第30話

 ある夫婦が事故物件に引っ越すことになりました。彼らは住居費を節約するため、事故物件に目をつけたのです。


最初の数週間は何事もなく過ごせていましたが、ある日を境に奇妙な現象が起こり始めました。夜中になると、家中に不気味な影が現れるようになったのです。壁や天井に映る影は不定形で、形を変えながら部屋を闊歩し、恐怖を感じさせました。


さらに、奇妙な音が聞こえるようになりました。廊下から足音が聞こえると思うと、その瞬間に誰もいないことが確認されます。壁や床から響く異音も日常的になり、どこからともなく聞こえるため、夫婦は常に不安な状態に置かれていました。


一番恐ろしかったのは、夜になると寝室の中で息苦しさを感じることでした。まるで何かが彼らを窒息させようとしているかのような感覚で、布団の下から手が伸びてくるような幻覚が見えることもありました。夫婦は何度も悪夢から目を覚まし、冷や汗をかきながら必死に息を整えました。


心身ともに疲弊した夫婦は、この状況に耐え切れなくなり、霊能者の助けを求めることにしました。霊能者は事故物件に赴き、浄化の儀式を行いました。祈りと聖水によって邪悪なエネルギーを追い払おうと試みました。


儀式の後、一時的に現象は収まりましたが、しばらくして再び激しさを増しました。夫婦は恐怖に怯え、生活が不安定なままでした。絶望感が募る中、彼らは最終的に引っ越しを決意しました。新しい場所で新たな生活を始めることで、心の傷を癒す道を選んだのです。


事故物件に住んだ人々の恐怖の心霊体験は、人知を超えた存在や邪悪なエネルギーによって引き起こされる恐怖と絶望の連続でした。彼らの体験は、事故物件に住むことの危険性や心霊現象の恐ろしさを改めて教えてくれるものでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る