宮廷の運命と煌めき・王族の誓い禁断の愛:王太子に婚約破棄された伯爵令嬢は拳を握る。

克全

第1話:舞踏会の背徳・王家の陰謀と醜い婚約

 厳しい大陸の状況に対応するために、年々武骨さが加わる王宮ですが、まだ舞踏会場は美しく華やかなままです。


 高い天井には美しいシャンデリアが輝き、壁面には絢爛豪華なタペストリーや宮廷画が飾られています。


 多くの花が飾られ、部屋の隅々まで芳香が漂い、壮大な音楽が響き渡っています。

 華麗なドレスをまとった貴族や貴婦人たちが、優雅に踊りながら会話を楽しんでいます。


 今日は仮面舞踏会なので、彼らは宝石で飾られたマスクを身につけ、謎めいた魅力を演出しています。


 床は美しく磨かれた大理石で覆われ、その滑らかな質感が踊り子たちの足音をより一層美しく響かせます。


 優雅な舞踏のリズムに合わせて、一時の快楽を愉しむカップルたちは、一糸乱れぬ動きで舞い踊っています。

 彼らのステップは軽やかで、まるで重力が存在しないかのようです。


 舞踏会場の壁には、豪華な装飾が施された大きな窓があります。窓からは月明かりが差し込み、室内を柔らかな光で包み込んでいます。


 窓の外には庭園が広がり、美しい花々や噴水が調和した風景が眺められます。

 風が優雅に吹き抜け、カーテンが揺れる様子がシャンデリアの灯によって幻想的な雰囲気を醸し出しています。


 舞踏会場の一角には美味しい食べ物や飲み物が並べられたバフェがあります。

 香り高い料理や贅沢なワインの芳香が漂い、貴族たちは美味しいお酒と共に楽しいひと時を過ごしています。


 バフェの周りには、美しいフラワーアレンジメントや装飾品が配置され、会場の華やかさを一層引き立てています。


 舞踏会場は大陸の争乱とは別世界のようです。

 華やかな衣装と装飾品、優雅な舞踏のリズム、芳香漂う空気、そして人々の笑顔が交錯し、まさに夢のような舞踏会が繰り広げられています。


 そんな中にあって、私は場違いも甚だしい存在になっています。

 私は幼い頃から小さくなって生きてきました。

 伯爵令嬢なのに、人並み外れた身長なのです。


 身体つきも骨格が太く、どれほどダイエットしても筋肉が付いてしまいます。

 そして顔も……普通なら縁談など一つも来ない容姿なのです。


 ですが、今は大陸が戦乱時代なので、容姿ではなく武勇が何より優先されます。

 それは騎士や戦士だけに限られません、王家や貴族も油断できないのです。

 武勇を蔑ろにすれば、家臣に下克上される時代なのです。


 だから、私のような女にも、縁談が舞い込みます。

 より大きく強い子を生んでくれる母体だと。


 いえ、それはあくまでも建前でしかなく、私の一族である、ミュラー伯爵家の強力な騎士団戦士団を援軍に欲しいのです。


 私に恋して求婚してくれる訳ではないのです。

 こんな時代だから仕方ないかもしれませんが、恋に憧れる私には哀しいです。


「皆に聞いてもらいたい、私は王家のため国のため、意に沿わぬ婚約をした。

 婚約をした以上、誠実に生きてきた。

 なのに、ソフィーは醜い容姿を我慢して婚約した余の誠意を蔑ろにし、不貞をはたらいたのだ!」


「おおおおおお!」


 ジョナサン王太子が私の事を悪し様に罵っています。

 ですが全て事実無根です、私は不貞などしていません。


 そもそも陰でオーガ令嬢と悪口を言われている私と、不貞をしようという男性は一人もいません。


 私に優しく接してくれる男性は一族の男性だけです。

 でもそれは、私を妻に迎える必要がないからです。


 一族の男性も、私を妻に迎えろと命令されたら、さすがに優しくなどできないでしょう。


 そんな事は私にも分かっています。

 でも、少しでも、ジョナサン王太子に醜い容貌で生まれた女への優しさがあるのなら、満場の席で醜いと罵るのは止めて欲しかったです。


「余は王家と王国の名誉を守るために、ソフィーとの婚約を破棄する事を宣言する。

 同時に恥をかかしたミュラー伯爵家との絶縁を宣言する!」


 ああ、結局こうなってしまいました。

 そもそもこの婚約は、私や父が望んだ縁談ではありません。

 王太子殿下かとの縁談など、身分違いだと何度もお断りしていたのです。


 それを、アニカ王妃殿下と摂政を務められるクラウゼ公爵閣下が、何度も、何度も、直接当家に来られ、頭を下げられたから御受けした婚約なのです。


 私にはこうなる予感がありました。

 私と初めて会った時のジョナサン王太子に表情です。

 怪物でも見たような恐怖と嫌悪が浮かんでいました。


 でも、だからといって、このような仕打ちは酷すぎます。

 王国側から平身低頭求めてきた婚約なのですから、誠意を持って破談にして欲しかったです。


「待て、そんな話は全く聞いていないぞ、証拠はあるのか!」

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