第26話 現地調査②
「いや……、しかし現実問題、どうやって探せば良いんだ?」
禁足地を見上げる。少しだけ高台になっているために、入るには崖みたいになっているところを登らなくてはならない。
尤も、それを把握していなかった訳ではない。予め合宿所でジャージに着替えているからだ。明日は体育の授業はなかったし、汚れたら明日適当なタイミングで洗濯に出しておけば良い。
「探すのは簡単でしょう? 目の前に目的地があるのだから」
「……言いたいことは分かるし、言うことだけなら簡単なんだけれどなぁ」
和紗はあっけらかんと言い放つけれど、それを誰が実行するのか分かっているのか?
自分がやります、って言うんだったら別に否定もしないし止めもしないのだけれどさ。
「いやいや……、こんな山の中に入れと? それはちょっとどうなのかな、って」
「じゃあ誰が入れるんだよ。入れるのは、その理屈でいけばぼくだけになるだろうが」
元々入りたくなかっただけじゃないだろうな?
それに適当な言い訳を追加しただけ――つまり、後付けで、言い訳しているだけではないか。
だとすれば、断固として拒否すべきであるし、ここはきちんと男女平等を訴えていきたいところではあったが……。
「――まあまあ、ここで喧嘩しても何も始まらないですよ?」
言ったのは真凜だ。
依頼人は何処か落ち着いている……。有難いことではあるけれどね。
「でも、どうすりゃ良いんだ?」
「何も解決しないでしょう、このまま何もしないままでいったって……。ずっと真夜中である訳はないのだし」
今の気分的には、ずっと真夜中であって欲しいけれどな。物事が解決しない以上は、せめて一歩踏み出せるまでは放置しておいてほしいものだけれど……。
「とにかく、一つでも手がかりを探し出さないと……。わざわざ合宿所を借りてまでやって来ている意味がなくなってしまう」
分かっているんだかいないんだか、アリス達は中へ入ろうとしない。
「……なあ、アリス。いつまでこれを続けるつもりなんだ?」
いつまで、と言ってもこれに遭遇したのは二回目なのだけれどね。
さりとて、超能力者を探し続けるのは、はっきり言って現実的ではない——それをきちんと理解してくれないと困る。
誰が? ぼくだけではない、こうやって依頼をしに来る人間も、だ。
全員が全員、超常現象を超能力者の仕業であると認識してはいないだろうが、しかしながら、超能力者が居ると誤認させてしまうのも大きな間違いだ。はっきり言って、否定しておかねばならない。否定しなければ、永遠にアリスは——こいつは超能力者を追い続ける。
それは、どうなんだ?
しかし、同時に——何故ここまでしなければならないのか、という思いすら出てくる。
会ったばかり、とは言わなくても。
「……別に良いでしょう。そんなに厭なら、付き纏わなければ良いだけの話。それとも、物好きなの?」
物好き——か。
そうなのかもしれないな。
案外、こういうことが好きなのかも。
……おっと、本題からどんどん外れていく。流石にそろそろ軌道修正しないと、永遠に物語が終わらない気がする……。
しかし……禁足地とは言うけれど、どうしてここが禁足地と呼ばれているのだろうか?
あまりにも謎が残る。
謎を解決しておきたいけれど、あまりにも手がかりが足りない。
例えるなら、ここから謎を解決するにはシャーロック・ホームズを召喚しないと終わらないだろうと思ってしまうぐらいだ——言いすぎかな?
禁足地。
出来れば、足を踏み入れたくない。
だって、足を禁ずる場所だぞ? 絶対に入っちゃ駄目なオーラがプンプンしている。
こんな場所に足を踏み入れようなど、考える人間も居やしないだろう。
けれども、裏を返せば、そういう噂を流さないといけないぐらい——立ち入りを禁じなければならない場所だった、とすれば?
ぼくは、どちらかというと、そちらに賭けている。
というか、そうであってほしい。
こればっかりは、オカルトを信じるしかあるまいが。
◇◇◇
禁足地に足を踏み入れる。
森のようになっている場所だったが……、そう簡単に解明できるはずもなく、少しだけ探索することになった。
因みに、アリスとかは居ない。居るのは、和紗だけだ。
「……依頼人も結局来てくれないしさ」
「まあまあ、致し方ないところもあるだろうよ。だって、こんな鬱蒼と生い茂った森に、自ら入ろうとするか? わたしが一緒に行くだけでも有難いと思ってほしいものだけれど」
「……せめて、それを言わないでくれれば未だ感謝はするんだけれどなあ」
和紗は優しいのだろうけれど、たまに言い方にとげがある気がする。
「禁足地には何があると思う?」
「禁足地というその言葉自体がオカルトな感じはするけれど……、でも、分からないな。何かを封印しているとか?」
超能力者よりも気になる要素ではあるけれど、ね。
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