新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない
兼定 吉行
第一章 コンビニバイト~その真実~
プロローグなんて飛ばしていいんだよ……
俺、青砥歩(あおとあゆむ)は将来に希望を抱いていた。
そして意識高い系、あるいは中二病でもあった。
社会の歯車になんてなってたまるか!
大学在学中に起業して、何かを成すぞ!
そんなただ漠然とした、身に余る大きな志を抱いて四年。
今現在、俺の姿は県庁所在地でありながら人の行き来の少ない田舎、山梨県甲府市のとある店舗の中にあった。
そこで俺は……。
ウィィィン。
「いらっしゃいませー、こんばんはー」
自動ドアの開閉音が鳴れば脊髄反射的に挨拶を返すという、立派にこの世界の社会システムの一部となっていた。
……と言えば聞こえはいいが、実際には社会の最底辺付近で一番小さな歯車に成り果ててしまっていたというのが実際のところだ。
……まあ、これだってある種世界の人々の役に立っているって言えるよね?
行動力が物をいう世界。
そこが俺は欠如していたのだと、思い知る。
そもそも何をやりたいかも決まらないまま、手段である企業こそが目標になってしまっていた。
企業に関する知識だけは身に付けながら、そのスターラインにすら立てていなかったのである。
そんな俺には、コンビニ業界最弱と謳われるこのテーヘンマートのバイトはお似合いだな……。
そう自虐的な感傷に浸っていると、土建業とおぼしきよく日に焼けたEザイル系ヒゲ男がレジへとやって来てこう言った。
「お兄さん、タバコ。二十三番一箱」
「はい! こちらですね?」
「あれ、俺が欲しいのはボロマルじゃなくてマイソンライトなんだけど? 番号変わった?」
「ああ、申し訳ありません。最近タバコの新商品が多くて番号がズレてしまって――」
「チッ」
「ま、マイソンライトですね!? 五百円です」
「ほらちょうどだ!」
「チャリンチャリン」と、レジに放られて散らばる小銭。
それをなんとか拾い集めながら接客を続ける。
「も、申し訳御座いません! ちょうどお預かりします!」
「もう番号変えんなよ」
「ありがとうございました! またお越し下さいませ!」
畜生二度と来んなドカタめ!
番号変えてるのは俺じゃなくて店長とタバコ業者さんだよぉっ!?
なんで俺が怒られなきゃならない……理不尽だ!
くそぅ……。
一体、どうしてこうなった……。
元来真面目な性格の俺は、高校一年時からこのコンビニでのを始め、受験勉強と両立しながらも難無く地元国公立大学へと入学する。
その頃コンビニオーナーからは、大学へ行かずに店長になってくれないかとの打診があったが光の速さで断った。
誰がそんなクソブラック最底辺奴隷社畜になるかボケ……と。
だが、もはやその道に向かい始めていることを自身も感じている。
まあそんな感じで今もこうやって、コンビニ業界で俺は全力投球で頑張っているという訳だ。
……なんて、かなり扱き下ろしてしまったが、正直なところ俺はこの何でもない日々をかなり気に入っている。
俺が働くコンビニの名はテーヘンマート……略してテーヘン。
最悪の略称で通称だが、今では愛着すら覚えていた。
そんなテーヘンは潤沢な資本金からの大手コンビニいいとこ取り……というかモロパクリしたことによって、面白いほど順調に利益を上げ、その店舗数を日本全国で爆発的に増やしていったという経緯がある……らしい。
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