What a Wonderful World
死ぬ、ということはおそらく、
痛い、ということ
でもそんな想像力は働かない
そこを考えると話が進まなくなるから
もしも恐怖政治が始まったとしても
僕らはこれまでと同じように普通に日々を過ごすことだろう
ただしごく一部の人たちにとっては地獄だ
でもたぶん僕らにはその人たちのことは見えないから
僕らは誰かが理不尽な目に遭っていても
それに全く気づかされることなく日々を過ごす
なんて素晴らしい世界なんだろう、と笑い合いながら
なんて残酷な世界なんだろう
彼と一緒にいれば
彼女と“距離を置く”ということをしないで済む
粉々に叩き潰せる 消せる
そしたら彼女の人格や生活や未来など考えずに済む
彼を支持していれば陰口悪口言いたい放題
自分にとっての“嫌なもの”を拒絶できる
共存なんてとんでもない 全ては“きれい”な世界のため
要はこれまで続けてきたことをそのまま続けられる
楽なんだ
きれいな世界がいい
きれいなもの“だけ”が在る世界をどうか
この道しかない、と言うなら
なおさら話をよく聞いて
いろんな意見を言うべきなんじゃないの
あなたの言ってることを聞いてると
まるで崖の先を目指しているみたい
仕方がない、と諦めているみたい
多様性は多様性を毀損するものを認めない
自由とは自分で責任を負うこと
でもそういうのって難しいし面倒臭いもん
だからこのままがいいんだ
貧すれば鈍する
世の中金だもの
自分の生活を最優先して何が悪い
どうせ死ぬなら今より後の方がいい
僕ら自身が恐怖政治を行なっている
弱者を痛めつけ異質を排除している
彼こそがそんな世界の代表だ
支持されないわけがない
そうだ彼こそ排外主義の我々が待ち望んだ真の王なのだ
なんて素晴らしい世界だろう
醜さ愚かさを見る者は排除される
そうさ素晴らしい世界に決まってる
だって汚い現実を認めないんだから
だからこのままで
このままの僕らで
このまま自画自賛を繰り返し続けよう
やがてその先で
世界の敵に堕ちたとしても
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