ドラマ『天才マー君, イキる!!』
比呂 天
【 エピソードゼロ プロローグ 】
【 ① 】
前が赤 つばが黒い 白いキャップを目深にかぶり黒いマスクの 全身白ずくめの青年(らしき)が 交差点の中央で、突然立ち止まり 両腕を広げ 天を見上げて 大きな声(可聴域を超えた周波数)を出した。
青年「うぁぁぁーーー(モスキート音 キィーーーン)ーーー」
次の瞬間、その場に居た数百人が一斉に倒れた。大型広告ビジョンのディスプレイも信号も同時に故障。交差点に面した建物だけが謎の停電をした。
【 ② 】 警視庁 警備部 災害対策課
職員「澁谷スクランブル交差点の監視カメラが繋がりません」
係長「原因は?」
職員「わかりません」
係長「直前の映像を見せろ」
職員「はい」
係長「なんだ、これは?」
災害対策課は一瞬でパニックになった。映像を見て、部署の全員が状況を確認するための作業を始める。関係部署に電話連絡する者、状況確認の為に部外へ出る者など、災害対策課は蜂の巣を突付いたような慌ただしさに包まれた。
そして、この事件には極めて厳しい報道規制が掛かった。あらゆるマスコミは、この事を一切 報道しない。
【 ③ 】 警視庁『 澁谷スクランブル交差点 無差別テロ事件 』対策本部
本部長「本件は極秘による案件として、無差別テロ事件に指定された。全庁 挙げて 事件解決に全力を尽くす」
全捜査員「はい!!」
【 ④ 】
大楽 「今、我々に何が出来るのか? 激動の時代 かつてない変化を前に、この国を どう創っていくべきか? 皆さんと一緒に考えて いきましょう」
運動員「そうだ、そうだ」「いっしょに頑張りましょう」「頑張りましょう!!」
宗教法人あま照ラスのスタッフが運動員としてサポートしている。
通行人「相変わらず、ピーマンだな〜」「父親が元党首ってだけで、中身が無いよね」「そう、そう」
小声でつぶやきながら通り過ぎて行く
すこし離れた場所から、原田剛(29)が遠巻きに見ている。彼は、メッセージ パフォーマンス グループ Ro'clockBのリーダー MCクレインとして活動している。 前が赤 つばが黒い 白い キャップをかぶっている。そのキャップの横には 66B のロゴが入っている。
【 ⑤ 】ニュース速報『大楽洋太郎 議員 緊急搬送』
caster「大変なニュースが飛び込んできました。北山さんも心配ですね」
北山 「はい…」
【 ⑥ 】鶴海 警察署 取調室
宗教法人 あま照ラス 鶴海教室 職員 木下さくら(29) 取調べ
取調官「大楽議員は、あなたが淹れた珈琲を飲んだ直後に苦しみ出しているんですよ」
さくら「そんなこと言われれも…」
刑事A 「お前が大楽議員と付き合っていたことは わかっているんだ」
刑事B 「なのに、富美TVの女子アナの北山萌々と 婚約発表した」
取調官「動機は充分なんです」
さくら「私は本当に何もしていません(泣)」
刑事A 「いい加減、吐いたらどうなんだ!」
バン!! 机を叩く
【 ⑦ 】TV番組 ワイドショー司会者 出演タレント達
『大楽洋太郎 議員 ポイ捨て愛、乗り換え婚か?』
司会者「先日、緊急搬送されて入院中の明世党 議員 大楽洋太郎氏のスキャンダルが週刊誌で報じられたワケですが」
タレA 「と言っても噂レベルぢゃないんですか?」
タレB 「ところが、緊急搬送の理由がそのスキャンダル絡みだという情報も」
タレA 「またまた〜(笑)。いい加減なコトばっか言ってる〜」
司会者「しっかりした情報の続報が待たれるということで…」
【 ⑧ 】横濱 加瀬地区 (旧
広瀬まさき(21) と 加瀬屋女将 談笑
女将 「マーくん、久しぶり〜。小学生の頃は毎日のように焼きそば 食べに来てくれてたんやけど〜」
まさき「申し訳ない。帝凰大学 付属中学に進学してからは、帰りが遅くなっちゃって」
女将 「村役場(※1)前バス停から駅まで、バス通学やもんね」
まさき「母 (広瀬よしこ) も
女将 「よしこさん、いつも帰りが遅いよね」
まさき「だから食事は、学食か駅前商店街で済ましちゃう」
まさき「ところで同級の はるみちゃん、あまテラ夢見保育園で保育士やってるって」
女将 「免許取れる短大行って、今年から。もうすぐ帰ってくるよ」
