詩集:試作

柚月 智詩

くらげ

夏の浜辺に くらげがひとつ

くたびれぼうずで うちあげられた

それをそうっと すくいあげて

返す波へと もどしてやった


くらげは ついぞ見えなくなった

海にたゆたい 海へと消えた

お前は今 どうしているか

お前は今 生きているのか


わたしはお前を 見ることができぬ

透けるからだは 海へと溶けゆく

お前はわたしを 見ることができぬ

丸いからだは 眼(まなこ)を持たぬ


見えぬものは そこにあるのか

あるものは そこに見えるのか

見えぬものは そこに生きているのか

生きているものは そこに見えるのか


くらげは ついぞ見えなくなった

けれどもお前は 確かに生きる

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