第16話 真のフォームになる悪役令息
ーside ジークハルトー
「平和なのだー」
『平和なのです』
ズンドラゴンに乗って町まで歩いていく。
位置的にはロンバルについているはずだが、辺りには何もない。
一応、遠くの方には町らしき何かが見える。
ただ、領地はなるべく色々見て回りたいので、森と川の近くで降りることにした。
「なーんもないな。自然豊かだ。森の中には強そうな魔物も結構いるな」
「あんなの我と主人にかかれば敵じゃないのだー。実際、我と主人の圧倒的な力に怯えて距離を窺って静かにしているのだー」
「俺を含めないでくれよ。ドラゴンでもあるまいし、俺を怖がる事はないだろう」
『あるのです。主人、主人じゃなかったらかなり怖い圧を放っているのです』
「まじか」
『まじなのです』
ちょっとショックである。人間の友人さえアリスたち以外碌にまともにできた覚えがない。
魔物にくらい俺に怯えずに一緒に戦うのを楽しませてくれたっていいじゃないか!?
『そうそれ。その圧特に怖いのです』
「我ですらその戦闘狂のオーラには一瞬ゾクッとしたのだー。一般の魔物には到底耐えられる威圧ではないのだー」
そうなのか。ならこれから、殺気を抑えて冷静に対処する事も必要なのかもしれない。
魔物にビビられて出てこないのは、素材集めとかに苦労したりするかもしれないからな。俺様はなんだかなんだで、クラフトの授業は好きなのだ。
「ふむ。まあビビってくれているのはありがたい。それだけ戦闘力が落ちているということでもあるからな。そっちから来ないのであれば、こっちからいくまでだ」
「そういうところなのだ。追い詰められているやつをなんの感情もなくさらに淡々と追い詰める。そういうところが本当にノンデリなのだ」
「うるさい」
ズンドラゴンの事を無視してウッキウキで魔物のところまで行く。魔物は結構な速さで逃げているみたいだ。
「まてまてー逃げるなよ」
地獄の鬼ごっこの始まりである。
このまま普通にやってたら逃げられるだろう。地の利はあちらにある。なので加速する。逃げれば、余計に追われることをご存知ない?それくらい魔研ゼミで教わっただろう。
『主人楽しそうなのです』
「あれが、主人の本来の姿バトルジャンキーフォームなのだー」
『なんと、真の姿はあちらだったのです?普段のポンコツインキャモードは擬態だったのです?』
「おいこら」
ど直球すぎるローラの発言に思わず魔物から目を逸らす。俺が真っ当に戦おうとした時に、そんなこと思ってたのかよ今まで。
「そうなのだー普段の主人は別にインキャでも悪人でもなくただの変人なのだー」
「なんと、納得です!今まで疑問に思っていた全ての辻褄が合ったのです!QEDなのです!」
「ちょっとまて」
え?それ俺が変人ってことの証明になってない? 俺がその証明に意義ありと待ったをかけようとする。
それはそれとして、完全にこの辺にいた魔物はこの場から見失ってしまったな。仕方ない引き返すか。
その時、前方にいた魔物が一斉に倒れた。
それも、全部か麻痺か怯みによって隙をつかれた形で倒れていた。倒した人物はたいして強くないが嫌な予感がする。
「まひるみ!最強!」
聞き覚えのある声が前方から聞こえてくる。とても嫌は大当たり。俺が最も苦手なタイプである光属性の人物がこんなところにいたんだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます