閑話.これは監視です。決して楽しんでるわけではありません。

「マネちゃん、マネちゃん! 今度さ、新人VTuberの零くんとコラボしていい?」

「いや、あの配信であんだけ堂々と宣言されたら断れないってわかって聞いてますよね!?」

「あ、やっぱりあの配信見ててくれたんだね! さっすがマネちゃん!」

「まぁ、みかがコメントしたあとからですけどね」


 どうも、みかのマネージャーをやっている最上もがみあやです。この元気いっぱいのみかのマネージャーしてます。


 今日は、昨日の零くんの配信のことで話し合いの予定なんだけど……。


「で、いいよね!」

「まぁ、問題ないですけど」

「やった! ありがと、マネちゃん!」


 そう言ってみかは私に抱きついてくる。話し合いになってないのはみかだから仕方ない。


 それに、美少女のみかに抱きつかれるの最高なんだけど……。これこそ至福……! はっ、私、仕事中だぞ。しっかりしろ!


 あ、ただ1つだけ言っておかないと……。


「みか? まだ1回しか配信してないようなほんとに新人だから、さすがに事務所で監視させていただきますよ?」

「ん〜。ま、それは仕方ないか!」

「それと、急に事務所がコメントして零くんが驚いても困りますし、予め伝えておいてくださいね」

「おっけ〜!」


 こんな軽い感じの会話で決まったのが、後に伝説の配信になることは、このときの私に分かるわけもなかった。


 そのかわりに、1つだけわかったことはあったけど。


 これで私も仕事中に合法的に配信見れるっ!






     ☆






 配信当日。私は、今していた仕事を中断しサボって零くんの配信の待機画面をつける。


「そろそろ配信が始まるか……」

「ですね……零くんはうちの元気印のみかと配信できるでしょうかね……」


 ということで、社長登場。


 みかがあそこまでコラボしたいって言ってきたことがなかったから、さすがの社長でも気になるらしい。


「もしかしたら、うちのライバーになってくれそうな人材だったらいいんだがな」

「少数精鋭って呼ばれるうちの事務所に入れそうな人材、滅多に出てきませんって! ほら、始まりますよ!」




『皆さん、こんれい! 皆さんに笑いと感動を届ける、神宮寺 零ですよ! 本日は、私の配信に来てくれてありがとうございます! そして、こちらが本日コラボしてしまう──』

『みんな〜! こんみか〜! ミックスライブ所属の和泉みかの時間だよ! って、してしまうひどくない!?』




「……してしまうって思うのはこちらも同じ意見だな」

「とりあえず、私たちも見てますよ〜、ってことを知らせるためになんかコメントしておきますね〜」




Mix Live ミックスライブ -VTuber Group-:大丈夫です、こちら側も同じ意見ですから




「これでよしっと!」


 それからは、みかが私たちが見てることを知らせてなかったり(零くんごめんなさい)、零くんがアニカーの元世界7位と思ったら(え?)、世界1位が来たり(こっちはいつも通りだった……)、エイベックスの世界チャンピオンも来たり(ふぁ???)、結局4人のコラボになって最終同接数が22万人だったりした(え、VTuber界過去最高!?)。


 ……こんなに感想を言えるくらい楽しんだわけじゃないです。あくまで仕事の一環ですから。ほ、本当ですからね!


 最後に『なるほど』と書いたのは……。


「では、社長。零くんにうちの3期生としてライバーにならないかという趣旨でDM送っておきますね」

「あぁ。これで全員了承してくれたら、ミックスライブの勢いは今までの比じゃないほどに飛躍するだろうな」










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