四大属性で最弱の土属性なので、魔王討伐を諦めてゆっくりスローライフを決め込んだ黄色の魔法使い

Mr.Six

気付いた時には……

 目を瞑っただけなのに、気づいたら見たことない場所だ。


 確か、自分の部屋で家庭用ゲーム機の電源を入れて、椅子に腰を掛けていたはずなんだけど……。


 いつの間にか立ってるし、壁は真っ白、床は赤い絨毯が敷かれている。俺の周りには人……だよね、手に持ってるのは武器? 見た目も普通じゃないな、甲冑来てるし。


 天井には電球らしきものがついてない、外の光だけか。


 うん、とりあえず普通じゃないことは理解した、ここで喚き散らしても体力の無駄だし。


「気が付いたか?」


 背の高い男が声を掛けてきた。


 この男は……俺と同じ現代の服を着てる、普通だ。俺の他に3人いるな、普通の人間が。


「俺は火野晃一、よろしくな!」

 背が高く髪は短髪で陽キャ、俺の苦手なタイプだ。


「うぃ~、俺は風間研三ね」

 髪に緑のメッシュを入れてピアス開けてるチャラ男、コイツも苦手。


「僕は水谷流二です」

 背が低くておとなしい男の子、この子は仲良くなれそうだ。


「あ、僕は土門凱です。よろしくお願いします」

「諸君、気が付いたか」

 突然渋めの声が響き渡った。俺たちの前には玉座に座ったいかにも王様らしき人物が座っている。


「混乱するかもしれんが、諸君らは転生の儀式により他の世界からこちらに呼び寄せた。目的はただ一つ、この世界に魔王が誕生しようとしておる、それを食い止めてほしいのだ」

 来た、まさか自分が転生するとは思っていなかったが、いきなり魔王を食い止めろって本当に言うんだ。


「なるほど、それで俺たちを呼びよせたのか」

「なんだか楽しそうじゃん」

「まぁ、もう受け入れるしかないですよね」

 3人もなんだかやる気になっているみたい。とは言え、俺もやらないといけないんだろうな……やるけど。


 「よし、それではまず諸君らにしてもらうことがある、用意を!」

 王様の言葉で兵士が葉っぱを持ってきて俺たちに1枚ずつ渡した。


「それを手のひらに乗せて、目を瞑り集中するのだ、これは”魔葉式”と呼ばれる、魔法の属性を調べる方法だ」

 なるほど、王様の話の続きによると、この世界は四大元素の火、水、風、土の4つの元素から成り立っているらしく、人はいずれかの元素を持ち合わせているとか。


 他の元素も存在し、光と闇があるらしいが話が難しすぎて理解ができなかった。恐らくちゃんと勉強していても理解できる人は半分も満たないだろう。


 俺たちが目を瞑り葉っぱに意識を集中させた、俺はどんな属性なんだろうか―――


 ボォッ!!


 火野晃一の葉っぱが突然燃え出した。もう誰が見てもすぐにわかる反応、火野晃一は火の属性ってわけね。次に反応があったのは風間研三だ。


 フワァ……―――


 葉っぱがゆっくりと浮き上がる。そして風間の周囲を物凄い速さで回り始めた。確か葉っぱが浮くのは風属性って言ってたな。


 ポタッ……ポタッ……


 水谷流二の葉っぱが濡れている。ってことは水谷の属性は水か、今のところ火、水、風が出ている。順当にいけば土属性ってことか、まぁ、俺にはお似合いの属性かもしれないな、火を扱う程熱血ではないし、風ってほど自由な性格でもない、水属性を上手に扱えるほど冷静さも持ち合わせてないだろうし。


 葉っぱに意識を向けていると、葉っぱの数が2枚になっていた。


 ん? 2枚? 元から2枚だからとかじゃないよな、ないよね? 俺より驚いていたのはこの世界の住人たちだった。


「え、なに? どうしたんですか、王様」

「まさか、貴様は土属性か……!」

 途端に口調が悪くなる王様。突然立ち上がり、落胆とも怒りともとれるような表情を浮かべている。


「土属性は最弱の属性、魔力は大量に消費するし、攻撃にも防御もまともにできん、たとえ魔力があったとしてもせいぜい5分程度しか持たないのだ。土属性はいわば弱者の証! この世界ではまともな職にもつけん、よもや土属性を持って転生しおって!」

 はぁ? どういうこと、勝手に転生しといて土属性だからってそんなキレる?


「いや、僕はこの属性になりたくてなったわけではないんですけど……」

 こんな時に同調を求めたのが間違いだった。3人に助けを求めたが、軽蔑な目を向けられていた。


「まぁ、土ってそんな派手な属性じゃないし」

「正直、風とかに比べるとダサくね? イモくせぇし」

「まぁ、いるだけ無駄ですね、転生お疲れ様でした」

 おい、こいつらマジか、周りの兵士もクスクスと笑ってやがる。ふざけやがって、俺何もしてないじゃんか……。


 「土門凱よ、貴様を国外追放する! 本当なら新しい転生者が来た時点で処刑するのだが、せめてもの情けだ、二度とその面を見せぬといい」

 王様がそういうと、俺は両脇を兵士に抱えられ、城の外に追い出された。


 俺は何も知らされぬまま未知なる世界で独りになった―――

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