猟奇犯罪特別捜査係 松下

花音小坂(旧ペンネーム はな)

紹介文


 新人刑事の相沢凪は、警視庁捜査一課に突然異動させられる。そして、異動初日に、松下亮介という刑事に出会う。2人は、キャリアの吉原里佳が立ち上げた猟奇犯罪特別捜査係に配属させられ、コンビとして最初の事件を任される。

 被害者は、血で八芒星が描かれた上に横たわった奇妙な状態で発見された。松下と相沢は、事件現場の確認後、被害者である大山美幸の夫、大山英昌のもとへ向かう。 彼の家で、松下はその異常な対称性の執着に気づき、犯人が彼であることを確信し、『凶器の包丁が彼の家にあった包丁である』と推測した。そして、凶器の情報をそれとなく、英昌に匂わせる。

 犯人の大山英昌は、凶器を特定されることを防ぐために、山の中に残りの包丁を捨てに行くが、松下たちは彼の後をつけた。途中で英昌に見つかった松下は、「自殺を防ぐため」と尾行してきた理由をごまかしつつ、英昌の行動、心理を見事に言い当てて彼を追い詰めていく。

 結局、英昌は松下の巧みな話術で、凶器の包丁を確保されたと思いこまされ暴れるが、猟奇犯罪特別捜査係の仲間であり元機動隊である新堂が、取り押さえ逮捕した。

                 *

 場面は5年前に移る。松下はかつての新人キャリアの吉原とコンビを組んで、猟奇連続殺人犯の少年、東条敬吾を連行するために家へと向かう。松下はその少年の異質性に気づき細心の警戒をして応援を4人呼ぶ。

 だが、少年は異質に異常だった。応援の一人である狭間が、少年に児童ポルノ愛好家であることを見抜かれ、暴露されかける。そのことに取り乱した狭間は、マスコミの見ている前で東条敬吾に馬乗りになって殴る。

 それが、問題になり現場の責任者だった松下は降格、左遷させられる。

 そして、1年前。管理官となり捜査一課へと戻った吉原は、松下の左遷先である警察署に行き、最近の猟奇犯罪事件の爆発的な増加の裏に東条敬吾がいるのではないかと推測し、猟奇犯罪特別捜査係に誘う。

 松下は、「自分の作るチームならば」と了解する。

                  *

 場面は、大山英昌の逮捕後に戻る。松下と相沢は、3年前に発生した猟奇殺人事件の捜査を担当する。被害者は、芦屋海斗。左腕が切り取られた状態で発見された。元々、事件を担当しているのは、中里というベテラン刑事で、不可抗力ではあるが5年前の事件で松下を左遷へ追いやったいわゆる『共犯』だった。

 そして、彼はずっとこの事件を追ってた。

 そんな中里のことを完全に無視し、松下は相沢とともに捜査を開始する。2人は、恋人の遠藤栞子、母親の芦屋紗栄子、親友の梶雄介、元恋人で幼馴染の秋元理佐などの関係者を次々とあたる。

 松下は、恋人の遠藤栞子が腕について異常な執着をしていることを見抜き、実は『恋人』ではなく、ストーカーであったのではないかと疑う。そして、被害者である芦屋海斗の本物の恋人が、『すでに彼女に殺されているのではないか』と推測し、仲間の新堂に同時期に行方不明者が出ていないかの調査をさせる。また、アリバイ崩しのスペシャリストである南雲康一にアリバイ崩しを依頼する。

 松下は、関係者の嘘を次々と暴き、アリバイを崩し、遠藤栞子の腕の執着性を指摘し、彼女がストーカーだったと断定する。それでも、シラを切りとおす彼女に、2人の出会ったキッカケの傘の場所がどこにあるのかを尋ねる。

 そして、その場所に本物の恋人である内藤皐月の死体があると断定する。だが、その場所に死体がないことを知っている遠藤栞子は、その場所に案内する。勝ちを確信する彼女に対して、松下は彼女の宝物である、芦屋海斗の腕の模型を発見して、それを人質にする。松下が探していたのは、腕に異常な執着を見せる彼女の最も大事なものだった。

 結局、遠藤栞子は、芦屋海斗の腕と引き換えに自首をした。

 最終的に逮捕した彼女の目の前で、松下はまるで見せびらかすように、最も彼女が大切にしている芦屋海斗の腕を破壊した。

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