第八話 ブルートゥース
「なるほど、これが配信スキルのスキルツリー、そして初歩スキルか」
ステータスでも確認したその初歩スキルを俺は早速試していた。
スキル名は、『ブルートゥース』。茜さん曰く、比較的短距離で離れた存在と一対一の情報共有をするスキル、らしい。
習熟していくと距離が伸びていくらしく、パーティー間でも情報共有に使えるスキルなのだとか。ただ、とりあえずは俺は茜さんから貰ったドローンと接続を試みているところだった。
ちなみに、ブルートゥースでペアリングする際には、対象のデバイス名を登録した方が良いらしく、俺は貰ったドローンに名前をつけた。
その名もラジ夫だ。
茜さんに名前を伝えたら、微妙そうな、そして不思議そうな顔をされた。俺としては、やっぱりどうしてもドローンというのが、ラジコンにみえるので、ラジ夫としてみたのだ。理解は頂けなかったようだが。
それはさておき、スキルの習熟は、基本的には何度も繰り返し使用する事になる。一部、例外があるが、ほとんどはひたすら地味に地味に、繰り返し使用していく。
これにつきる。
「スキル『ブルートゥース』。接続、ラジ夫」
俺は宙に浮かんで停止しているラジ夫の両側に、少し離して手をかざしながら、スキルを発動しようとする。
最初だけあって、なかなか安定しない。
しかし特に気にすることなく、目を閉じ、自らの感覚にだけ、全神経を集中させる。
三千年スキルの習熟だけをしていた俺にしてみれば、試行錯誤と地味な反復というのは息をするのと同じくらい簡単だった。
そうしてスキルの発動を繰り返し続けていくと、徐々にラジ夫のことを感覚として把握出来るようになってくる。
──この僅かに感じられる反発する感じ。これがブルートゥースを通して感じられるラジ夫の周波数、だな。
スキルの習熟に夢中になっている俺だったが、ふと思い出す。
──あ、そうだ今は茜さんが一緒にいるんだっけ。
このまま、只ひたすらにスキルの習熟をしていて良いのかなと少し悩む。手をかざしながらちらっと茜さんの様子を伺う。
そんな俺の視線を感じたのか、こちらを振り返ってにっこりと笑うと親指を立ててくる茜さん。
反対の手ではちょうど現れたダンジョンのモンスターを、手にした剣で両断していた。いくら最難関ダンジョンの一つとはいえ、ここ、低層であれば茜さんでも問題なく倒せるモンスターしかでない。
──どうやらこのまま練習していて問題なさそうだ。
俺もこくりと頷き返して、すでにコツを掴んだスキル『ブルートゥース』の習熟をそのまま続けていくのだった。
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