第327話 ラストアタック
『嫌らしい逃げ方するねー』
「くははははっ! 気にせずブレスをぶっ放して良いんだぞ!!」
あれから何日戦い続けたか。何回か夜が来たけど、正確な日数は分からない。そんなの気にしてる暇がないんだ。
竜王の攻勢は衰える事がないし、俺は常に全力で逃げ回ってる。それで数日持たせてるのを褒めて欲しいくらいだ。
「くそっ! またか!」
相変わらず急に体が動かなくなって、能力が封印される仕組みが分かってない。でも封印される能力がランダムっぽいんだよね。
で、その不思議な能力を使ってる間は竜王もその場を動けない。ブレスは飛ばしてくるけど。それに連続で使ってこないのを見る限り、クールタイム的なのもあると思われ。
連続で使えるならひたすら止めてブレスを撃てばいいだけだからね。
俺はせめてもの抵抗として、背後に無事な国がくる様に立ち回って、竜王のブレスを制限している。俺が避けたり逃げたらブレスで国が荒野になるからね。
最初は気にせずブレスを撃ちまくってた竜王だけど、流石に2つぐらい国が無くなったところで、ブレスを控え始めた。
「ぬおぉぉぉおっ! また腕がないなった!」
『ここまで逃げられるのは初めてだねー。厄介な能力構成だよ、ほんとに』
今回は【影支配】が無事だったので、影の中に避難。それでもブレスの余波で、腕が消し飛んだが。俺が許可してないのに、こいつはある程度影にも干渉してくるんだよな。
支配の名折れですよ。
「これだけやってほぼ無傷か。嫌になっちゃうな」
『いやいや、レト君は誇って良いよ。竜王さんとこれだけ長い時間戦って生きてるんだから』
「いつまでもその上から目線がムカつくな」
【音支配】で体中に振動を纏いながら、竜王にパンチする。ギャインという生物を叩いた音じゃない、金属音みたいなのに弾かれ、無傷。鱗が硬すぎる。柔らかい場所は見つけてるけど、そこを攻撃するのは至難の技だ。
『んー? レト君、なんかやってる? 時折体が動かしにくくなるんだよねぇ』
「知るか! ずっと寝てたから体が鈍ってるんじゃねぇの? もうそのまま永眠してもろて」
なんでか知らないけど【傲慢】が仕事をし始めてるんだよね。ほんとにちょびっとずつ、侵食していってるっぽい。どこに勝ち判定があったのかは分からないけど、めっちゃ助かってる。
このまま逃げ続ければ、そのうち完全に侵食出来るのではと期待してる。竜王は原因が分かってないみたいだし、俺は無様を晒して必死に逃げる。【傲慢】が完全に作用してからが、本番だ。
この時はそう思っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
『にゃははははー! レト君も頑張ったねー』
俺の体力が持ちませんでした。こんなにひたすら全力で動き回ってたのは初めてだ。もっと持つと思ってたんだけど。多分一週間も経ってない。
蟲領域ではもっとぶっ続けで活動してた。まあ、時々休憩は挟んでたし、全力で動いてた訳じゃないけど。
『いやぁ! 楽しかった! 久々に体を動かすとやっぱり気持ちいいね!』
「ちっ」
竜王はすっかり終わった気でいやがる。しかも楽しかったと。竜王を楽しませるレベルで戦えた事を誇れば良いのか、危機感を与えれなかった事に残念がればいいのか。
少なくとも良い気分じゃないね。
『じゃあ最後にどでかいブレスでもお見舞いしてお説教は終わりにしようかな』
俺は現在大の字で倒れている。竜王は空を飛んで俺を見下ろしてる訳だが、口にそれはもう、高密度な魔力を溜めて、俺を目掛けてブレスを撃とうとしてる。
良いぞ。そのまま油断してくれ。俺はもう最後の切り札に懸けてるからさ。まあ、なんとも情けない切り札ではあるけど、一矢報いる事は出来ると思う。
ラストアタックをぶちかましてやるぜ。
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