第39話 アカネとのデートをします
そしてアーシャとのデートを終えた次の日、今度はアカネとのデートとなった。
二人で並んで街を歩きながら、俺は彼女に尋ねる。
「で、アカネはどこに行きたいんだ?」
「色々と考えたんですけど、やっぱり私はダンジョンに行きたいですね!」
なるほど、アカネらしいと言えばアカネらしい。
しかしダンジョンとはあまりデートらしくないところを選んだな。
「おっけー。でもこの辺にダンジョンあるのかな?」
「一応昨日街の人に聞いておきました!」
「ほお……で、ダンジョンはあったのか?」
「はい! 《遺跡迷宮》というのがあるらしいです!」
聞いたことのない迷宮名だが、おそらくご当地の小さなダンジョンなのだろう。
だが《遺跡迷宮》というからには何かお宝が眠っていそうな予感がする。
と言ってもデートは一日だけなので、深くまでは潜れないだろうが。
「早く行きましょう、アリゼさん! 昨日から楽しみでウズウズしていたんです!」
それはダンジョンに潜るからなのか、俺とデートをするからなのか。
まあどちらもありそうだなと思いながら、俺は彼女について《遺跡迷宮》に向かうのだった。
***
《遺跡迷宮》はその名の通り、古びた遺跡の形をしていた。
石畳の階段を降り、ダンジョン内部へと入っていく。
「ここの魔物、強ければいいんですけどねー!」
「いや、そんな強い魔物は多分出てこないだろ。地方の小さなダンジョンなんだし」
「えー、だとしたら少し悲しいです! 私も命を懸けた戦いがしたいです!」
命を懸けた戦いがそんなにいいものだとは思えないが。
しかし彼女はどこかワクワクした感じだった。
――のだが、ダンジョンに入り進んでいくごとに彼女の顔色が悪くなっていく。
「……なんか不気味じゃないですか、このダンジョン」
「まあアンデッド系が出てきそうな感じがするな」
そう言えばアカネはアンデッドみたいなホラー系が苦手だったな。
ガタガタと震え俺に引っ付いてくる彼女に思わず苦笑いを零す。
「私、アンデッド系はダメなんですよぉ……。どうしましょう」
「それだったら帰るか? 今ならまだ戻れるぞ?」
「……いえ、行きます。この辺りにはこのダンジョンしかないらしいので」
苦手よりも戦うことを選んだらしい彼女。
そんなとき、グゥウウと低いうなり声が響いてきた。
「わぁあああああ! アリゼさぁああああん!」
アカネはそれを聞いて泣きそうになりながらより俺に引っ付いてくる。
俺は思わず頭を撫でながら言った。
「大丈夫、大丈夫だから」
「うぅ……やっぱり怖いです……」
でも帰る気はないのか、剣を引き抜くとこう続けた。
「くそぅ……こうなったら全員ぶっ倒してやればいいんです!」
あ、ヤバい。
変なスイッチが入ってしまったみたいだ。
ふふふっとほの暗い笑みを浮かべて、アカネは恐る恐る声のしたほうに向かっていく。
俺も警戒しながらそんな彼女についていった。
「あっ! 見つけました! もう見えてしまえば怖くありません!」
そして彼女は全力で剣を振るった。
ドゴンッと強烈な衝撃波とともに三匹のゾンビたちは吹き飛ばされていく。
「ふふふっ、成敗です! やっぱり見えてしまえば怖く――」
「グゥウウウウウウ!」
ドヤ顔でそう言おうとしたアカネに、横から突然ゾンビが襲い掛かった。
「ぎゃぁああああああああああああ!」
そのゾンビの攻撃を華麗に避けながらアカネは大声で絶叫した。
そして隣にいた俺に思いきり抱き着いてくる。
「やっぱり無理ですぅううう! 何でこんなダンジョンしかないんですか!」
「仕方がないだろ、それは。やっぱり帰ったほうが……」
「……いえ! そもそも怖いわけないんです! 相手はただの魔物なので!」
いやいや、メチャクチャビビってるじゃないか。
そして襲い掛かってきたゾンビをズタズタにすると、アカネはさらに先に進む。
俺はやれやれと困ったように頭を掻きながら彼女についていくのだった。
「ぎゃぁあああああああああ!」
「うわぁあああああああああ!」
何度も絶叫をしながらも彼女は先に進んでいく。
……凄い精神力だ。
そしてとうとうダンジョンのボス部屋まで辿り着いた。
「やっとここまで来れました……」
「長かったな……。マジで長かった……」
もうすでに二人とも疲労困憊だ。
しかしここまで来たら戻るほうが面倒だ。
俺たちは意を決してボス部屋の扉を開くと、中に入り込んだ。
そこにいたのはアンデッド系の上位種、マスターリッチだった。
そいつは俺たちに気が付くと、無数のゾンビたちを召喚する。
「ぐっ……これはマズいかもしれません。でも、見えてしまえば多少はマシです!」
そしてアカネと俺は剣を取り出して構えると、ボス戦が始まるのだった。
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