第34話 亀ばかりの島、亀島

ミュラから西の大陸から更に西に行った所に亀島という島があり、そこには、万年亀という聖獣がいるという情報を得たレイ達は、西の大陸の端から船を出していた。


キュービダンジョンの地下60階まで攻略したレイ達はかなり多くの魔物のドロップ品を持っており、それを売却する事で多額の資金を得ていた。今回亀島に向かう船はそのお金で購入したものだ。


船など動かした事もなかったので、船とともに亀島まで行ってくれる人員を雇い今は亀島に向かう船の上だった。


「風が気持ちいいわね。」


「そうだな。ゆっくり船旅もいいもんだな。」


「レイ・・・私ってこのままレイと旅して大丈夫かな?」


「どうしたんだ急に?」


「レイは聖獣と契約する事で能力が大幅に上がるでしょ?私なんかちょっと回復魔法を使えるだけよ。その・・・レイの足をひっぱってないか心配で。」


「なにを、」


「姫よ。そのような心配は無用ですぞ。吾輩がレイ殿とともに姫をお守り致します。姫はドーンと構えておれば良いのです。それに姫の使う強化魔法と回復魔法はパーティを組むうえで必須ですぞ。」


「エンキちゃん・・・」


「エンキの言う通りだ。ヒュドラの時だってマリーがいなかったらやられてた。これからもマリーの力が必要だ。足を引っ張ってる?そんな訳ないじゃないか?マリーは俺の・・・俺の大事な人だからな。絶対俺が守る。傍にいてくれ。」


「レイ・・・」


「熱いの~。妾がいる事を忘れておるじゃろ?」


船の上では、そんな感じでゆっくりと楽しい時を過ごした。時折現れる海の魔物達はエンキが攻撃魔法を放って瞬殺していた。


フェニクと違い、エンキは、パーティメンバーのように常時攻撃ができるらしい。お陰で前衛に俺、中衛にマリー、後衛にエンキとバランスが良くなった。エンキは回復魔法や強化魔法は全く使えないが攻撃魔法はほとんどの魔法が使えるらしい。


賢者と言えば、神官の回復魔法系に魔導士の攻撃魔法系が使えるのが一般的だが、猿の賢者は攻撃魔法専門らしい。ただの賢者と違うのが、魔法専門ではなく近接攻撃もこなす点だ。


武器は長い棒だ。どこぞの空飛ぶ雲に乗ってる英雄を思い出すが、棒を振り回すエンキはその人物そっくりだった。


「お~い。そろそろ亀島が見えてきたぞーー。」


俺は、亀島を見て感動した。そこには大きな亀の形をした島があった。甲羅の部分は苔かなんかが岩にへばりついているような感じだ。大きく出っ張ていて、ここからでも亀の形をしてるのがよくわかった。周りには砂浜と森が茂っていた。


(たしか洞窟の入り口は頭の部分だったよな。)


俺は、ネットの情報を頼りに、頭の方に船を進めるように指示した。


「本当にここで帰りを待たなくていいのか?」


「ああ。帰りは別の船が迎えに来てくれることになってるんだ。ここまで送ってくれてありがとう。その船大事に使ってくれよ。」


「金貰ってるから送るのは当然だぜ。それよりもいいのか。本当にこの船もらっても。」


「ああ。俺達はこの島に来たかっただけだからな。船は当分使う予定がないんだ。」


「ならありがたく頂くが・・・いつでも使いたい時は言ってくれよ。」


船は連れてきてくれた人にあげる事にした。かなりの太っ腹だが俺の場合、一度来た所は転移魔法で一瞬で移動できる。一度来てしまえばもう船の出番はない。どうせなら使ってくれそうな人に譲った方が船も喜ぶだろう。一度乗って譲るなんてどこの大富豪だよ!って思うかもしれないが、実際使う事がないんだ。しょうがないだろう。


「すぐに洞窟に入るの?」


「いや今日はこの島を一通り見て回ろう。洞窟に入るのは明日からだ。初めてくる島だし、どんな魔物が出るのか?洞窟の周りに何があるのか。調べておいた方がいいだろうからな。」


まあこの島で出てくる魔物は亀ばっかりっていうのは知ってるから、調べるも何もないかもしれないけど・・・。だけどリアルなら森でおいしい果物を見つけるかもしれないじゃん。もしかしたら森の中に宝箱が落ちてるかもしれないじゃん。情報がない場所って楽しみなんだよな~。ゲームじゃ防御力の高い魔物って情報しかないけど、リアルな亀退治なら頭を切れば簡単に死ぬボーナスステージかもしれないし、それも確かめたいんだよな~。


浜辺にテントを張り、準備は万端。後は水着に着替えて海でバカンスを・・・という訳にはいかないので、テントを張ったレイ達は亀島を探索した。


宝箱もおいしい果物も見つける事はできなかったが、出てくる亀はレイの予想通り顔を出している所を斬りつければ瞬殺できた。顔を甲羅に隠されると苦労するが、元々亀の魔物だ。動きはすごく遅い。まさにボーナスステージだった。


出てくる亀の強さは甲羅の色によって変わるみたいだが、どの亀も攻撃をする間もなくレイ達によって殺されていたので、強さが変わってるらしい。という事しかわからなかった。


倒した亀は収納魔法で次々と収納していく。マリーが亀をさばいて料理に出してきたときは驚いたが、食べて見るとおいしくて驚いた。亀っておいしいんだなと初めて気づいた瞬間だった。


そして、島の探索が終わりレイ達は万年亀を求めて、いやボーナスステージを堪能する為に洞窟内へと入って行った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る