドカンみたいな海岸線が多いし、それはそれで気持ちがエエ道やねんけど、越後七浦は山が海に迫るところを貫いて走ってるとなっとるねん。いわゆる奇岩が目を楽しませる系のコースとなっとった。


「アップダウンは結構あるね」


 それなりのワインディングもな。これぐらいはあった方が楽しいけんど、その分は気を遣うから、景色に見とれとったっら事故るから注意やな。


「あの構造はもしかして」


 そうらしいわ。観光道路として作られて有料やったそうや。ここが角田浜か。


「なにか意味あるの」


 ああ、ここが有料道路時代の終点やったそうや。


「向こうに見えるのが佐渡おけさね」


 おけさはいらん佐渡や。なるほど、角田浜を過ぎたら砂浜のビーチが延々と続くんか。こっちはこっちでエエと思うんやが、新潟県人にとっては見慣れ過ぎた道ってことやろな。


「それにしてもの砂浜続きね」


 新潟砂丘っていうらしくて長さが七十キロもあるそうや。


「こっちは観光資源にならないの」


 あんまりみたいや。長さこそ壮大やが、鳥取砂丘みたい幅と立体感が足らんからかもしれんな。ほいでもツーリングには気持ちのエエ道や。もう新潟市内に入っとるんやが、


「腹減った」


 お前は走る腹時計か、


「お土産買わなきゃ」


 それもそうや。この辺で適当に曲がったらエエはずやねんけど、おっ、道路案内に西大通りって出てるやん。あれ曲がってこましたろ。


「らじゃ」


 どっかで左に曲がるんやが、この信号は西大通りは直進になっとるから、次の信号ぐらいのはずやが、なんも案内あらへんやんか。なんちゅう不親切やねん。ほいでも直進は明らかに道が狭いから曲がったろ。


 どうも合うてるみたいや。そやけどもう一回右に曲がらんとあかんねん。とにかく割川の手前のはずやからこの信号やろ。これ曲がるで。これも正解みたいや。さすがは新潟や。道もややこしいわ。


「コトリ、またいつものように迷ってるの」


 うるさいわい。黙っとれ、あそこに見える高架道路は新潟東西道路やからこれを潜って、次の高架道路は北陸道のはずや。これを潜ったら、あった、あった、あの駐車場に入るで。


「ここって道の駅だよね」


 県庁所在地にもあるんやな。そやけどお土産買うには、


「これは充実してるじゃない。」


 ほんまやな村上の鮭の酒びたしもあるし、焼漬けや干物も美味しそうや。そっかそっか、鮭茶漬けの加島屋も新潟やったんか。いくらの醤油漬けも買うとこ。


「亀田も新潟だったよね」


 こりゃおもろいわ。贈答用なんてのもあるんや。サラダホープは新潟県民のソウルフードらしいからゲットや。昼はラーメンや。


「新潟でラーメンなの?」


 なに言うてるんや。県民に対するラーメン屋さんの割合が全国トップクラスやし、ラーメンの外食費用もトップクラスやねんぞ。


「いつ知ったの?」


 さっきやけど。ここのラーメン屋は人気チェーン店らしいで。


「特徴は」


 燕三条系の特徴は背脂やそうや。スープは豚、鶏にイリコを加えたもんに醤油ダレが基本で、そこに豚の背脂がたっぷり浮かんどるそうや。たぶん背脂がしつこいから太麺が基本らしゅうて、長ネギとか玉ねぎが薬味で入るんやて、


「ここのは岩ノリも乗ってるね」


 見た目からコテコテやけど、思いの外にアッサリしとるな。


「燕三条系以外は」


 長岡生姜醤油、新潟濃厚味噌、新潟あっさり醤油、三条カレーで新潟五大ラーメン言うんやて。


「それもお土産にしようよ」


 そやな、なんかセットで売っとったな。飯も食ったし、


「フェリーは」


 十五時半着の十六時半発や。ぼちぼち行ったらエエぐらいやろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る