ドラマ『天才マー君, イキる!!』(@放送サークル:キャンパスライフ)

比呂 天

第1話

ドラマ『天才マー君、 イキる‼ 』

(就活 教育実習 で 教育問題に立ち向かう)


深い繁みの獣道 果て無く険しい 絶望の道程じんせい


(白頭掻けば更に短く すべシンえざらんと欲す) 広瀬せいじ



【 ① 】旧 川﨑市立 日和ひより小学校(回想)11年前 〈 教室·算数 授業中 〉


小4 まさき(当時 10歳)、新人女教師 山口葉月(23歳)


まさき、窓際 最後席で立て肘をつき掌に顎乗せ グラウンド向こうの百葉箱を ぼ~っと見つめ(実は凝視し)ている


山口 「円の面積の公式は 半径×半径×円周率 です。もう覚えましたか?」

学童 「は〜い」

山口 「では、その円周率は いくつでしたか?」「わかる ひと〜」

学童 「はい」「は〜い」


ほとんどの学童が手を上げる中、まさきはその問い掛けが聞こえなかったかのように外を見つめたまま。


山口 「広瀬まさきくん、聞こえてますか?」


あまりにつまらない授業だったので、わざとコレみよがしに無視のポーズをとって外を見ていたのだが、その挑発的とも取れる物言いにイラついた まさきは「shit! shut up, bitch」と心の中でつぶやくとスッと立ち上がりおもむろに(完璧な)円周率を(正確に)唱え始めた。


まさき「3.1415…(100桁)」


山口葉月は 直ぐに手元の資料の円周率(100桁)と照らし合わせ その演唱が完璧で正確なことに驚き、恐怖と困惑とが混ざりあった表情をしたまま 強張こわばって立ち尽くしていると


まさき「お腹が痛いので保健室に行ってもいいですか」


と言って、そのまま教室から出ていった。そして その廊下で扉の覗き窓から見える新人女教師を一瞬この世の者とは思えない般若の形相で睨みつけると「sync’ shake」と呟いて目を閉じた。


山口 「うっ、頭が痛い」


葉月は意識朦朧で教壇にしゃがみこむと「キャー」と女児学童が悲鳴を上げる。教室はパニックになり「保健委員!」と学級委員長が叫べば 他の誰かは「職員室から他の先生呼んでくる」とか、バタバタした混乱状態に。程なく自習になった。



【 ② 】横濱 相北区 帝凰大学 日和キャンパス 北部食堂 喫茶コーナー イブニング ティータイム 月曜 放課後 


広瀬まさき(理学部 数学科4年生)

紀藤 栄一(法学部 政治学科3年生)


珈琲(T.O. スペシャル ブレンド)を飲みながら


紀藤 「ところで先輩、教育実習いつからですか?」

まさき「来週からだけど。でもまぁ実習する母校の高校は、日和キャンパス内の大学記念講堂 横に(昔から)るワケで。べつに普段の通学と何も変わらないね」


紀藤 「ところが先輩が通うべき理学部は 正確に言うと矢上キャンパスで、蝮谷まむしだに 向こうの嵐が丘グラウンド(アメフト練習·試合用)の さらに向こうに有るんですよ。日頃ひごろ日和ひより 学生会館 談話室で日永ひながダベっているのが異常なんですが…」


