第29話 地下60階のボス。そして・・・

魔物をできるだけ避けながら下へ下へとダンジョンを降りて行く事にした俺達は、地下40階から一日1階分を慎重に降りて行く事に決めた。一日目は地下41階を進んで地下42階で休む。二日目は地下42階を進んで地下43階で休む。それの繰り返しだ。


一日の始まりはミストに魔物の場所を調べてもらって、下に降りる階段を探す事から始まる。下に降りる事ができればその日の目標の半分は達成だ。残りの時間は、夜安全に眠る為の対策の時間だ。下に降りたらまずは寝床の確保。次いで周りの魔物の殲滅だ。全ての魔物が俺達より格上だ。罠を仕掛け、寝ている間に魔物が近づかない様に、近づいて来てもすぐに気づく事ができるように注意した。


そうして、毎日1階分ずつ下に降りて行った。


地下50階ではボスがいるので、避ける事ができずに戦う事になったが、地下50階に到着する時俺のレベルは83になっていた。レベルが上がるペースはガクッと落ちたが格上の魔物との戦いは多くの経験値を得る事が出来た。聖獣の力と神獣様の力で1.6倍になっているステータスはレベル132相当になっている。そこにマリーの強化魔法で更に1.2倍だ。地下50階のボスのレベルが100とは言え、時間をかけてゆっくりとダメージを与える事に集中すれば、苦戦はするが、死ぬことなくボスを倒す事ができた。


地下50階のボスはミノタウロスだった。大きな斧を振り回す牛の魔物は近距離に絶大な力を持っていた。遠距離から魔法で攻撃しながら、斬りつけるとすぐにその場を離脱。ヒット&アウェイを繰り返した。ミノタウロスとの戦いは3時間程続いたが、集中を切らさずに倒し切る事ができた。


地下60階までもう少しだ。


「レイ。よくがんばったわ。お疲れ様。今日はゆっくり休みましょ。ここまで予定通り10日で来れたわ。帰りは帰還魔法で一瞬で帰れるから約束の日まで後20日。明日は一日ここで休みましょ。ここなら魔物に襲われる心配がないから安全よ。」


「そうだな。ずっと気を張って休んでたから明日はゆっくりするのもいいかもしれないな。気力を蓄えて残りもうひと踏ん張りするか。」


「なら明日は妾が2人に魔法を教えるとしようかのぉ。2人はここにくるまでかなり魔法を使ってきた。今なら上位の魔法も取得できるはずじゃ。妾もレイをみておったがやはり格上の魔物は手ごわいのぉ。レイには一発で戦局をひっくり返す事ができる極大魔法を覚えておくのがよいじゃろ。まあMPの消費が激しいから連発はできんがのぉ。マリーは逆に、得意な防御魔法の上位魔法を教えようぞ。」


「マリー。折角だからミストが新しい魔法を教えてくれるらしい。これから更に魔物が強くなるから必ず必要になるって。」


「ゆっくり魔法を学ぶ時間がなかったものね。一日でも新しい魔法を覚える事ができたら心強いわ。」


「だな。ミストよろしく頼むぞ。」


「まかせるのじゃ。妾もレイ達の役にたつぞーーー」


「レイ。お嬢。俺様も役に立ってるだろ?」


「もちろんだよ。フェニクも十分役にたってるぞ。」


フェニクがお助けキャラとして、戦闘で攻撃してくれるだけで正直助かるし。それに、死んでも生き返るとかチートでしかないしな。


「もちろんよ。フェニクにはいつも助けられてるわ。」


心から信頼しあえる仲間と一緒の活動は、空気が明るい。疲れも吹き飛んで気力も充実した。ミストから教わった魔法も無事に習得できて、レイ達はエンキに出会う為、更に地下へとダンジョンを進んで行った。


☆☆☆


「ようやくここまで来たわね。」


「ああ。さすがに疲れたけどな。」


「そうね。でも後ひと踏ん張りよ。これが終わればゆっくり休めるでしょ。」


「そうだな。次はボスだ。どんなボスかもわからないし、次が最下層かどうかもわからない。だけど、ボスを倒せばエンキと会える。マリー、ミスト、フェニクやるぞ。」


気合を入れて地下60階のボス部屋のドアを開けた。そして、ボス部屋の中にいたのは・・・


「何あれ・・・」


「ヒュドラ・・・」


9つの首の蛇ってヒュドラだよな?たしか首は切っても再生するんだっけ?首を切って切断面を凍らせるか燃やしたら良いとかってなんかネットで見た気がするかなりの強敵だな。


「マリー。フェニク気を付けろ。首を切っても再生するはずだ。切断面を焼き切るか凍らせないと無限に再生するぞ。それぞれの首から攻撃が来るはずだ。手数が多い距離を取るか動き回って狙われない様に。」


「わかったわ。」


「まかせろ。俺様の炎で黒焦げにしてやるぜ。」


「ああ。出し惜しみなしだ。フェニクは開放してブレスで援護してくれ。俺は前でひたすら斬る。」


ヒュドラとの戦いは壮絶だった。時間にして5時間はかかっただろうか?首を切れば再生するとは言っても首自体がとても固く、切るのにも苦労した。一瞬でも戸惑えば他の頭から攻撃が来る。属性攻撃はまだましだったが、毒攻撃が地味に酷かった。マリーが解毒の魔法をすぐにかけてくれなかったらやられていただろう。


フェニクを開放させたのもよかった。ターゲットが俺だけだったら倒す事はできなかっただろう。5時間の死闘の末、俺達はヒュドラを倒す事ができたのだった。


「レイ・・・あれ?」


マリーの指さす方を見ると、そこには下に降りる階段と、そしてその横にはフェニクを閉じ込めてたモノと同じような珠が宙に浮いていたのだった。

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