第10話:恥ずかしがって顔を真っ赤にしていく佐々木さん
今の話に出てきた“
それで一年の頃は名前の順で整列すると七種さん→桜井さん→佐々木さんと連番で続いてたので、割とその三人で固まって行動したり喋ったりしてるイメージが昔からあった。
そして二年になった今でもその三人は凄く仲が良いイメージがある。休み時間に一緒に話してたりご飯を食べたりする所も多々見かけるしね。
(あぁ、なるほどな……それで佐々木さんは桜井さんと七種さんを比較したんだな)
だって桜井さんは夏江から告白をして貰ったわけだし、七種さんも今まで結構な数の男子生徒から告白を受けているからな。
そしてそんな身近な二人の仲が良い友達と比べて、佐々木さんは今まで一度も告白をされた事がないからモテないんだと勘違いをしてしまったんだろうな。
「……まぁでも、千紗みたいに知らない男子から告白され続けるのもしんどそうだとは思うけどね」
「えっ? あ、あぁ、まぁ七種さんはちょっと有名だしねぇ……」
そして今話に出てきた七種さんという人は、実はこの高校ではかなり有名な女子生徒なんだ。
七種さんがどう有名な人なのかというと、少し前に開催された文化祭のミスコンでぶっちぎりの一位を取ってしまい、文化祭が終わったあとに七種さんに告白したい男子生徒で行列を作らせてしまったという伝説を残しているんだ。
(いやあれは本当に凄かったよなぁ……)
七種さんが告白されてる所は俺も何度か見かけた事はあるけど、告白待ちをしてる男子の数が多すぎて、七種さんがめっちゃ大変そうにしてたのは何となく覚えている。
まぁでも七種さんへの告白は結構ネタというか、冗談でしてる男子も沢山いたんだけどね。“ミスコン一位を取った女子だし、ちょっくらネタで告白してみるわ!”みたいな軽いノリでさ。
それにもし断られたとしても、七種さんが相手なら振られて当然なんだから傷つく事もあんまりないだろうって感じで、七種さんは沢山の男子生徒から告白を受けていたんだ。
(まぁでもそれって七種さんからしたら凄い迷惑だよなぁ……)
だからこそそういう記念受験みたいなノリの告白をする人の事はちょっと嫌な感じがするし、逆に夏江みたいに好きな女の子にビシっと告白するような人の事はカッコ良く見えるし尊敬もするよ。
「まぁなんていうかその……ミスコン一位を取ると色々と大変そうだよね。七種さんがちょっと可哀そうな気もするよ」
「うん、本当にそうよね。でもそんな心配そうな事を言っておいて、実はアンタも千紗に告白とかしてるんじゃないの?」
「え……えっ!? い、いやいや! そんな告白なんてしてないよ!」
夏江の事を尊敬しながら俺は七種さんを心配する言葉を送ったのに、まさか佐々木さんに俺も他の男子と同じ事をしてんじゃないのかと疑われていってしまった。
なので俺は首を思いっきり左右にブンブンと振りながら否定していった。だって俺はそういう事をする人間では絶対にないんだからさ。
「ふぅん、そうなんだ? え、それじゃあさ、山田って今までに告白とかは何回くらいした事あるの?」
「い、いや、そもそもそういうのは一回もした事ないよ。なんかそういうのって軽いノリでやっちゃ駄目だと思ってるからさ」
「へぇ、そうなんだ?」
「うん。まずはちゃんと友達として交流を深めていってさ、それで相手の事を本当に好きだなって思うようになってからじゃないと……何だか相手に対して不誠実じゃん?」
「へぇ……って、あはは、何よそれ」
俺は真剣な顔をしながらそんな事を言っていくと、佐々木さんはあははと笑いながらこう言ってきた。
「なるほどね、山田はあれなんだね。意外と古風というか……ちょっと古い少女漫画のヒロインっぽい思考をしてるんだね」
「い、いや、ちょっと古い感じって……」
「え? あぁ、いや貶してるわけじゃないわよ? ただちょっと今時の男子にしては珍しいかなって思っただけよ」
「え? そうかな?」
「うん、きっとそうよ。ふふ、まぁでもさ……私も誰かに告白されるんだったら、軽いノリでされるよりもアンタみたいに誠実な心を持ってる人にされてみたいわね」
「ふぅん、そっかそっか……って、えっ!? い、いや何かその言い方だとさ……」
「え……あっ! い、いや違うからね! これは例えばってだけの話だからね! か、勘違いすんじゃないわよ!」
「えっ!? あ、あぁうん、それはもちろんわかってるよ!」
どうせ告白されるなら“俺みたいな……”という佐々木さんの言葉を聞いて俺はちょっとだけドキっとしてしまった。でもすぐに佐々木さんから“勘違いするな”と釘を差されてしまった。
もちろん俺の顔は赤くなっていってしまったし、当然だけど佐々木さんの顔もほんのちょっぴりと赤くなっていた。
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