てのひらサイズの些末なお話

九条 柊

パイプから生まれたヤンキー

うちの中学にもやばい人がいたよ。宇宙人みたいな見た目したヤンキーで、『こいつはおれの体の一部だー』とか言っていつも鉄パイプを持ってるの。それでその鉄パイプで脅して他の生徒に命令してくるんだ。


最初はただのよくあるパシリみたいな命令だったんだけど、だんだんエスカレートしてきてマグロの解体ショーをしろだの純金の銅像を建てろだのツチノコを捕まえろだの無理難題吹っ掛けてくるようになるのね。見た目は怖いし武器も持ってるしで初めはみんな従ってたんだけど、さすがに無理難題すぎてあるときからみんな逃げるようになった。


そしたら命令無視してもヤンキーは全然意にも介さないし報復なんてされないことが判明しちゃって、それからはもうみんな相手せず逃げるようになったよね。むしろどんな無茶ぶりされたかで盛り上がるようになっていった。


でもそんなある日、件のヤンキーが急に空をじっと見上げだしたんだ。またなにか変な難題でも思いついたのかなってみんなで注目してたらヤンキーはぐるりとみんなを見渡して『迎えがきたからおれ帰るわ』って突然言い出した。


それで『じゃあな』って言うといつも持ってる鉄パイプに跨って昼の月の方にふわりって浮かんでって消えちゃったんだ。変な人でしょ?

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