まさき「ちなみに この辺り、全然変わらないね」
女将 「夢見ヶ丘 緑地公園 周辺の 加瀬地区は 市街化調整区域なのよ。大規模マンションは建てられない」
まさき「日和小学校 裏 の広瀬医院も、閉院後そのままだし」
内田はるみ 帰宅
はるみ「ただいま~」
まさき「よぉ! 」
はるみ「やだぁ、マーくん!」
まさき「久しぶり」
はるみ「あ! そうだ。ねぇ、ちょっと聞いてよ」
まさき「何、何?」
はるみ「(小声で) あのさぁ、大楽洋太郎のスキャンダル、知ってる?」
まさき「 うん。もちろん」
はるみ「あま照ラス 鶴海教室の 木下さくら さんってお姉さん、昔から私の知り合いで〜」
まさき「へぇ、そうなんだ」
はるみ「で、さくらさん 洋太郎の緊急搬送の件で警察に取り調べされてて」
まさき「え?」
はるみ「洋太郎が具合悪くなったの さくらさんのせいだって」
まさき「は?」
はるみ「動機が有る! 恨みだろ! 毒入れた! って」
まさき「国家権力の言いがかりだ」
はるみ「結局、証拠不充分で釈放なんだけど」
まさき「ホッとした」
はるみ「でも、今度 あま照ラス 新川﨑·夢見会館に 講演で洋太郎が来るの」
まさき「うん」
はるみ「で、お手伝いに行かなきゃいけなくて。実際、他のスタッフさん達も嫌々で」
まさき「そうだろうね」
はるみ「そこで、お願い🙏なんだけど 聴講者が全然居ないの」
まさき「あーー はい はい。サクラね、いいよ。じゃ 誰か 連れて行くよ、さくらさんの為にも(ナンチャッテ)」
はるみ「ありがとう😚」
(※1) 村役場: 旧 日和村の役所、現在の名称は 加瀬分所
(※2) 帝凰大学 医科学研究所: 帝都 白銀台にある 遺伝子解析で世界的に有名な研究所(通称イカ研)
【 ⑨ 】あま照ラス 新川﨑·夢見会館 大楽洋太郎 議員 講演会
聴講者席 ガラガラ スタッフが スタッフジャンパー着たまま着席して 賑やかし
広瀬まさき と 帝大の後輩 紀藤栄一(20)とともに、会場の端の方に着席
内田はるみ スタッフジャンパーを着てまさき達の方にやってくる
はるみ「マーくん、ありがとね」
まさき 片手を軽く上げて挨拶
大楽洋太郎 議員 登壇して 講演
洋太郎「大楽洋太郎です」「本日は△△△」「□□□□□□□」「○○○○○○○」
まさき「(中身が無いから、何言ってるか わからない)」(心の声)
紀藤 「(冷やかしのつもりで来たけど、流石に酷い)」
賑やかしのスタッフも 苦悶の表情
まさき たまらず「ちょっと、トイレに…(極小声)」 コソコソと退席
途中、まさきは 会場の後ろの端に 隠れる様に立っている女性を見つける。その憎悪に満ちた表情で壇上の人物を睨みつける様子から、その女性が 山下さくら であると理解する。
会場全体が 異様な負の感情に包まれている状態を体感した まさきは「これなら出来るかもしれない」と思った。
まさきの顔が 見る見る険しくなり、まるで別人(のよう)に 変貌を遂げる。全身に力を漲らせて、彼は目を閉じた。
次の瞬間、大楽洋太郎議員が苦しみ始める。息が出来ず もがき苦しむと、胸を押さえながら その場に倒れた。
彼は大きく息を吐き脱力すると、いつもの穏やかな表情になり会場に戻る。
会場は大騒ぎで、まさきを見つけた紀藤が駆け寄る。
まさき「え?! どうしたの??」
紀藤 「大変です!! 大楽議員が倒れました」
スタッフも壇上に集まり「救急車!」「早く!!」
講演中止のアナウンスが流され、聴講者は退出する。
まさき「今日は、これでお開きだね」
紀藤 「仕方がないです」
まさき「なんかゴメンね」
紀藤 「いえいえ」
【 ⑩ 】 警視庁『澁谷スクランブル交差点 無差別テロ事件』対策本部
本部長「澁スク·テロ事件だけでなく大楽洋太郎議員 搬送事案についても本件同様の事件性が疑がわれるとのことで、公安部より捜査協力依頼が来ている。それぞれの関連性を念頭に置いて、充分に注意深く捜査し 早急に事件解決を図って欲しい 」
全捜査員「はい!!」
ドラマ『天才マー君, イキる!!』 比呂 天 @hirohsgw
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