まさき「出た! 紀藤くん御得意のロジックハラスメント‼ しかも今のはモラハラとのコンボ(連携)w」「でも単位はチャンと取れてるし」


紀藤 「それがダメなんですよ。帝凰高校で伝説なんですから。(中等)普通部から高校卒業まで数学テスト全て満点の地球外生命体だって」

まさき「E.T.って、それこそ差別だよ。でも正解が存在する問題で解けないものは無いから、ね」

紀藤 「はい?(苦笑い)」



【 ③ 】まさき 紀藤 学生会館 談話室に移動して 


紀藤 「ところで、先輩の能力の本質について質問してもいいですか?」

まさき「なに?改まっちゃって(笑)」

紀藤 「いやw 普段の先輩を見ていると、伝説の天才感を全く感じられないもので…」

まさき「(食い気味に)失礼な!w」「でも実際『ゾーン』に入れなきゃ能力的には凡人以下であると自覚はしてるけど…」


紀藤 「で、その『ゾーン』っていうのは どんな感じなんですか?」


いつも冷静な紀藤には珍しく興味津々に目を輝かせて聞いてきた。


まさき「基本、リラックスのまま集中して脳のニューロン回路 全シナプスをON にする感じ」

紀藤 「は?」

まさき「脳宇宙の全開放だよ」

紀藤 「…」

まさき「すると脳の記憶領域にある全データに ダイレクト アクセス 出来る」


紀藤は最早もはや、無の表情。


まさき「更に『ディープ ゾーン』に入れられれば、脳内スピードをアクセラレート(加速)できるよ」

紀藤 「え? どういうことですか?」


まさき「脳内のスピードを上げて通常世界の時間を相対的にスローにする。野球選手の『ボールの縫目ぬいめが見える』とかいう状態」

紀藤 「あぁ、はい」


まさき「でも、脳宇宙の開放度合いは体調によるんだ。そして、短時間しか無理。典型的な短距離走」「しかし、暗記勉強は努力の継続が必要だから マラソンなんだよね」


紀藤 「はぁ~」


まさき「体調が悪いと 全データにアクセス出来ないから、全ては思い出せないし」

紀藤 「で?」

まさき「暗記モノのテストが苦手」

紀藤 「あぁ、安定して高得点が出来ないんですね」

まさき「でも数学は覚えなきゃいけないコトがミニマムなので」

紀藤 「公式くらいですから」


まさき「だから、脳内スピード アクセラレーションに集中出来る」「そして、仮説と検証の繰り返しを、超高速で繰り返す」


他人ひとが一瞬と感じている瞬間に、ゆっくりしっかり考えている。ひらめき とは、実は 高速思考の繰り返しの中で正解に辿り着く 結果 なんだ。偶然とか運とかでは無い。必然」


「そして、無限に思考を繰り返す事が出来れば 必ず正解に辿り着く。正解が存在するならば」


「でも注意しなければいけないのは、正解が無い時」「無限ループにおちいる」「すると、脳内回路がオーバーヒートで短絡ショートして ブラックアウトからのシステムダウンになる」


「不毛な演算行為は無駄なだけでなく危険だね。体調システム不良ダウンになるから」「コンピューターOSにおいてゼロで割り算することが禁止されているのと同じ理論だね」


と まさきに矢継ぎ早に早口で まくし立てられて、流石さすがの秀才 紀藤栄一も話についていくだけで 疲労 困憊こんぱい


紀藤 「一旦、めてもらっていいですか?」

たまらず弱音をらす


紀藤 「ちなみに、無限ループは どうゆう場合に?」


まさき「例えば、飲み会に無理矢理誘い出された売れない女性タレントを、無言の圧力で性加害したのに『やってない』と ほざく芸能界の権力者とか」


「利権まみれで裏金を貯め込んでいたのがバレたにもかかわらず『何が悪い?』と開き直る悪徳政治家とか」


「そんな取り除かれるべき存在を、如何いかに懲らしめるのか」

「その方法をどんなに考えても、合法な手段が全く思いつかない。という場合が、まさに ゼロで割り算 だね」


紀藤 「具体的に、どうなるんですか?」

まさき「もう‼キィーって なって具合悪くなるから、考えるのをめる」

紀藤 「あぁ なるほど」


そして紀藤は聴くことをめた。



継続努力が出来る才能は羨ましい。自分は出来ない。尊敬する。


天才ではない。得手不得手。クイックレスポンスが得意というだけ。



【 ④ 】帝凰高校 第2応接室 数学科主任 長谷部 頼実よりざね 広瀬まさき と面談


長谷部「広瀬、久しぶりだな」

まさき「はい、お久しぶりです」


長谷部「ところで教員採用試験は受けるのか?」

まさき「えぇ どこの試験を受けるか は 迷ってますが」


長谷部「帝凰高校だと来年の数学科 教員枠の空きが無いし」

まさき「でも公立で どこでもやります とは言いにくいです」

長谷部「まぁ 広瀬なら数学者になれる能力ちからが有るからな」


まさき「あと、他に いろいろな分野にも興味があって… 趣味でコンピュータ・プログラミングなども やってたりして。その関係でAI関連の研究所とか」


長谷部「そうか。まぁ自分の好きなことを仕事に出来ることが一番だからな」

まさき「はい」



【 ⑤ 】帝凰高校 1年A組 教室 数学 授業


担任 長谷部 参観 広瀬まさき


リー上嶺シャンレイ(在日華僑)、窓際 最後席で立て肘をつき掌に顎乗せ グラウンドの方を ぼ~っと見つめている


長谷部「おい、リー。聞いてるか?」

李  「是的シィーダ


敢えて中国語で(反抗的に)返事をする李。まさきは過去の自分を見ているかのような錯覚を感じ、苦笑を噛み殺した。



【つづく】

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