第57話 ラビリントス探索


 影の中で明るくなるまでみんなでボードゲームをして遊んだ。

 人生ゲームみたいなのを作ったんだけど、俺がやった事ないからこんな感じかな? で、ノリで作った割には楽しめたんじゃないだろうか。

 何回やっても最下位だったんだが。

 次はトランプでリベンジしようと思う。

 前世でちょっと危ないギャンブルに手を出したりしてたからな。

 イカサマもお手のものだぜ。

 こいつらに、理不尽というものを教えてやろう。



 「で、グレースの顔見知りはギルドマスターと領主だけ?」


 そろそろ外に出ようかというところで、最終確認をする。

 人通りの多い所で見つかって処理するのは面倒だからな。


 「私が覚えてる限りですが。それ以外にも私の事を覚えてる人が居ると思います。これでもそれなりに有名だったので」


 そりゃ大国の騎士団長なんて目立つだろうからな。

 グレースの知らない所で顔を覚えられてても不思議じゃないか。


 「じゃあ、やっぱりダンジョンに入るまではグレースを出さん方がいいな」


 「申し訳ありません」


 「いや、それはいいんだけど。うーん」


 「何かありましたか?」


 あるっちゃある。

 でも、どうしてもって事でもないし、俺の見栄えの問題だからなぁ。


 「ほら、俺の格好みてよ。いかにも高貴でございみたいな感じじゃん? それがお供もなく歩いてるのはダサいかなと。貴族みたいなのが1人で歩く事なんてないだろ?」


 リブラにいた頃から思ってた事なんだけどね。

 誰かを侍らしてる方がそれっぽいし、俺の承認欲求も満たせる。

 気持ちの問題だけど。

 下手に有名人を眷属にしてしまった弊害だな。

 

 「なるほど。難しい問題ですね。奴隷でも購入しますか?」


 「それはなんか違うんだよなー」


 別に俺は平等主義でもないので、奴隷に忌避感はない。

 今すぐ奴隷を解放しろなんて勇者めいた事も考えない。


 「この世界の奴隷って、俺が知ってるラノベ知識の感じじゃないんだよね」


 奴隷の首輪とか契約魔法で縛ったりする感じじゃないんだよな。

 奴隷という階級があるだけで。

 だから奴隷を買ったとしても、逃げようと思えば逃げれるし、秘密も漏らせる。

 俺と関わるなら、今の所秘密厳守は絶対だ。

 グレースは眷属にしたから大丈夫でも、奴隷はそうはいかない。

 正直、今の段階でそんな面倒な情報管理はしたくない。


 「って事で、奴隷はなしで」


 「かしこまりました。すると、誰かを眷属にするしかない訳ですが?」


 「そうなんだけどね。どうせ眷属にするなら有能な奴とか珍しい能力を持ってる奴にしたいんだよね」


 「なるほど。レト様はわがままという事ですね」


 身も蓋もない言い方をするとそうなります。

 俺が承認欲求を満たすのを諦めるだけでいいんだからさ。


 「仕方ない。1人でぶらぶらするか。なんか欲しい物あったら声を掛けてくれ。買うか奪うかするから。妲己とアシュラもな」


 「ありがとうございます」


 「キュン」


 「ギャギャ」


 さてと。

 ラビリントスぶらり旅に出掛けますかね。





 「ありがとうございましたー! またお願いします!」


 屋台が並んでる通りで良い匂いがするのを、手当たり次第購入し、影の中に放り込む。

 今頃、妲己とアシュラの戦争が行われてるだろう。


 ラビリントスは宿と武器屋がとにかく多い。

 リブラも宿は多かったがそれ以上だ。


 「まさか魔道具屋がないとはな」


 迷宮都市だから絶対あると思って期待してたんだが。

 ここではあんまり売れないらしい。

 実力のある冒険者は自分で取りに行くし、それ未満の奴らは魔道具を買うお金がない。

 商人もここで売るより、街の外に持って行った方が高く売れると知ってるから店を構えない。

 良く出来てるお話ですね。


 「魔道具屋がないなら、もう見たい物がないんだよな。冒険者ギルドぐらいか? 面倒事が起こりそうだから行かないけど」


 偉そうな格好してるから、賢い奴は絡んで来ないだろうが、馬鹿というのは一定数必ず居るからな。

 冒険者なんで猿がちょっと賢くなっただけっていう偏見もあるし。


 「飽きたな。もうダンジョンに篭るか。物資は大量にあるし」


 なんかせっかく楽しみにしてた街巡りだったのに大した面白くなかったな。

 もっと目新しいのが色々あると思ってたけど、文明レベル的にこんなもんかと落胆してしまう。


 「こういう所は前世の方が良かったな。娯楽は腐る程あったし」


 危険だらけの世界では娯楽に力を入れてる暇なんてないわな。

 そんな余裕があるのは特権階級の奴らぐらいか。


 「あれ? もしかして、異世界って人殺し以外の楽しみがないのでは?」


 俺は真理に辿り着いてしまったのかもしれん。

 これは由々しき事態だぞ。

 俺がもし、このまま死なずに成長して敵無しになってあちこちで殺して回ったら、いつか娯楽が無くなってしまうのではなかろうか。


 「適度に間引きして、増えるのを待ってを繰り返さないといけないのか」


 人間牧場かな?

 何かこの世界で人殺し以外の目的を見つけないと、いつか虚無になるな。

 かといって、俺が娯楽を作り出すのは違うし。

 自分で作ったら楽しみも半減しちゃうよね。


 「娯楽って何があったかな。今の文明で出来そうなのは、カジノとか? 競馬も出来そう。あー奴隷同士を戦わせるやつ。なんだったけ? 剣闘士? いや、殺しは自分でするから楽しいのであって、見るのはすぐ飽きるな。スタンピードがそうだった」


 ダメだな。

 俺が考える娯楽はギャンブルとか殺伐としたのしか思い付かん。

 カジノとかやるなら一定以上の権力も必要になってくるしな。

 学が無いのはこういう所で損だね。

 

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