第37話 取られたら取り返せばいい~ジェーン視点~

「母上、何とかしてください。可哀そうに、フランソアはきっと、デイズや公爵によって、屋敷に閉じ込められているんだよ。何とかして助け出してあげないと!」


フランソアは僕の事が大好きなんだ!それなのに無理やり引き裂くだなんて、公爵もデイズも許せない。そもそも、フランソアの気持ちを無視して彼女を手に入れるだなんて、デイズはなんて卑劣な男なんだ!


デイズの奴、ずっとフランソアに執着していたもんな。きっと公爵を騙して、フランソアを自分のものにしようとしているに違いない!さらに僕から逃げるように、フランソアを領地に連れて行ったらしい。


きっとフランソアは、僕を恋しがって泣いているだろう。


「ジェーン、公爵が提出したお妃候補の書類には一切の不備はなかったわ。たとえフランソア嬢の意思に反していたとしても、父親でもある公爵が辞退すると言っているのだから、もうどうする事も出来ないのよ。ジェーン、あなた、フランソア嬢に惚れ薬を飲ませてあるのでしょう?それなら、社交界に出て来たタイミングでフランソア嬢に直接交渉した方がいいのではなくって?」


「そうしたいのは山々なのですが、デイズの奴がフランソアを領地に連れ行ってしまって…きっと今頃僕を思って泣いているでしょう」


「そう言えば3ヶ月後、デイズ殿のお誕生日パーティーが、公爵家で行われるとの連絡が来ているわ。ジェーンも招待されているから、その時にフランソア嬢に会えるのではなくって?」


「そうでした!僕も招待されているのでした。それじゃあ、その時にフランソアに会って話をします」


正直3ヶ月もフランソアに会えないのは辛いが、今は我慢の時だ。そう思い、日々を過ごす。


でもフランソアがいない日々は、本当に辛い。正直お妃候補たちに構っている余裕は僕にはないのだ。


そんな僕に


「ジェーン様、最近元気がないようですが、どうかされましたか?私が慰めて差し上げますわ」


「いいえ、私が!」


お妃候補者たちが、いつもの様に火花を散らしている。煩わしいことこの上ない。今の僕は、フランソアの事で頭がいっぱいなんだ。


そして長くて辛い3ヶ月が過ぎた。今日はデイズの誕生日パーティーの日だ。僕もお妃候補たちと一緒に、シャレティヌ公爵家へと向かった。やっとフランソアに会える。きっと僕の顔を見たら、嬉しくて飛んでくるだろう。


そう思っていたのに…


僕がフランソアに声を掛けても、困った顔をしたフランソア。さらに王宮に連れて帰ろうとしたのだが、嫌がりデイズにしがみついていた。


“もう殿下には好意を抱いていない。私の事は放っておいて欲しい”とまで言われたのだ。


どうしてだ?フランソアは僕の事を愛しているはずだ。それなのに、どうして…


失意のどん底のまま、王宮に戻ってきた。落ち込む僕に、追い打ちをかける様に


「ジェーン、お前は何を考えているのだ!公爵家でフランソア嬢に迫ったそうじゃないか!フランソア嬢はもう、デイズ殿と正式に婚約を結んだんだ。いいか、フランソア嬢の事はもう諦めろ!わかったな」


父上に怒られたのだ。傷ついた僕を怒鳴りつけるだなんて…


ん?待てよ。もしかしたら、デイズや両親がいる手前、僕にあのような態度をとるしかなかったのかもしれない。きっとそうだ!


父上から叱責を受けた翌日、僕は公爵家へと向かった。追い返されるかと思ったが、どうやらデイズも公爵も、さらに夫人まで留守な様だ。その上、玄関で運よくフランソアに遭遇した。ずぶ濡れの僕にタオルを渡してくれ、客間へと通してくれた。


やっぱりフランソアは、僕の事が好きなんだ。そう思っていたのだが…


どうやらフランソアは、本当に僕の事を好きではなくなった様だ。よほど一夫多妻制が気に入らなかったのだろう。100年の恋も冷めると言っていた。その上王宮には、二度と戻らない!とまで言ったのだ。


どうしてだい?フランソアは惚れ薬を飲んでいたはず。まさか、効果が切れたのか?


とにかく一度王宮に連れ帰って、もっと強力な惚れ薬を飲ませないと!そう思い、王宮に無理やり連れて帰ろうとしたのだが、屋敷に戻ってきたデイズに邪魔されてしまった。


クソ、デイズめ。どこまでも僕の邪魔をするのだから!


でも僕は、フランソアを諦めるつもりはない。王宮に戻ると、すぐに魔女を呼び出した。


「おい、魔女。君が作った惚れ薬、効果がなくなってしまったじゃないか!どうしてくれるんだ!」


「あの惚れ薬は一生ものです。効果が無くなるなど本来は考えられません。殿下、もしかして相手の令嬢がよほど嫌がる事をしたのではないですか?」


「うるさい!とにかくもっと強力な惚れ薬を準備してくれ」


「はぁ~、分かりましたよ。少しお時間をください」


どうやらもっと強力な惚れ薬を作ってくれる様だ。


そして数日後。


「殿下、お待たせいたしました。この前よりも何倍も強い惚れ薬を持ってまいりました。この前の様に殿下の血を混ぜて、そのまま令嬢に飲ませて下さい。この惚れ薬を飲めば、もう一生あなた様の虜になるはずです。いいですか?他の飲み物に混ぜずに、そのまま飲ませるのですよ」


そう言ってピンク色の液体を僕に渡してきたのだ。


「これをフランソアに飲ませればいいのだね。もちろん味は美味しいのだろうね。不味いと飲んでくれないかもしれないからね」


「桃ジュースの様な味わいなので、飲みやすいかと思います。いいですか?非常に強力な惚れ薬なので、本人以外には飲ませないで下さいね」


「分かったよ、ありがとう」


これさえあればフランソアは僕のものだ。これでまた、フランソアは僕だけを愛してくれる様になる!デイズなんかに、絶対に渡さないからな。



※次回、フランソア視点に戻ります。

よろしくお願いします。

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