一筋の光②
「ここは一体……」
床に落ちている書物を手に取りページをめくると、中には祝福について熱心に調べた痕跡があった。
王宮の図書室にある書物では取り扱っていない、祝福についてもっと深く掘り下げる内容にも触れられていた。
(もしかしたらクラリスを救う手立てが見つかるかもしれない!)
僕は無我夢中で手あたり次第の書物を読み漁った。
そして次の書物を手に取ろうとした時、ふと一冊の日記帳が混ざっているのが目に入った。
常識として考えて、普通は他人の日記を勝手に見るべきではない。至極当たり前の事なのだが、僕は何か見えない力に吸い寄せられるように自然と日記帳を開いていた。
パラパラとめくっていくと、最初は業務報告のような淡々とした言葉が並べられているだけだった。
しかし更に読み進めていくと、そのページだけ殴り書きのような荒々しい文字で書かれた箇所を見つけた。
―*―*―*―*―
△月□日。
俺は君だけを愛しているのに、君は違う。
君を幸せに出来るのも、愛しているのも俺だけなのに。
この手を取ってほしいと言った俺の心からの願いは、最後まで君には届かなかった。
私は皆のものだから、皆を平等に愛しているの。君は俺の告白に笑顔でそう答えた。
皆のもの……そんなに大勢に愛される事が幸せなのだろうか?
俺は君を愛しているけれど、君は俺を愛していない。いや、君は全ての人間を愛してなどいない。
君が愛しているのは、いつだって“愛されている君自身”なのだから。
このままいけば俺は当初の予定通り一年後に婚約者と婚姻を結ぶだろう。
そうしたら君は一体誰の手を取るのだろうか。
最近よく共にいる隣国の王子?それとも俺の側近の公爵子息?それか、あの見目のいい伯爵子息だろうか。
俺は、俺を愛してくれない君が憎い。
俺の手を取ってくれなかった君が憎い。
その愛らしい笑顔を他の男へ向ける君が憎いのと同時に、どうしようもなく愛おしいと感じるんだ。
俺を愛してくれないなら……。
俺のものになってくれないのなら……。
俺は君が、俺意外の人間の手を取る姿を見る事に耐えられない。
きっとその場面を見たら、躊躇なく相手を手にかけてしまうだろう。
それならばいっそ、君を俺だけのものにしよう。
誰にも取られないように。
その美しい瞳に、誰の事も映す事などないように。
誰からも愛される事を望む君が、誰の瞳にも映らないように。
そうして君を愛するのが俺だけになった時、一体君はどんな顔をしてくれるのだろうか。
泣き叫ぶのだろうか、絶望するのだろうか。お前が憎いと、俺を憎悪の籠った瞳で見つめてくるのだろうか。
ああ、想像するだけで、どれだけその日が待ち遠しい事か。
君の喜ぶ顔、怒った顔、泣いている顔、俺を憎む顔。君が作り出す表情、感情、全てが愛おしいよ。
誰よりも君を愛してる。
例えその結果が君を殺す事だったとしても、俺は君を諦めない。
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