第6話 ちょっとしたピンチ

 皆さんは、日常の中でピンチに陥った事はあるだろうか?財布忘れた上にスイカの残高が雀の涙ほどしか無かったりとか、携帯の充電がない時に迷子になったりとか各々あるかもしれない。


 え?そういうお前には俺にはあるのかって?勿論あるさ。例えば、


「今とか・・・」


「何か言った?」


「いや!何も!?」


 そう言うエリの背後で流れるセクシーな映像。ことの始まりはつい30分前に遡る。


 ・・・・・・


「今日は私が掃除しようと思います!」


 その随分と急な提案に、俺は思わずギョッとしてしまった。だが、すぐに冷静さを取り戻して尋ねる。


「随分と急だな、何か理由でもあるのか?」


「そ、それは・・・えっと、その・・・心変わりと言いますか、役に立ちたいと言いますか」


 何とまあ、随分と歯切れの悪い・・・


「まあ、何でもいいさ。そしたら俺は買い物行ってくるからその間頼むわ」


「任せて!」


 ・・・・・・


「さてと、トシヤも去ったし・・・」


「できる女になるための第一歩、開始っ!」


 トシヤに見合った女になるために色々頑張りたかったけど、アイツ、家のこと何でもこなしちゃうから普段やれることないんだよなぁ。


 でも、きっとアイツも訳あって色々やってくれてるのは分かってるんだけど・・・


「と、とりあえずリビングからやっていきますか!」


 20分後ー


「よしっ!大体終わった!後は・・・トシヤの部屋ね」


 そして私はトシヤの部屋の扉に手をかける。べっ、別に合法的にトシヤくんの部屋に入れてラッキー♪とかは思って無いですよ?ホントデスヨ?


「お、お邪魔しまーす・・・何か、あまりにも無機質な部屋だな。本当に人が住んでるの?」


 この部屋、掃除する理由あるかな?でもまあとりあえずやってみますか。


 ん?パソコンの電源が付いてる。ちょっと、覗いてみよっかな・・・


「こっ、これは・・・!?」


 エッチな動画だーーーーーー!?


 これは、ちょっとモヤっとしちゃう・・・見るならせめて私みたいな人見なさいよ!もっとこう、スリムな・・・


「トシヤ、こんな感じの子が好きなのかな?」


 モミッ


 何とまあ、揉み応えのない胸だ・・・何で私の胸はこんなにも貧相なんだ。


 でもよく言うでしょ!?貧乳は希少価値だって!ステータスだって!!


「でも、トレンドは巨乳ですよね・・・」


 こうなればこの映像を見て、せめていざという時の技術だけでも・・・!?


「お前、人の部屋で何見てんだ?」


 その声のする方を振り向く。するとそこにはトシヤがいた。


「トシヤっ!?な、何でここにいるの!?」


「何でって、俺が俺の部屋に向かって何が悪いんだ?」


「えっと、あのその、これはっ、うぅ〜」


「そ・・・」


「そ?」


「そこになおれーーーーーー!!!!?」


 完全にテンパってしまった私はそう叫んだ。今になって振り返ると逆ギレした上に責任転嫁って、ヤバ女すぎた・・・


「ちょっ、エリ!?どうしたんだよ急に!?」


「こんなもの流しっぱなしにしてるくせに良くそんな事言うよ!」


「ナッ・・・!?」


 ・・・・・・


 と、言うわけでここに至る訳だ・・・


「で?反省の言葉はまだかな?」


「すいませんでした・・・以後このようなことがないよう精進いたします・・・」


「そっ、分かった・・・」


 な、何とか助かったのか?


「と、ところでトシヤ・・・」


「どうした?まだ何かあるのか?」


 俺がそう尋ねると、エリは何やら恥ずかしそうに頬を赤らめながら俺に尋ね返す。


「ト、トシヤは、わっ私のおっぱい・・・どう思う?」


 その突飛な質問に、俺の脳は一瞬活動を辞めてしまった。そしてすぐにその遅れを取り戻すように高速で回り始める。


 どうしたんだ急にアイツ!?掃除の途中に頭でもあったのか!?もし真面目に言ってたとしたらどう答えるのが正解だ!?と、とりあえず何か言わねば!!


「そ、そうだな・・・どうも何も、ジッと見たことないから何とも・・・」


 さあっ!どう出る!?


「そっか、じゃあ・・・」


 そう言いながらエリはおもむろに上に着ていたTシャツを脱ぎ始める。そして下着も脱ぎ上半身裸の状態でコチラに背を向けながら言った。


「触って、確かめてよ・・・」

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