第5話 side金桐 飛鳥
①
下校途中。
私こと
彼女の名前は
姫路さんとの出会いは突然だった。
一昨日の夜、私が幼馴染の女の子、
実を言うと、その時に最初に気がついたのは私では無く綾の方だった。
綾がその二人を見つけて「あっ」という声を漏らさなければ、私は気づかずに素通りしていたと思う。だから本当ならば、今こうやって一緒に帰ってる姫路さんに「何かあの時の助けようとしてくれた気持ちにお礼をしたいんだ」と言われるのも、私ではなくて綾であるべきなんだけど…………
それでもどうしてか、私は彼女から誘いを受けた時に無性に嬉しくなってしまった。
心の中では私が受けるべきでは無いと思ってるのに、ついつい、無意識に頷いてしまっていた。
………思えば、あの夜ホテル街で、姫路さんを初めて目にした時から、鼓動の速さが異常だったような気もする。
初めて見たあの夜の彼女は、黒シャツに黒のスキニーパンツ。ジャラジャラとしたネックレスをつけて、指輪も2個3個ぐらい嵌めていて。ボーイッシュな髪型も相まって外見は『かっこいい』の一言に尽きた。
それなのに、私はどこか、彼女のあの今にも泣きそうで弱々しかった表情が、とてつもなく可愛いと思ってしまった。
それでも、私の中の強く芽生えた正義感が私をあのような形に動かした。
後悔はしていない。
あわよくばもう少し長く、そして間近で、姫路さんの弱った姿が見てみたいなんて、お、思ってませんよ!??
今こうしても横から近くで見る彼女の顔はとても綺麗で、周りから『かっこいい』やら『かわいい』やら『綺麗』と言われるのにも納得がいく。
あ、私の視線に気づいた。
ニコリと微笑んでくる。
な、なんなんですか、まったく。
べ、べつにこれくらいで、顔が熱いなぁ、とか思ってませんから!
だけど私は彼女と目を合わせているのが我慢出来なくて、逸らした。
すると、
目を逸らした先、帰り道のT字路の曲がり道に私たちを睨みつけてくる同じ学校の制服を着た生徒たちが待ち伏せをしていた。
私たちを睨みつけてるということは、私か、姫路さんに用があるということ?
それに、あの鋭い目付き。
絶対に危ない予感がする。
私は姫路さんに言った。
「姫路さん、少し遠回りになりますが道を変えませんか?」
本当はこの道が、近くの大体何でも揃ってるショッピングモールに行くのに一番近道なんだけれど。
近道をして危ない目にあっては、笑えない。
私がそう提案すると、彼女は何故か焦ったように言ってきた。
「え、え!?いや、でもこの道が一番速く行けるし、さ。………大丈夫だよ、きっと。何があっても飛鳥ちゃんのことは私が守るから」
そんな彼女の目には、しっかりとした自信で満ち溢れていた。
どこか腑に落ちない気もするけれど、私は頷いてそのままの道を選んだ。
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