第16夜
ウチは、自分の名前が大嫌いだった。
ありふれた名前なんだけど、名前負けしているとずっと思っていた。
だからこそ、大好きな祖母にちゃんと意味付けをしてもらったのが嬉しかった。
故に。
同性に呼ばれるのはまだ大丈夫なのだが、異性に呼ばれるのは抵抗がある。
大好きで大事な人に呼ばれるのは好き。
むしろ沢山呼んで欲しい、とすら思う。
ただ、それ以外は嫌だなぁと思う。
苗字で呼んで貰えます?って言いたい。
職場のおばちゃん達、リア友(は、女性しかいない)ので平気。
虫唾が走るくらいイラッとするのは、
呼び捨て と お前 呼び。
雑に扱われるのが死ぬほど嫌いなので、それされたら即シャットアウト認定。
名前を呼んでもらうって、ウチにはそれくらい特別な事。
…あんまり言わないけど。
名前は、ヒトが1番初めに貰う呪いだと聞いた事がある。
確かに、親の「思い(願い)」の込められた呪い。
そして、その人を認知する最初のモノ。
とあるアニメで見たのを思い出す。
名前を忘れられて、存在すらも忘れられる話。
あの感覚は、ウチにも覚えがある。
「無かったこと」「ない存在」になるのは、結構しんどい。
ウチが自己価値を見出せないのはその経験もあるんだろう。
小さい頃、固有名詞は「お姉ちゃん」。
中学生でようやく、「○○ちゃん」。
親からは、ずっと「お姉ちゃん」。
名前を呼ばれるのは、怒声と罵声を浴びる時。
だから、呼び捨ては嫌い。
(ウチを呼び捨てで呼んだやつ4人ともクズ男だったしな)
だから、自分の大事な人たちは名前で呼ぼうと決めている。
相手が、それを許可してくれたらだけど。
許可なしには呼びません。
嫌かも知れないし。
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