リグ=ヴェーダ

 リグ=ヴェーダは人間が考えて作り出したものではなく、聖仙が霊感の力で感得した啓示と見なされる天啓文学で、ヒンドゥー教の中では今でも名目上、権威が認められています。

まず、解説を引用します。



 ヴェーダ(神聖な「知識」)はB.C.1500年頃、インド西北部に侵入したアーリア人の宗教(バラモン教)の根本聖典である。今日のインドのヒンドゥー教は、長いあいだのさまざまな曲折を経て、このバラモン教が変化した結果と考えられる。ヴェーダは、インド・アーリア文化の初頭を飾り、ヒンドゥー教系の宗教・哲学の源泉をなしている。ヴェーダは本質的に宗教文献であり、当初から祭祀との関連において発達した。



 そして最古のヴェーダのリグ=ヴェーダの引用なのですが、私は注釈が後に来るのが苦手で、特に巻末に注釈があるような本は半数以上挫折しています。最近では割り切って巻末に注釈がある本は注釈を無視して読まなかったりします。でも同じページに注釈があれば参考にしながら読んでいます。しかし一番良いのは本文がはじまる前に注釈を置いてくれれば前もって注意点がわかるので助かります。

 ということで、まず、注釈から引用します。



 「インドラ」

 インドラはリグ=ヴェーダにでてくる神格のうちで、もっとも鮮明に擬人化された英雄神で、それに関する部分は全讃歌の4分の1を占めている。インドラは雷霆神としての様相が最も顕著で、神酒ソーマを痛飲し、ヴァジュラ(金剛杵=電撃)をふるって、悪魔を退治し、人界に待望の水と光明とをもたらす。



 「ダーサ」

 ダーサとは、インド・アーリア人がインドに侵入したときに居た先住民をさす。彼らは黒色の皮膚をもち、アーリア人と言語・信仰を異にしており、アーリア人はこれら先住民を駆逐・征服した。リグ=ヴェーダにおいて、彼らは悪魔視され、その闘争は神話化されている。



 それではリグ=ヴェーダ本文の一部引用です。



 インドラの歌

  その2(2・12)

1 第一人者と生まれいで、賢き神は意力もて、なべての神に勝れたり。力に満ちし御稜威には、怖れ伏したり天も地も。その神の名はインドラ天。


2 震う大地をうち固め、揺らぐ山々とり静め、天も安けく支えたり。虚空の果てを測りては、その拡がりをいや増しつ。その神の名はインドラ天。


3 悪竜アヒ(ヴリトラ)を殺しては、七河の流れ滔々と、ヴァラ(悪魔の名)の囲みを破りては、群れなす牛を奪還す。雲まに火(雷光)を生む戦の猛者。その神の名はインドラ天。


4 神の力にものみな揺らぎ、ダーサのやから(アーリア人の敵、悪魔)影ひそむ。異部族びとの蓄えを 奪い取りぬ、勝ち誇る 賭博の巧者をさながらに。その神の名はインドラ天。


5 (中略)


6 貧しき者を病む者を、悩みにあえぐバラモンを、励まし恵み、石据えて、搾るソーマ酒の香を、嘉すや唇も美しき、その神の名はインドラ天。


7、8,9 (中略)


10 罪に汚れし諸人は、いつしか彼が弓の的。傲れる者は神の敵。アーリア族に仇をなす、ダスユ(ダーサ)もあわれ彼の犠牲。その神の名はインドラ天。


11 12 13 (中略)


14 神に捧ぐる神酒・供物、神を讃うる歌声に、祭祀を励む人の友。神呪の功力、神酒の酔い、供物に力増すという、その神の名はインドラ天。



 一部引用しました。インドラ神を讃えていますね。先住民の蓄えを奪うのを誇らしげに歌っている! アーリア人のインド侵攻の様子なのでしょうね。

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