第12話ついに透明になったぞ!

「あの、お嬢様、申し訳ありませんがわたくし、そこの集落の老人に命を救われまして、い、いや、命を救われたまではいかないかな。そうじゃなくて服を恵んで、い、いや貰ってないかな。ただの藁を自分でかき集めただけで……えーっとその、なんだっけ。とにかく、何かこう、話し相手になったりしてもらったので、あの、だからその老人に何というか、情けをかけて頂きたいのです」


「回りくどい奴め。つまり、お前はその老人を助けたいのか?」

「は、はい、できればそうしたく思っております」

「ならばそうすればいい」

「へっ?そ、それだけですか?あの、他に何か……」

「無い。私の望みは魔女を倒すことだ。それ以外のことには一切興味は無い」


彼女は胡坐をかいたたまま頬杖をつくと、まるで試すような目で私を見つめる。

だがそんなことよりもカリエンテの豊満な谷間に視線がいく。ああ、こんな時に私はなんて不謹慎なのだ。


私は彼女のことを何も知らない。

カリエンテ・ゼフィランサスという名前、父の仇である魔女を追い旅を続けているということ、そして剣の達人だということぐらいしかわからない。


髪は燃えるように赤く、相貌凛々しく、その声は蒼天に轟く雷鳴の如く響き渡り、剣を握ればその姿は一陣の風となり、瞬く間に悪鬼羅刹を切り伏せる。


しかし一度戦いが終われば、そこに残るのは高潔さを漂わせる麗しき乙女の姿だ。たまに見せる愁いを含んだ笑顔は、見る者の心を掴んで離さない。


おお、私はカリエンテのことを何も知らなすぎる。


いやーそれにしてもなんとも見事なスタイルだな。

温泉だの紅葉だのよりこっちを眺める方が絶対いい!


おっぱいがでかいお尻もでかい、筋肉質な太腿もくびれた腰周りも、そしてちょびっとぽってりしたお腹も実に素晴らしい。

一体どうしたら彼女の心を動かすことが出来ると言うのだ。

おい、左脳よ、テコの原理かなんかでなんとかしてくれ!


「おい、アズマーキラよ。先程から何やら胸やら尻やらを見ておるようだが、一体何を考えている?」

「ははーっ、大変申し訳ございません!ついついあらぬ所を眺めておりました!無礼千万、お怒りはごもっともです!」

「ふん、どうせろくでもないことを考えていのだろう。まあいい、お前は老人を助けたいようだが、では私の言葉に対してどう応えるつもりか」


「はい、えーと、あ、あの、カリエンテ様、えっと、先ほどのお話では魔物を追えば、魔女の元へ辿り着けるとのことでしたが……あの何というか、今回も退治のついでにというか、お助け願えないでしょうか?」


「ははははっ!ちゃんと覚えておったか!偉いぞアズマーキラよ!偉い、偉いぞ!うわっははははは!!」


「い、いえ、それほどでも……」

「ふふふ、謙遜するな。お前の頭脳を褒め称えてやろう、では褒美としてお前の希望を叶えてやるとしよう」

「はっ、はい!ありがとうございます!」


「しかしお前は弱い。そのままでは私の足手まといになるだけであろう」

「ははーっ、その通りでございます。老いぼれのわたくしは戦う術を持ちませぬゆえ。一刻も早く安全な場所に避難し、断腸の思いで昼寝でもしておくことします」

「馬鹿者。お前はその頭脳で貢献すればよい。そうだな、お前には村人の保護を任せよう」


「え?」

「不服なのか?」

「いえ、滅相もございません。えっ、あれ?えっ、えっ、どうやればよろしいのでしょう?」


「簡単なことだ。お前は村の者達を集めて避難させろ。そして、もしもの時はお前が皆を守るのだ」

「は、はい。かしこまりました。それならば何とかなる……いやなるか?どうだろう?なるかな」

「これは命令だ、やれ。それからもう一つ、お前の持っている透明化の薬とやらを一つ寄こせ。一度試してみたい」


「あ、はい。こちらです」


私は黒箱の中の『トウメイン・ピエニー』の小瓶から錠剤を取り出すと、カリエンテに手渡す。


「ほほう、これがお前の言っていた魔道具か。どれ、早速使ってみるか……」


彼女はそう言うと躊躇なく錠剤を噛み砕き、水と一緒に飲み干した。


すると次の瞬間、彼女の肌が淡く光ったかと思うと、まるで煙のように姿が消えてしまった。まったく見えない。我ながら凄まじい効果だ。

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